平成18年12月に国連総会で採択された『障害者権利条約』について、我が国は平成19年9月に署名したものの、未だ批准はしていない。
政府は、早期の条約締結に向けて国内諸法制を整備するため、厚生労働省に「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を設置して検討を進めてきた。この研究会は過日開催された第9回の会合をもって大方の議論を終了し、今後は労働政策審議会(障害者雇用分科会)にて審議されていくこととなった。
研究会では、「職場における合理的配慮の提供」といった従来我が国に無かった概念も含めて多面的な議論が重ねられてきたが、委員間に特段の異論なくコンセンサスを得られた事項もある。その一つが「障害者雇用率制度の存続」だ。
「障害者雇用率制度」とは、障害者雇用促進法で定める雇用率(民間企業は現行1.8%、平成25年4月からは2.0%)未達成の事業主(※)は、法定雇用障害者数に不足する障害者1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければならないとするもの。
※ただし常用雇用労働者(短時間労働者は0.5人として算入)が200人以下(平成27年4月からは100人以下)の事業主は対象外
障害者雇用率制度は、つまるところ企業に対して一定の障害者雇用を義務付けるものだが、研究会では、現行の障害者雇用率制度が我が国の障害者雇用に寄与してきた効果を評価し、この仕組みを「障害者権利条約における積極的差別是正措置(ポジティブアクション)」と位置付け、実質的な機会均等を維持するために障害者雇用率制度は存続させるべきとしている。
障害者権利条約が批准されると、企業に対しては、障害者雇用に関する直接・間接の差別が禁じられるのは言うまでもなく、「機会の均等」だけでなく「結果の均等」も求められることになりそうだ。
条約の批准は当分先になりそうではあるが、雇う側の立場としてはその時になって慌てないよう、今のうちから自社における障害者雇用に関する方向性を整理しておいた方が良いだろう。
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