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ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

学者養成講座』by 木村真三氏 その2

2012年10月04日 | 日本とわたし
木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その②】

<2-3開始>
  ・ベクレルという単位は何を表すか
  ・自然放射線(カリウム40)と人口放射線の違いと注意点
  ・シーベルトという単位は何を表すか
  ・α線はβ線/γ線の20倍!
  ・ラドンガスと肺がんの関係
  ・臓器に対する放射線の影響の違い
  ・被ばくによる遺伝的影響
  ・チェルノブイリと福島第一事故の違い
  ・長崎の放射能到達状況
  ・放射能汚染時代
  ・2011年3月15日の汚染の広がり
  ・2011年3月に保安院が行った簡易の甲状腺被曝検査
    『最大35mSv評価は経口吸入評価だと80mSv』


(木村真三氏)
今回は、放射線の単位。
また、放射線の種類と人体影響、というものを知っていただいた上で、今現在の、放射能の広がり。
また、その放射能によって、汚染された人々は、一体どれくらいの被曝をしたか、
外部と内部について、お話をしていきたいと思っております。
 
こういったことを中心に、お話をしていきたいと思います。
 
では、気持ちを新たに、勉強会ということでやっていきましょう。
まず皆さんに知っていただきたいのは、二つです。
『シーベルト=Sv』『ベクレル=Bq』です。


簡単な方から行きます。
この、ベクレルと言っているものは、放射能を表す単位。
この放射能というのは、一体どういうことなの?っていうと、
これは『1秒間に、何個の放射線を出すか』で、ベクレルという単位になるわけです。
だから、それを、重さで割ってやるというと、放射能濃度、という言葉になるんですが、
この放射能濃度というのは、例えば、食の安全基準である、厚生労働省の食の基準値、
これは、大人で、100ベクレル/㎏、というふうになってますが、これは、
1㎏の食品中に、1秒間に、放射線が100個放出される量。これ以上は食べては危険ですよ」
というふうになっているわけです。
子供の場合はというと、50ベクレル/㎏です。
これは逆に、半分になった、というふうに考えてください。
1㎏の食べ物の中に、1秒間で、50個の放射線が出てるもの、これを、50ベクレル/㎏、というふうに言うわけです。
だから、放射線の量だ、というふうに思ってください。
 
『1秒間に、何個の放射線が出てるか=ベクレル』ということです。

身長167㎝で、体重60㎏sの成人男性を、イメージしてください。
この成人男性の身体の中には、平均値ではありますが、約4000ベクレルの放射能が出てるんです。
1秒間に、4000個の放射線が、我々の身体の中から出てきています。
これは、体重の筋肉量に依存します。
女性の場合は、もちろん男性よりも、筋肉量が少ないです。
そのため、3000ベクレルから3500ベクレルくらいの放出量だ、というふうに言われていますが、
逆に、ふくよかな体をお持ちの方々というのは、やはり、それなりの線量が上がる
わけなんです。
 
ちなみに、この放射線の大元は、セシウムではございません。
天然中に存在する、カリウム40というものです。
この、カリウム40というのは、半減期が12.7億年、というふうに言われているものですから、
もうこれは、我々人類というか、生命が誕生する前から、ずーっと放射能とお付き合いをしてる
わけです。
だからこそ、我々の中に、放射能として存在するけれども、我々の人体に、影響はほとんど無いんだというのが、このレベルなんです。
 
この、カリウム40というものが、天然中には多く含まれております
そういったものの中で、今回は、人口放射線核種ですね。
ヨウ素131や、ストロンチウム90……はほとんどないんですが、セシウム137と134といった放射性物質が、新たな放射性物質として加わり、食品の中に入ってるわけです。
 
