昭和の記憶が薄れて行く。
朝ドラ《おちょやん》のモデルである浪花千栄子さんに興味はあるが、
子供だった事もあってCMの笑顔しか浮かんでこない。
昨夜のニュースでミルバが亡くなった事を知った。
私はマセた小学生で、
子供の頃、ミルバを聴いていた。
サンレモ音楽祭のヒット曲などもよく聴いた。
意味はわからないが、
その歌唱力に胸が熱くなった…。
ミルバの歌声には聴くものをグイグイ惹きつける不思議な魅力がある。
それが何であるかはわからなかったが、
レコードジャケットに映る濃いアイラインを引いた厚化粧の顔と、
年齢不詳の雰囲気も手伝って、
《ミステリアスで不思議な歌手》
というイメージがインプットされた。
今回の訃報で、初めて81歳…という年齢を知った。
私のイメージの中のミルバと、81歳という年齢が結びつかない…。
歌手に実年齢は不要なのかもしれない。
昨年、
亡くなったシャンソンのジュリエット・グレコもそうだが、
かつて、
歌うときに黒い衣装を着ることについてインタビューされた時、
グレコは
「黒い衣装を着るのは、自分の実態を消して、私の歌う物語の人物を映し出すため」
と答えていた事があった。
派手な衣装のミルバは、
グレコとは違う手法で歌のストーリーを演じていた。
実年齢はおろか、歌い手の存在を忘れさせてくれるほど、
聴き手は、現実を忘れて歌の世界観にのめり込んでいく…
それほどの歌唱力を持った“女優”でもあった。
あぁ、また昭和の想い出が遠のいて行く。