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「労働からの解放」に関する新しい概念2つ ~ 法制研究会報告書

2025-01-13 12:59:56 | 労務情報

 厚生労働省に設置された労働基準関係法制研究会は、令和6年1月23日から17回にわたって、その名の通り「労働基準」に関する法令等について議論してきたが、年明け1月8日に「報告書」をまとめて公表した。

 労働基準の問題は、ざっくり「労働者たる身分」と「労働時間」と「賃金」の三分野に大別されるところ、この報告書は、そのうちの「労働時間」をさらに「実労働時間」と「労働からの解放」とに分割して言及している。
 しかも、「労働からの解放」に関しては、「休憩」・「休日」・「年次有給休暇」といった従来からの概念に加え、「勤務間インターバル」・「つながらない権利」といった新しい概念も打ち出している。

 「勤務間インターバル」とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に一定の休息時間を設ける制度で、労働時間等設定改善法第2条第1項で「労働者の健康及び福祉を確保するために講じるように努めなければならない」として事業主の努力義務とされているものだ。
 研究会では「勤務間インターバル制度が必要」との共通認識は得られたものの、具体的なインターバル時間については、議論の中で示された「11時間」という数字の妥当性やそれを事業主に罰則付きで義務づけるべきか否かといった問題が残り、結論には到らなかった。

 「つながらない権利」とは、勤務時間外に業務と“つながらない”権利のことで、より強い語調で「アクセス遮断権」と呼ぶ向きもある。
 本来、労働時間ではない時間に使用者が労働者の生活に介入する権利はないが、現実には、突発的な状況への対応や顧客からの要望等によって勤務時間外に対応を求められることがある。 中には本当に緊急対応しなければならない事態も発生することもあろうが、それが“なし崩し”的に日常化してしまうと、仕事が私生活に介入してしまうことになる。
 報告書では、「つながらない権利」という概念を明記したうえで、勤務時間外に労働者に連絡を取る場合に「どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否することができることとするのか」といった社内ルールを労使で検討すべきとしている。
 そして、政府には、このような話し合いを促進するためのガイドライン策定等を求めている。

 もちろん従来からの概念である「休憩」・「休日」・「年次有給休暇」に関しても議論されてきたが、それらを含めた「労働からの解放=働かない時間」にスポットを当てて、「実労働時間=働く時間」と並列で取り扱ったのが、この報告書(案)の一つの特徴と言えそうだ。

【参考】厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」


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