労働基準法は、就業規則を労働基準監督署に届け出るべき旨を第89条で、また、就業規則の作成または変更について労働者代表(労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者)の意見を聴くべき旨を第90条で、それぞれ定めている。
では、こうした手続きを経ずに制定された就業規則は労働契約としての効力まで否定されてしまうのかと言うと、そうとも限らないのだ。
実際の労使トラブル事案においても、「意見聴取義務および届け出義務について労働基準法違反があったとしても、労働契約の内容を決定する就業規則の効力に影響はない」と判断している裁判例(大阪高判S41.1.20、東京地判H18.1.25など)が大多数だ。
もちろん、就業規則を労働基準監督署に届け出ていなかったり、労働者代表の意見を聴かなかったりしたら、それは、労働基準法違反に問われ、罰金刑まで科される可能性のある行為ではある。
しかし、労働基準法が定める使用者の義務は「国」に対するものであって、労働契約としての民事的な効力の面では、「その就業規則が従業員に周知されているか否か」に重きを置いて考えるべきなのだ。
労働基準法が定める意見聴取や届け出の義務を果たしていても、その就業規則が従業員に周知されていなければ無効と見る裁判例も多い(最二小判H15.10.10など)。
そもそも就業規則を制定する目的は、「労働条件を明確化し、職場秩序と服務規律を保持するため、そしてトラブルを予防し、ひいては従業員の安心感と会社へのロイヤリティを醸成するため」であったはずだ。
そう考えれば、労働基準法あるいは労働契約法の規定を俟つまでもなく、就業規則が従業員に周知されていなければ全く意味が無いのは、当然と言えよう。
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