ちなみに、じゃあ、お米でどのくらいかといいますと、
大体㎏あたり、50ベクレルから150ベクレルくらいの、カリウム40の放射能がある、というふうに、実測値が出ております。
この、カリウム40というのは、エネルギーが非常に高いのですが、セシウムに比べて、反応性が弱いんです。
だから、セシウムに比べて、その影響というのは、同じ量があったとしても、その量的関係でいいますと、約8分の1か、9分の1程度のレベル
なんです。
でも、これを多く摂りすぎれば、やはり、8分の1であろうが9分の1であろうが、影響は出てきます。
だから、カリウムの摂取のし過ぎ。
通常、食べられているのは大丈夫なんですよ。
でも、福島県内なんかは、
「食品汚染を軽減するために、カリウムを撒きなさい」
っていうふうに、農水省が推奨してます。
そのため、土壌100gに対して、25㎎から30㎎の、カリウムを撒いています。
このカリウムを撒くことによって、セシウムは吸収されにくいけれども、選択的に、カリウムは吸収されるわけです。
その吸収されやすさというものによって、セシウムの影響を軽減させる、というふうにやってるんですが、
実は、カリウム量が、ぐんと上がる
わけです。
上がってしまったら、実は、同じことが起きてしまう。
カリウムによる被ばく影響も、増加されるということは、実は、農水省に、大臣に、僕は言っています。
言ってるんですが、無視され続けています。

この危険性は、テレビでも言ってるんですが、あの有名な公共放送機関で、解説員が、
「先生、農水省で、私もこの話は聞いている。確認しましたら、農水省は大丈夫だ、と言っております」
「お前は、学者が調べた話と、農水の机にしか座ってない人間の話、どっちを信じるの?僕は実態調査の中で得られてるんだよ」
っていうことを、生放送で言いました。
こういったことを平気で言う、御用のマスメディアの人間がいる
わけです。
だからこそ、誤魔化されるんです。
 
こういったことが、実際に、平気で横行してます。
「自分の身は、自分で守らなくちゃいけない」って、福島の人たちに言ってるんですが、
要するに、国が言ったり県がやってること自体が、信用できるかどうかっていうのは、情報公開をきちんとしていれば信用できるんです。
その、情報公開がしてないからこそ、不信につながるわけです。
だからこそ、こういった情報をきちんと出せば、行政に対してだって、「良くしてくれてるな、ありがとう」という気持ちを持てるんですが、持てないのはそういったことなんです。
 
こういうことで、ベクレルというのは、放射能というものの単位を表すもので、
放射能濃度というのは、『Bq/kg』重さで割り算してるものが、1㎏中に、どのくらい放射能が含まれているかっていうので、このベクレルを使う
ものだ、ということです。


続きまして、この『シーベルト=Sv』
 
このシーベルトは、更に難しいです。
これは、一筋縄ではいきません。
これは、人体に影響を及ぼす単位として、シーベルトというものがあるわけなんですが、
このシーベルトは、実は、放射線の種類によっても違うわけなんです。
α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、そのほか、中性子線とか中間子とかμ粒子とかあるんですが、
代表的なα・β・γについて、お話をしていきたいと思います。
 
このα線というのは、皆さんもお手持ちの紙切れ1枚で、実は遮蔽することができるんです。
だから、この紙1枚、服を着ていれば、放射線はここで遮られる。
服で遮られてしまうものなんですが、実は、このα線が、人体に対して、影響というのが一番強いというふうに言われています。


じゃあなぜ、そういったことが起きるのか?
 
それは、紙1枚に対して、この紙切れに、α線というものが、一気に、すべてのエネルギーの受け渡しをしてしまう、
だからこそ、受けた側の影響は、一番大きくなるわけです。
ヘビー級のハードパンチャーが、どんとやってしまえば、人の命は失われる、というのは判りますよね?
でも、子供がじゃれ合って殴っても、その力は弱いですよね。
だから、その人体の影響っていうのは、同じパンチだけれども、影響は違うわけです。
これと一緒のことが、このα線でも起きているわけです。
 
実はγ線・β線に比べて、1を基準とした場合、このα線の影響力は20倍だ、というふうに言われています。
だから、発がん影響が、20倍になっています。
 
ここで説明しますと、ICRP=国際放射線防護委員会の、90年勧告と2007年勧告というのを、表にしてますが、
基本的に、この、光子というのが1です。
これは、γ線やX線を表しています。
電子・μ粒子、この電子というのは、現在も、この蛍光灯なんかで使われている、電気の流れ、これを作ったのが電子なのですが、
この電子が、ポンと飛び出してきたものが、なんと、β線というふうな名前に変わるわけです。
このβ線も、1なわけです。
これが、90年度でも07年度でも同じなんですが、このα線は、20というふうに、重みづけされているわけです。同じエネルギーでも、その影響たるや、相手に及ぼす影響は、20倍なんだよ、というのがα線なんです。


