おすすめ度 ☆☆☆★
2021年本屋大賞を受賞した町田そのこの同名ベストセラー小説を、杉咲花主演で映画化したヒューマンドラマ。
タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、52ヘルツという「高い周波数」で鳴くため、その声を他のクジラには聞き取れず、「世界で1頭だけの孤独なクジラ」を意味している。
まさに、その境遇にある人間にフォーカスし、丁寧に人間模様を描き出していく作品。
東京から逃げるようにして海の見える家に越してきたキナコ(杉咲花)の視点で何らかの理由で孤独に追いやられた人々の苦しみが描写される。
前半はキナコの毒母とのエピソードを軸として、越してきた先で出会ったやはり母親から育児放棄された少年との交流がスケッチされる。自分の子どもに頼りきりでいてそのくせ暴力的な毒親が色濃く描かれている。
後半はまた別の苦しみが描かれる。自身のジェンダーに悩みを抱えているアン(志尊淳)のエピソードがそれ。キナコの回想として東京での紆余曲折が展開されていく。前半と比して後半のそのエピソードはいささか作り物めいていてドキュメント性さえ感じさせた前半とはだいぶ趣を異にする。
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