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居酒屋さすらい 0665 - お通しでもうノックアウト - 「よっちゃん」(船橋市印内町)

2013-08-03 09:55:46 | 居酒屋さすらい ◆地方版
二俣から西船まで歩いた。
残暑厳しい炎天下を。
途中で道が分からなくなったので、高校生に尋ねると、彼は優しく教えてくれた。
京葉道路を超え、川に出たら急に寂しくなった。

ビールを飲もうと思い立ち、立ち飲み屋を探した。
西船橋駅の北口から南口までくまなく歩いたが、見つけることはできなかった。
そういえば、まだ15時半だ。開いている居酒屋ですら見つけるのは難しい。
南口に開いているお店があったので、またそこまで戻ることにした。

懐かしい。懐かしすぎる西船橋。
まだ怖いものなんてあまりなかったころ、頻繁に仕事で来た西船橋駅南口。
あの頃の自分の残像がまだそこに残っているような気がした。

西船橋駅の周りは相変わらず狭かった。
武蔵野線と総武線、そして東京メトロと東葉高速鉄道が乗り入れるにも関わらず、この駅の周辺は相変わらず狭いままだった。
伝説のストリップ劇場、西船OSはもうとうの昔になくなっていた。
18歳、西船OSで見た光景が忘れられない。そこは劇場というより小屋だった。場末の小屋でまな板ショーに出るための権利を男たちはじゃんけんで競った。
ひとりの若い男がじゃんけんに勝利し、誇らしげにステージにあがると、おもむろに服を脱ぎはじめ、最後の1枚が体から離れる瞬間、男の陰部から糸をひくものがスポットライトに光った。
男はいきりたつ獣のようだった。

あの当時に比べると駅はきれいになったが、どこか後ろめたさの残る翳りのある街の印象は健在だ。

南口には2軒の店がすでに開店していた。
1軒は海鮮焼きのような店、そしてもう1軒が「よっちゃん」という串焼きの店である。
どちらに入るかしばし悩んだ。
なんとなく、そうなんとなくで「よっちゃん」に入った。
どこの街にでもありそうな、ありふれた店の外観だった。
暖簾をくぐるとそこはもう掘立小屋のようだった。

子どものころ、親父がはじめた焼き鳥の卸売りの商売の配達に1度連れて行かれたことがある。
八千代台と花見川の間くらいの掘立小屋の店。バラックのような店が突然フラッシュバックした。
店のカウンターでは女の子が焼き鳥に串を刺していた。その光景も子どもの頃の記憶を呼び起こさせた要因だったのかもしれない。
一人はインド人かネパーリーか、それともバングラデシュ人か、アーリア系の若い女性が焼き鳥の串を手馴れた手つきで刺している。
それはある意味、異様な光景でもあった。
アキバの居酒屋の呼子に今やインド人らしき人たちを見るのは珍しくない。でも、サリーを着た女性と焼き鳥はどこかアンバランスであった。

お客は奥に堅気には見えない2人の男がいるだけだった。
ボクはカウンターではなく、テーブル席に腰掛け、「生ビール」を頼んだ。
間髪入れず、厨房にいる小沢征爾さんにそっくりな店のオヤジに「すぐ出るつまみは何?」と聞くと、小沢は「ちょっと待ってね」とボクに促した。
どうやら仕込みに忙しいらしい。

しばらく待っていたが、一向に小沢はタイミングを作ってくれない。そうするうちに1杯のビールを飲み干してしまった。
さて、困ったなと思い、目線を壁に泳がしていると、「生ホッピー」という文字が目に飛び込んできた。
ほう、生ホッピーがあるらしい。
早速注文した。

生ホッピーとともにテーブルに運ばれてきたのは5種類もの小皿。味付け卵やナムル、チャンジャ、おひたしなどが盛られている。まるで韓国料理のお通しのようだった。
ボクが少し驚いた表情をしているのを見て、小沢は「ごめんね。遅くなって」と優しく言った。
その小皿はどれもおいしいものだった。
お通し代がなにがしかとられるのかもしれない。だが、もしそうだとしてもこの小皿の数々はその対価以上の価値を感じるものだった。
本当においしいのだ。
このお通しのおいしさで店の力量は十分に感じ取れた。
「モツ煮こみ」は深い味わいだったし、「レバカツ」(100円)「レバニラ炒め」(500円)も最高だった。「冷奴」(180円)ですら。そしてもちろん串焼きの数々も。
生ホッピーもお代わりを繰り返し、気が付けば4杯も飲んでいることに気がついた。
注文を待たされたときはどなることかと思ったが、雰囲気がよく、小沢はとても優しかった。
そしてなによりもおつまみがおいしい。
完全に「当たり」のお店だった。

後日のことだが、吉田類さんも店を訪れていたことを知る。
「あぁ、やっぱり」と心から思った。
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