このα線というのは、欧米諸国、特に、アメリカの統計データなんですが、
アメリカ人の肺がん患者の、4人に1人は、このα線によって、肺がんになってるんだ、というふうに言われています。
じゃあ、その由来はというと、これは、食べ物や、地面から出てきている、ラドンガスというガス。
このガスっていうのは、α線放出核種なんですね。
α線を出すから、それを吸ってしまう。
ガス状ですので、知らず知らずに吸ってしまう。
そのことによって、DNAが壊されてしまう。
そのDNAが壊されたものの、修復がうまくいかずに、そのまま、遺伝的に受け継がれていく。
そのうちに、突然変異として、ガン細胞が出来上がるというのが、ガンのメカニズムなんですが、
こういったことが、実際に、肺の中で起きてるわけです。
じゃあなぜ、欧米諸国は、こういったことが少なくないのかと申しますと、これは、石造りの家や地下室が、多いんですね。
だからこそ、ラドンガスというのは、実は、ウランという核燃料物質、これは、天然中でも、ほんのちょびっとですが存在します。
それらが、原子核崩壊をしながら出てきた物質が、このラドンガスなんです。
だから、石の中にも含まれてるし、土の中にも入ってる。
もちろん、コンクリの中にも入ってる
わけです。
こういったものがあるために、その濃度が濃い状況で、生活をしてしまうから、肺がんが起きてしまうんだ、というふうに言われています。
 
では、日本ではといって、日本で調べてみました。
これは2009年、2010年ですが、厚生労働省のお金をもって、実は、ラドン調査の??になりました。
全国4200か所の加盟に対して、このα線量を調べた。
ラドン濃度を調べた結果ですが、大体、1時間あたり、100ベクレル以下です。
でも、100ベクレル前後はあるわけです。
高いところで、200ベクレルを超えています。
欧米諸国では、250ベクレルとか400ベクレルというところがあるわけです。
そういったものを、WHOが今、規制をかけようとしております。

というわけで、このラドンガスが壊れるときに、放出されるα線というものが、肺がんリスクにかなり寄与してるんだということです。
こういった天然中の放射性物質があるわけです。放射線の種類によって、その影響は同じエネルギーであったとしても、影響の度合いは全然違ってくるということが言われております。
 その一覧表がさきほどのこの表になるわけです。


でも、最新データをお伝えしますと、このβ線というものは、実は、皮膚の表面にくっついたり、体内に取り込まれた場合
これは、ストロンチウムの場合、と考えてください。
ストロンチウムというのは、β線を100%放出する、準β各種といわれるんですが、
ストロンチウムなどのβ線放出核種では、なんと、γ線に比べて、影響が大きく出ているという実験が、ねずみさんの実験なんですが、もう言われております。
今、WHOやICRPでは、このβ線に対する基準を、考え直さなければならないというふうに、検討に入ってるところなんです。
 
これを見つけたのは、大阪大学の、今、名誉教授をされている、野村大成先生というお医者さんです。
この野村先生は、様々なお医者さんがいらっしゃる中で、一番僕が尊敬している、最も信用のおける先生なんですが、
この先生は、実験的に、全部調べてくださった。
 
こういったようなことで、実は、β線についても、危機感を持たなければならない、というふうに解しております。


ちなみに、セシウム137、134というのは、実はβ線放出核種です。
γ線は、ちょびっとしか出しません。
ほとんどγ線だ、というふうに言われてるのは、セシウムが壊れて、すぐにバリウムというものになります。
バリウム134、137という物質になるんですが、これがわずか、2分ちょっとで崩壊して、違う物質に変わるわけです。
その時に、γ線をドーンと出す
んです。
セシウム137は、半減期が30年、134は2年、というふうに言われております。
 
これが、半分の量になるっていうのが、30年や2年、というわけなんですが、
かたや、バリウムになると、わずか2分程度で、γ線を放出して、違う物質に変わるということで、ほとんど平衡状態になってるわけです。
バリウムの量=セシウム量と一緒になってしまうから、
ここから出てくるバリウムの量と、出てくるγ線は、セシウムから出てきた、とみなすことができるので、
γ線放出核種のようにいわれてるんですが、実はβ線です。
実は、β線放出核種
です。
これらのβ線の影響というのが、もしかしたら、効いてくる可能性も、今後あるわけです。

