従業員を職場に寝泊まりさせる「宿直」は、「夜勤」とは似ていて非なる別物だ。
経営者から見れば、宿直のほうが夜勤よりも“使い勝手”が良いように感じられるかも知れない。
というのは、宿直であれば、法定労働時間の限度に関係なく(ただし原則として週1回まで)命じることができ、賃金は1日分の3分の1以上を支払えば足りる(労働基準法第41条、同法施行規則第23条、第34条)とされているからだ。
しかし、宿直では(原則として)通常業務を命じることができないことを承知しておかなければならない。
そして、宿直勤務の導入にあたっては、管轄労働基準監督署長の許可を得る必要もある。
この許可を得られるのは、「ほとんど労働をする必要の無い勤務であり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生に備えての待機等を目的とするもの」(昭22・9・13発基17号、昭63・3・14基発150号)でなくてはならず、「相当の睡眠設備」(すなわち「仮眠できる」こと)も条件とされている。
ちなみに、許可申請してから許可が下りるまで2週間ほど掛かる(その間に実地調査もある)ので、それも踏まえて、導入にあたっては余裕を持ったスケジュールを組んでおきたい。
【参考】宿直勤務許可申請に必要な提出書類
(1) 『断続的な宿直又は日直勤務許可申請書』(様式第10号)
(2) 『宿日直勤務者の賃金一覧表』・『調査書』(労働基準監督署指定様式)
(3) 就業規則・雇用契約書等
(4) 賃金の計算書
(5) 勤務パターン(例えば「週1回」など)
(6) 当番日のタイムスケジュール
(7) 現地見取り図(夜間巡回のコース図)
(8) 詰所の状況(相当の睡眠設備を整えていること)
(9) その他、労働基準監督署が提出を指示したもの(実地調査もあり)
※複数の労働基準監督署への聴き取り調査による
なお、宿直中に突発的な事態が発生して通常業務に従事した場合は、その実働時間数に対しては本来の賃金(深夜割増および法定時間を超過する場合には時間外割増を加算)を支払わなければならない。 加えて、そういう事態が起こる頻度が高い(「突発的」とは言い難い)場合には、夜間に通常業務を行うことが常態となっているものとみなされ、宿直勤務の許可が取り消される可能性もある。
宿直は、極論を言えば「寝泊まりさせるだけ」と理解しておくべきだろう。
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