おすすめ度 ☆☆☆☆
2022年・第23回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞。
PG12
高校生のソヒ(キム・シウン)は、担任教師から大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社を紹介され、実習生として働き始める。
しかし、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしなかった。
そんなある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。
やがて、凍てつく真冬の貯水池でソヒの遺体が発見され、捜査を担当する刑事・ユジン(ペ・ドゥナ)は、彼女を自死へと追いやった会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていくのだった…
前半は、主人公である少女の主観的目線。後半は、その死の真相を追う刑事の目線から、韓国社会の歪んだ構造を客観的に描いている。
全てが競争にさらされ、ランキングによってインセンティブが支払われる社会は、資本主義社会そのものの矛盾をそのまま照らしている。全てをお金でジャッジすることは、極めて合理的でわかりやすいが、この映画の主人公のような残酷な立場へと追い込まれることを想定していない。企業も学校も家族も、それぞれが合理的なことをしようとしているのにうまくいかない。まさに「合成の誤謬」ともいうべき現実がここで突きつけられる。