続いて、もう一つ。
放射線の種類によって、違うシーベルトなんですが、もっと大変なのは、実は、臓器の中でも、放射線の種類によって、影響が異なるということです。
 
それをちょっとご紹介しますと、例えばこの結腸、肺、胃っていうのは、0.12、というふうに出てますよね。
これは、ICRPの、2007年度版でも同じです。
生殖腺は、0.20~0.08に落ちました。
組織荷重係数というものがあります。
全く影響を示さないものとしては、他の臓器がありまして、これらも、何らかの影響があるかもしれないということで、全部、足し合わせて、1になるようになっています。
だから、実は、臓器ごとの被曝線量を求めて、その臓器ごとに被曝線量を出して、足し合わせたものが、シーベルトという単位になるわけです。


ちなみに、なぜ、この0.12という高い数字になるかというと、
これは、細胞増殖回数、細胞分裂回数が大きい組織ほど、放射線の影響が大きい、というふうに言われています。
また、未分化細胞、肝細胞ですよね。
よくiPS細胞というのが、最近言われてますが、この、なんにでも変わる万能細胞は、実は、放射線の影響が強いんだ、というふうに言われています。
これは、1906年に、フランス人の研究者である、ベルモニーさんとプリモンドさんという方が、
ねずみの精子に放射線を当てて、実験をした結果、導き出された実験則なんですが、
この実験則でいうと、骨髄や結腸というのは、細胞分裂が非常に大きいんです。
東海村臨界事故の時に、お亡くなりになられた方は、輸血が始まります。
これは、直腸や結腸というものが???が壊されて、もう表面が、ズルズルにずる剥けになってしまって、
そこから血液が漏れ出てる症状、というので、輸血が始まるわけです。
こういったことで、白血病の話がありますね。
広島・長崎では、白血病が出ました。
それは、赤色骨髄細胞というものが、背中のあたりにあるんですが、主には白血球ですが、白血球を作る細胞というのが、骨髄になります。
この細胞がやられてしまいやすい、ということで、影響が大きいんだ、というふうに言われています。
 
ではなぜ、2007年度勧告では、生殖腺が下がってきたかといいますと、これは、遺伝的な影響がほとんどない、確認されてないから、
生殖腺の影響はほとんどないんだ、あまり大きくみなすことはないんだ、ということで下げられました。

 
これは、僕は、異論を呈します。
というのは、これ、実は、広島・長崎で、被爆者から生まれた子供というもの、これは第2世代。
第3世代というのは、この被爆者の子供から生まれた子供が、第3世代ですが、彼らは実は、ほとんど、遺伝的な影響というのはありません。
出てないです。
これは、自然発生率の中で出てくる、遺伝的な影響はもちろんあります。
その中から、明らかに超える数字が出ていない。
だからこそ、遺伝的な影響は、ほとんど無いんだ、ということで下げられたわけですが、でもこれは、僕は、ICRPは間違いだ、と思っています。
なぜならば、これは、放射線遺伝学という、学問があるんです。
この放射線遺伝学の中では、既に、もう結論が出てるんです。
被曝をした人たちというのは、実は、遺伝的な影響が出るのは、普通に被曝をすれば、数十世代後に出る、というふうに言われています。
数十世代ですよ?
だから、何千年も後に、出て来る可能性がある
んです。
 
だから、第1世代、第2世代、第3世代では出ない、ということを知っているけれども、
知っているから、大したこと無いんだといわんばかりに、こうやって、リスクを下げてる
んです。
 
今回のような、福島第一原発や、チェルノブイリの事故
こういった場合には、遺伝的な影響が出るのは、早くて5世代以降だと思います。
でも、普通に考えて、10世代以降だと、我々は考えています。
 
実際に、遺伝的な影響が出るといっても、目に見えないとか、手がないとか、身体の部分の一部が欠損してる、というようなものではありません。
本人すらも、周りの人すらも、全然気づかないレベル
、ほんのちょっとした……、
例えば、かけっこでいえば、ちょっとだけ足が遅かったり、ちょっとだけ??が遅かったり、
ほとんど、自分自身も影響がなく、健常人とほとんど変わらない状況で、まずは出現するだろうというのが、
1970年代に、遺伝学の大家、日本では、遺伝学の父と言われている、木村??先生という先生がいらっしゃるんですが、その先生が、本の中で言われています。
こういった遺伝というものは、実は、長い長い年月を経て、出てくることです。

