ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

ドン・ジョバンニになったスポウド

2009年04月02日 | 友達とわたし
今夜はマンハッタンにふたりで出かけました。
我らが友人Jonathan Spottiswoode が初めて手がけた、オペラ『ドン・ジョバンニ』を題材にした骨太ワイルドミュージカルを観に行くためです。
題して『Above Hell’s Kitchen』!彼と彼のバンド『Spottiswoode & His Enemies』に加えて、Martha Redbone さんが友情出演していました。



どうしようもない女好きのD.J.をスポウドが演じ……これがまためちゃ似合ってました!
過激な言葉とFワードの連発でしたが、ニューヨーカーにはバカ受け。もちろんニュージャージーの片田舎から出てきたわたし達にもバカ受け。
かぶりつき席だったので大迫力だったけど、見上げてばっかで首が痛くなってしまいました。
せっかくやからと写真を撮ろうとこっそりカメラを出したら、旦那から『おやめ!』膝蹴りを食らい、敢えなく撃沈……。
役者さん達は譜面台に台本を置き、それを読みながら演技したり歌ったり、台詞合わせの練習風景っぽい設定でした。
なので、全員客席に向かって一列に並んだのだけど、ナレーターとライトさんの巧妙な仕掛けが効果的で、場面転換がスムーズで面白かったです。
それにしても……あんなに近くから見上げていると、彼らの口の中がよぉ~く見えたのだけど、みんなどうして揃いも揃ってあんなにきれいなのだろう?
虫歯も、銀の詰め物も(今時そんなん詰めてるもんおらんのでしょか?)全く見当たりません?!
歯にはほとほと泣かされ続けて数十年のわたし……、歌手になりたかったらまず歯をなんとかせなあかんのか……などと、今頃から成れると思とんのかキミ!とひとりツッコミ入れながら密かに観察させていただきました。

さて、話を戻して。
スポウドはもう長く長く、ただただ歌手をやっていて、長い間真剣に付き合っていたガールフレンドに去られてしまい、それが途方も無くショックだったのか、数ヶ月、故郷のロンドンに引きこもってしまいました。
彼のことだから、いつかきっと立ち直れる時が来ると信じてはいたけれど、ひと月経ちふた月経ち、み月が経った頃、大丈夫か?と本気で心配しました。
だいぶ経って、やっとマンハッタンに戻って来た彼が、まあまあ元気でやってるというのが分かりホッとしていたところに、いきなりフェイスブックを通じて向こうから連絡がきました。
ちょっとちょっと、彼、ミュージカルを作ってたみたいやで!しかも『ドン・ジョバンニ』を題材にしたやつ……スポウド……泣けるぜ

彼は一見、強面で背が高くごっつい人なので、ちょっと近寄り難い感じがするけれど、普段はそりゃあ物静かでシャイで可愛らしい男性です。
低くて柔らかい声のロンドン訛りの英語を聞いているだけで、心がどんどん落ち着いてくる気がする、なかなかの男前さんです。
ところが舞台に上がると牙を剥き出して吠える!叫ぶ!慟哭する!あんた、二重人格なの?と疑いたくなるほどの超ワイルドなオーラ全開!
彼のCDをいっぱい持っている我々ですが、なんとも癖になるオリジナル曲を多く持つミュージシャンなのに、どうして大々的に成功しないのか不思議です。
その中の一つ、すてきなバラードがあるのですが、旦那がわたしの50才を祝ってやろうと企ててくれた2年前のパーティに来てくれたスポウド。
その日は数日間続いていた大雨であちこち洪水に見舞われ、マンハッタンから来てくれたのは彼一人だったのだけど、
お祝いにと、創りたてホヤホヤの、雨がずうっと降り続いているけれど、僕はこんなに幸せだ、という、とてもすてきなラブソングを歌ってくれました。

きっと今度こそ、この変則ミュージカルで日の目を見るよな彼、な、な。
旦那とわたしは、帰りの車の中で、彼の成功を確信しながら帰りました。

せっかく持ってったカメラで、唯一写せた写真です。五番街とブロードウェイが交差する所に建つ『フラット・アイアン・ビル』。
走っている車の中から、しかも窓越しに撮ったので、ちょっとイカしてませんが……。



わたしはなぜだかこのビルが好きで、カメラを持っていると決まって立ち止まって撮ってしまいます。今日は曇り空がバックです。




コメント (2)
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