従業員50人以上の事業場は、「衛生委員会」(業種によっては「安全衛生委員会」)の設置が義務づけられている(労働安全衛生法第18条ほか)。
ただ法で義務づけられているから、というだけでなく、衛生委員会を開催することには、次のようなメリットもある。
第1に、いささか建前論にはなってしまうが、衛生委員会を開催して日ごろから職場環境に関する意識を高めておけば、事故の発生を未然に防ぎ、万が一事故が起きても被害を拡大させないことにつながることが期待される。
第2に、労務的な観点では、衛生委員会には各部署の代表が集まってくるため社内横断的なコミュニケーションの円滑化に寄与する。また、次世代を担う人材の養成という意味もあると言える。
一方、衛生委員会を設置していない、あるいは設置していても実際には開催していない、という会社も散見される。
そうした会社は上に挙げたメリットが得られないばかりか、意外なリスクもあるのだ。
数年前に、大阪の印刷会社で従業員17人が胆管がんを発症(うち8人が死亡)したことは記憶されているだろうか。当時、この会社に労働基準監督署の強制捜査が入ったことが報じられていた。
容疑は労働安全衛生法違反。具体的には、この会社は前年に、「定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出していない」、「衛生管理者や産業医、安全管理者を置いていない」、「衛生委員会を設置していない」等について是正勧告を受けていたとのことだった。
もっとも、これら安全衛生体制が整備されていれば胆管がんの発生が防げたとは言い切れないのだが、重大事故を発生させた以上、行政当局も目をつぶれなかったというところだろう。
これは、対岸の火事ではない。仮に自社で重大事故が発生したとしたら、会社がそれを予見できなかったとしても、労働安全衛生法が定める事業主の義務について刑事責任を問われるということだからだ。衛生委員会を開催していない会社には、背筋が寒くなる話だ。
確かに衛生委員会は、その開催に時間と労力を要する。しかし、それを上回る効果も期待できるので、行政から指摘される前に体制を整備し、上手に活用したいものだ。
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