ちなみに、つい最近、今年の8月ですが、NHKの子供科学ラジオ電話相談に出たんですが、その中で、虫の質問が出たんです。
『ノコギリクワガタとコクワガタを飼ってます。これが交尾をして、ノコギリコクワガタはできますか?』
っていう問題だったんです。
「う~……きっち~!」
と思って、僕は、放射能で良かったと思いながら聞いてたんですが、実は、僕も、答えが「できない」です。
これは、「できません」。
残念ながら、これは、交配ができません。
でも、よくよく似た近縁種、ライオンと虎が交配すると、レオポンというものになります。
(これは間違いで、正しくはライガー。ライオンとヒョウの交配が、レオポンだそうです)
例えば、ジャガイモとトマトをかけあわせても、ポマトというものになる、という話があります。
こういった交配では、第一世代しか残せないです。
種の存続は、できないです。
だから、第2世代ができない、というふうに言われています。
かけあわせた交配によっては、子供はできるんですが、その次に、遺伝的に、ずっと持ち合わすことはできないです。
これが、種の保存、というものなんです。
固有種というものは、きちんと、その種の存続をしなければならないということで、突然変異は、ほとんど好みません。
でも、その中で、突然変異ができて、その突然変異が、遺伝的に伝わる、ということになれば、
それは、ものすごい弱い影響でしか、遺伝的影響としては出てこない。

でも、それが出始めると、弱い種族が出てくるわけです。
この弱い種族が出会う確率が、今度出てくるというのは、交配が続くと、どんどん弱い遺伝を持った人たちが、増えていきます。
そうすると、数十世代以降、数百世代後には、ものすごい弱い影響が、顕著に表れた人類が、出てくることになります。
だから、人類の滅亡というのは、もしかしたら、そういうところから始まるかもしれない
と。
 
遺伝的なお話は、こういったことなんです。
だから、こういったことを、正しく理解せねば、広島・長崎のときのように、奇形が生まれる、というような話が出てくるわけです。
奇形が生まれてくるとしても、これはゼロではありません。
出てくるのはあります。
チェルノブイリでも、でてきたという報告は受けてますが、この中でのほとんどは、出てきても、生命維持が出来ないような形で、
1週間後には、死んでしまうような状況が多いわけです。
そのほかには、直接的に、非常に大きな遺伝を持った人が、出てきましたっていう話をしますが、
その自然発生率が、いったい何%かっていうのは、事故前から調べなければいけないのですが、調べられてない。
ほとんど判らないわけなんですよ。
あたかも、見てきたかのようなことを言いますが、科学的に言えば、実は、
実験的に実証された遺伝学の中では、直接そうやった、遺伝的欠損を持った方々が、生きながらえるくらいのレベルで出てくることは、ほとんど……ごくごくわずかだと思います。
中には、いらっしゃると思いますよ。
ゼロではない、と思いますが、数学的にゼロでない、というだけ
なんです。
 
じゃあ、実際にはどうなのかというと、ほとんどが、被曝をされた場合、生き残れないと判断すると、流産になってしまうというのが、我々の身体なんです。
そういったことをきちんと理解しなければいけないなと思います。


ということで、実際に、シーベルト、この一つ一つをとっても、放射線の種類によっても、その影響は違う。
また、臓器によっても、影響は全然違うんだ、ということで、
放射線の種類を掛け合わし、さらに、組織の影響する感受性の違いというものを掛けあわせて、
初めて、もともとの放射線のエネルギーを掛けあわせることで、シーベルトというものが出てくるわけです。
それを、全ての臓器を足し合わせて出したものが、この実行線量、シーベルトという単位になるわけです。
だから、簡単に、シーベルトというふうに使われるんですが、実は、大変な計算をしなければならない
ということなんです。


今回の場合、より複雑にしてるのは、チェルノブイリほどではありませんが、β線の影響の寄与率を考えて、更に、γ線の寄与率も考える。
それから、それぞれの組織の寄与率も考えた上で、出してくるっていうのが、本当の正確な値なので、
実際に???されてるのは、簡潔に簡略化された、計算式から求められたもので、
きちんとした精度の良いものではない、ということを、皆さんも理解してください。

