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出生時育児休業中の就業に関する制約と注意点

2023-03-13 13:59:09 | 労務情報

 育児介護休業法の改正により、令和4年10月1日から「出生時(しゅっしょうじ)育児休業」という制度が新たに創設された。
 これは、「産休を取らない労働者が子の出生後8週間以内に最大4週間(予め申し出ることにより2回まで分割可)休業できる」というもので、この制度の創設に伴い、「子の出生後8週間以内に育児休業(通称『パパ休暇』)を取得した場合にはそれとは別に育児休業を再度取得できる」という育児休業の特例は廃止された。
 ちなみに、この「出生時育児休業」を「産後パパ育休」あるいは「男性版産休」と呼ぶ例も見受けられるが、自らが産休を取らない女性も(養子の場合など)この制度を利用することができる。 この点、就業規則を改定する際などには、用語の選択に気を付けたい。

 ところで、今般の法改正では育児休業の分割取得や再取得も容易になるというのに、なぜこの新制度を創設したのか、それには「仕事を理由として育児休業の取得をためらっている労働者(特に男性)であっても育児休業を取得しやすいようにする」という意図があった。
 そのため、「出生時育児休業」には、従来の「育児休業」とは異なり、「休業期間中に就業させられる」という大きな特徴がある。
 ただし、休業中に就業させるには様々な制約や注意点がある。以下にそれを整理しておく。
  ・ 労使協定の締結が必要(労基署への届け出は不要)
  ・ 就業させる場合の手順は次のとおり
    (1) 労働者本人から就業できる旨とその条件を申し出る
    (2) 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示する
    (3) その提示内容に労働者が同意した場合に就労可能となる
  ・ 就業日数の合計は、出生時育児休業期間の所定労働日数の半分以下とすること
  ・ 就業日の労働時間数は所定労働時間数に満たないものとすること(残業不可)
  ・ 雇用保険制度の育児休業給付金を受けるには、休業中の就業日数が10日(休業28日の場合;休業が28日未満の場合はその日数に比例して減少)以下でなければならない
  ・ 社会保険料は、その月の末日が休業期間中である場合または同月内に14日以上休業した場合に免除される(後段は今般の法改正で追加;この規定は通常の「育児休業」についても同様)が、事前に調整して就業した日は対象とならない

 誤解を恐れずに言えば、「出生時育児休業」は、そもそもが休業中の就業を前提とした制度なのだ。
 こうした背景から識者の一部にはこの制度そのものへの反対意見を唱える向きもあるが、企業経営者としては、上に挙げた諸点に注意を払って、法の許す範囲内で新たな制度を上手に利用するべきと言えよう。


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