法定労働時間(基本的には週40時間)を超える労働(以下、「時間外労働」と呼ぶ)を命じるには、「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(労働基準法第36条に基づくため「三六協定(サブロク協定)」と呼ばれる)を締結しておかなければならない。
そして、三六協定で定める時間外労働時間数は、平成31年(令和元年)4月から(中小企業は令和2年4月から)、原則として「月45時間(1年変形では月42時間)、年360時間(1年変形では年320時間)」が限度とされた(労働基準法第36条第4項、H30.9.7基発0907第1号)。 ただし、この上限規制は次の事業(または業務)には適用されない。
1.工作物の建設の事業(同法第139条)
2.自動車運転の業務(同法第140条)
3.医業に従事する医師(同法第141条)
4.鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(同法第142条)
5.新技術・新商品等の研究開発業務(同法第36条第11項)
これらのうち1~4については、令和6年3月31日までの猶予措置であり、猶予期間経過後は、新たな基準が設けられ、または上限規制がすべて適用されることになる一方、5については、来年4月1日以降も適用除外のままとされる。
しかし、だからと言って、研究開発業務は三六協定さえ締結しておけば無制限に残業させられる、と考えるべきではない。
研究開発業務に従事する者であっても時間外労働が月100時間を超えたら医師の面談を受けさせなければならず(労働安全衛生法第66条の8の2、労働安全衛生規則第52条の7の2)、加えて、直近2~6カ月間の時間外労働が月あたり80時間を超えた者の脳・心臓疾患の発症は業務との関連性が強いと認められることから、労災事故防止の観点から行政当局の指導対象となるのは他の業務と同様だ。
また、(これも他の業務と同様)月60時間を超える時間外労働に対しては150%以上の割増賃金を支払わなければならない(同法第37条第1項ただし書き;中小企業も今年4月から適用)ことは、間接的に時間外労働の抑制材料になるだろう。
なお、研究開発業務が専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)の適用対象となっているケースにおいても、「みなし労働時間」に時間外労働時間数が含まれていることがあるので、裁量労働だからと言って必ずしも本件に無関係とは限らない。
いずれにせよ、長時間労働は、コストアップに直結し、生産効率の低下や労災事故の要因ともなりうる。
労使どちらの立場からも、長時間労働は極力避けるのが賢明と言えよう。
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