 
ということで、ちょっと、話がだいぶ長くなってしまいましたが、
もう一つは、放射能というのは、実はこの地域を含めて、広く薄くではありますが、一度は汚染され、被曝をしましたよっていうことを理解してください。
 
皆さんにお配りしたレジュメですが、この中で一つだけ、今日、文書をさっきちらっと見てたら、間違いがありました。
『燃料棒を覆う金属の一部から、水素が発生する』
というふうに書いておりますが、それは間違いです。
訂正して、線を引いておいてください。 
実際は、どういったものかというと、
燃料棒を覆うジルコニウムという金属が、通常、原子炉っていうのは、加圧された状態、圧力容器によって、中で冷却されてます。
だから、その水というのは、100℃以上で、水の状態を保っています。
通常、240℃だ、というふうにいわれていますが、この240℃では、ジルコニウムに触れても、水素は発生しないんですが、
ジルコニウムが、900℃を越えた場合、水と反応して、水が酸素と水素に分れるらしいです。
この水素濃度が、4%を超えた時に、大気中の酸素と触れ合うことで、大爆発が起きる。
これが、水素爆発なんだということです。
ちょっと誤りがありましたので、訂正しておきますが、
これは、『ジルコニウムという金属と、900℃以上になった水が触れ合った場合、水素が発生する。
その水素によって、大爆発を起こすのが、水素爆発なんだ』
ということです。


不幸にして、これは皆さんご存知のように、全交流電源喪失という事態になりました。
冷却水を冷やすための外部電源が、全部、津波によって、ショートしてしまいました。
そのおかげで、冷やす能力がなくなって、どんどん空焚きの状態になって、わずか十数時間後には、メルトダウンが起きたと言われています。
メルトダウンが起きたんですが、チェルノブイリと全然違うのは、チェルノブイリは、原発の構造が違う、というのがまず一つ。
もう一つは、その構造の中に、圧力容器という、安全構造を持っておりません。
だから、チェルノブイリの場合は、一気に、水素爆発じゃなくて水蒸気爆発。
水と、メルトダウンした、ドロドロに溶けた燃料が触れ合った瞬間に、一気に水の体積が膨張し、
水蒸気になって、その水蒸気が、150トンもの重さがある蓋、原子炉釜を取り付けてある蓋、ちょうど、イメージは、この白いぼんぼりみたいなものですね。
こうやって、ぶら下がってたんですよ。
このぶら下がってるこの状況、蓋が150トンあるのですが、水蒸気が持ち上げたんです。
グーッと持ち上げて、大気と触れた瞬間に、今度は、大爆発をしたということで、水素爆発じゃなくて、水蒸気爆発である、というふうに言われています。
そのために、このぶら下がってたのは、燃料棒だと思ってください。
これが、大気中に、大量放出されたのが、チェルノブイリです。


ところが、ここは、圧力容器というもので守られてたものが、圧力容器は、メルトダウンによって溶かされました。
でも、水素爆発はしたけれども、水蒸気爆発を起こさなかったために、圧力容器は、そのままの形で残っています。
だから、原子炉の内部の核燃料というものが、大量に放出されることが無かったということで、
実は、チェルノブイリと福島の事故というのは、大きく違う
んだ、ということをご理解ください。
 
ただ、原子炉建屋、格納容器は、大爆発をして壊れました。
そのため、大量の放射能が出てきて、家々を汚染し、また、山々を汚染していきました。
家を汚染したことで、帰ることができないような方々を生み、また、食品の汚染にも、繋がっていったわけですが、
更に不幸な出来事は、山を汚染した放射性物質が、表面にくっついた状態になったんですね。
これが、雨によって洗い流されて、川を汚染し、更には、河口を汚染し、海を汚染してしまった
んだ、という事実を理解してください。


