多分もう、成田に来ることもないだろう。
最後にあの店で、飲み納めをしなければならない。
旅館を飛び出し、ボクは「寅屋」に向かった。
小雨が降る門前町は風情があった。
人通りはほとんどなく、時折クルマが行き交うだけである。
どこかで犬の鳴き声が聞こえる。夜の成田はひっそりとしていた。
駅に近づく毎に少しずつ、店の灯りが増え、人の往来も多くなっていった。
「寅屋」に着いた。
もちろん、JR側の店だ。
カウンターに陣取り、ボクは「梅割」を頼んだ。
京成側の店はどうも好きになれない。雰囲気がイケイケなのだ。
JR側の店は店員さんも、客層も穏やかである。
20時過ぎの店内は客が僅かであった。
だが、恐らく串焼きのネタも僅かであろう。
その僅かなネタのうち、カシラを2本焼いてもらった。
ボクの大好きなハラミはもう売り切れである。
それでも、ボクは十分だった。
この店のもつ焼きは品質、焼き方ともに最高レベルである。その焼き物にドンピシャな飲み物「梅割」。
ボクは「宇ち多"」で堅苦しく飲むより、この「寅屋」の雰囲気が断然いい。
「梅割」をおかわり。
ほぼストレートの焼酎である、この飲み物は3杯も飲んだら、酔ってくる。
だが、この日は、酔いが早かった。
たった2杯でぐったりきた。
多分、もうしばらく来られないんだろうな。
ボクはそう思いながら、グラスに残った「梅割」を一気に飲み干した。さらに、グラスの受け皿に溢れた「梅割」も飲み、恐らく店を出た。
400軒近く立ち飲み屋に行ったが、その中でも5本の指に入る名店。
今度来られるのはいつだろうか。
「寅屋」の過去記事
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