採用活動において、不採用とした応募者から、履歴書等の応募書類を返却するよう求められることがある。その場合、会社はこれに応じなければならないのだろうか。
結論を先に言うと、法令上、返却する義務は負わないとされている。
では、ここで、個人情報保護法の規定を整理しておくこととする。
まず、「個人情報取扱事業者」の定義について、かつては「政令で定める者(事業の用に供する個人情報の数が過去6か月内いずれの日においても5千件以下の者)を除く」とされていたが、かっこ書き部分は、今年5月30日に改正施行された現行法では削除されている。そのため、今では、ほぼすべての事業者が個人情報事業者に該当すると言っても良いくらいだ。
また、採用活動においては、当然、個人情報を取得することになること、そして、応募書類には個人情報(改正法で明確化された「要配慮個人情報」(従来「センシティブ情報」・「機微情報」とも称されてきた)を含む)が満載であることについては、異論を挟む余地は無いだろう。
そう考えると、本人が請求してきた以上、会社は応募書類を返却しなければならないと思いがちだが、同法は、「内容が事実でないとき」には個人データの訂正や削除を、「必要な範囲を超えたり不正の手段により取得したものであったりしたとき」は個人データの利用停止や消去を、それぞれ請求することができる(改正法第29条・第30条)と定めているに過ぎないのだ。
したがって、正しい個人情報を正当に取得し利用している限り、この求めに応じる義務は発生しない。
しかし、そうは言うものの、利用する必要がなくなったときは個人データを遅滞なく消去するよう努めるべき(改正法第19条)と追記されたことに鑑み、また、データベースの不正提供(改正法第83条に罰則を新設)を疑われないためにも、少なくとも請求された場合には、応募書類は返却してしまうのが無難だろう。
なお、書類返却に要する費用は本人の負担としても差し支えない。募集要項に「不採用の場合に応募書類の返却を希望するなら、切手を貼付した返送用封筒を同封すること」と記載しておくのも一策だ。ただ、そうした場合は、「個人情報に配慮している」との安心感を与えると同時に、「ケチな会社だ」とも思わせかねないので、その点は慎重に考えたい。
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