忘年会シーズンが到来した。
ところで、もしも従業員が飲酒運転で検挙された場合、会社は当該従業員を懲戒または解雇することは可能なのだろうか。
まず、懲戒に関して言えば、業務上の飲酒運転であれば、会社は懲戒することができる。というよりも、懲戒しなければならないだろう。
ただし、懲戒処分のうち「懲戒解雇」は、「死刑」にも例えられるくらい取り返しが付かないものなので、たとえ就業規則で「懲戒解雇に処する」と定められていたとしても、「出勤停止」や「降格・降職」等の処分で宥恕できないかを検討するべきではある。
その一方、会社が従業員を懲戒できる権利を有するのは、「企業秩序を維持確保するため」(最三小S52.12.13判など)なのだから、企業秩序に関係の無い“私的行為”は懲戒の対象とならないのが原則だ。「業務外におけるバイクの飲酒運転で事故を起こした従業員を会社が懲戒解雇した事案」について解雇を無効とした判決(福井地H22.12.20判)も参考にしたい。
また、解雇に関して言えば、呼気中アルコール濃度0.25mg以上が検出されたら一発で免許が取り消されることになっているが、そもそも運転免許を必要としない職務に就いている者については、運転免許が無くても仕事ができるのだから、それを理由に解雇できない。
では、運転免許を必要とする職務に就いている者は運転免許が取り消されたことを理由として解雇できるかと言うと、それも簡単な話ではない。
二種免許を失ったタクシー乗務員について、「ほとんど専門性を有しない業務については、ある程度使用者側の必要性において配置転換できるし、特定の業務ができなくなっても、解雇することはできず、他の職種に就けるべき」として解雇を無効と断じる判決(東京地H20.9.30判)も出されている。こういう場合でも、「解雇以外に選択肢が無いか」を検討することを裁判所は求めているのだ。
いずれにしても、従業員の飲酒運転に対しては、短絡的に「飲酒運転=懲戒解雇」との結論を出すべきでなく、「懲戒すべきか否か」、「解雇すべきか否か」の2面を勘案し、慎重に判断しなければならないと言える。
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