おすすめ度 ☆☆☆★
オーストリア・ルクセンブルク合作 PG12
2021年・第74回ロカルノ国際映画祭で観客賞を受賞したミステリー。
“ヒンターラント”って“後方”って意味で使われている。
ビジュアルが面白い。全合成の、遠近感を失わせるような暗く歪んだ背景が悪夢のようで、第一次大戦後の疲れ切ったウィーンの街と人々を素晴らしく表現している。
長くソ連に抑留されていた復員兵たちは、共産主義を怖れる権力者たちにアカだと罵られ、行き場を失った若者が俺たちの声を聞いてくれるのはここだけだと見せるのが、国家社会主義ドイツ労働者党のパンフだったり、続いていく歴史への目配せも感じる。
ストーリーは帰還兵である元警部が、帰還兵連続猟奇殺人に挑む。19という数字が意味するものと、それと同時に戦争の虚しさがある。多くの人間を救うために少人数の人間を犠牲にするのか。これには正解がなく、少人数に愛する者がいたら少人数を救うかもしれない。