これから見せる、衝撃的なお話ですが、実は、早い時期にもう、放射能は、長崎に到達してるんです。
静岡じゃないですよ。
静岡は300㎞、400㎞くらいの圏内だと思うんですが、遥かに超えた、2000㎞くらい離れた長崎で、もう既に、3月の時点で、放射能は到達しています。
これを計測したのは、長崎大学の、僕の親友で、常に、僕のデータを分析して、未だにずっと、二人羽織で調査をしている、高辻俊宏先生が解析してくださったんですが、
彼は、事故前からずっと、エアロゾル、大気中に浮遊してる粉じんを集めて、その粉じん中の放射能を測る、という仕事をしてました。
更に、これは、中国大陸から飛んでくる、環境汚染物質をしらべる、ということもやってたんですが、
この放射能が、長崎に到達しているんではないかということで、彼が分析した結果、
ただ、これを、指導していた大学院生の仕事だったんですが、出来が悪くて……、
事故直後から測っていれば、ヨウ素が判ったんですが、ヨウ素が未検出のままだったんです。


ヨウ素が全部飛んでしまった後に、見てしまった残念な結果なんですが、
この赤い部分が、セシウム134で、青いのが、新たな放射性核種ですが、銀の110Mというものです。
Mというのは、メタステーブル、準安定状態というものなんですが、銀の110M、というものが出てる。
更には、セシウム134が、緑色で出ているわけです。
後の、紫色の、鉛の210というのは、天然中に常に存在するもので、それはほとんど差が無い。
でも、人工放射性核種は、量の最大値が、昨年4月6日から13日の、この1週間で、長崎市が最大ピークを迎えました。
この、有り得ない話をしますと、この塵、1㎏に換算して計算すると、
飯舘村の蕨平、僕が、3月28日に入った時は、40マイクロシーベルト/時を越えている地域です。
この飯舘村の、蕨平の、0~5㎝の土壌と、ほぼ匹敵するくらいの放射能が、飛んできている
ということになりました。


ということはですよ?
これは、皆さんのこの地域でさえも、一度は汚染されてしまったんだ、ということを認識してください。
なぜなら、京都の五山の送り火、大文字焼きですよね。
あそこで、岩手県の陸前高田市の薪が、「放射能で汚染されてるから焼かない、燃やさない」と言ってやらなかった、京都市の判断がありますよね。
こういったことっていうのは、実は愚の骨頂で、実際には、それ以上の放射能は、既に到達してるんだから、
ほんのわずかしかでてない、放射性物質を怖がって、
「琵琶湖の水が汚染される」
「もう既に、汚染はされております」
というのが、僕の結論
なんです。
こういったことが、風評被害として、明らかに、風評被害として出てしまうというのが、胸の痛むところなんです。
これを、きちんと、科学を持って否定をせねばならない。
当初から、ずっと言っていたんですが、やはり、伝えるということっていうのは、なかなか難しいことで、
全国的には伝わらないから、そういうことが起こるんですが、こういったことは言ってました。
 
実際に、どこの地域でも、きちんと測れば、今回の原発事故由来の放射能っていうのは、検出されるわけです。
こういったことが、実際にはありました。
 
更にですよ、これ、今年の2月2日、3日と、釧路にある北海道教育大学釧路校というところで、放射線教育を二日間やりました。
そこで、最終日の最後の時間に、
「皆さん、じゃあ、この地域が、放射能で汚染されてるかどうか、調べてみましょう」
っていうことで、放射能を測定したんです。
そしたら、やっぱり、線量計上がるんですよ。
しかも、足ふきマットや、思わぬところで上がるっていうことは、これは、放出されたものが、やっぱり浮遊してきてるってことなんですね。
『釧路でも起きてる。長崎でも起きてるということは、これは、広く薄くではありますが、全国で、放射能に汚染されたんだということを、認識せねばならない時代に来たんだ。放射能汚染時代だ』
ということを、理解してください。

だから、この静岡
実際に、ちょうど海側を通る風によって、実は、お茶が汚染されましたよね。
あれは、ただの付着じゃありませんよ。
汚染も吸収も、されてるはずです。

だからこそ、実は、この静岡だって同じことなんだと。
一緒に考えて、同朋のために、考えていかねばならないと思います。
 
これ、3月15日、北西方向に吹いた風っていうのは、飯舘村を襲って、更には、僕が避難させた、浪江町の赤宇木集会所に居た人たちも、被曝しました。
そしてさらには、福島市や郡山市も、汚染されたんですが、この汚染状況というのは、3月15日の夕刻です。「じゃあ朝はどうだったの?」っていう疑問が出てくるじゃないですか。
その答を、ちょっとお見せします。


これは、実は、海沿いの風が吹いたんです。
南側の風がグイッと吹いて、なんと、海を通過して、千葉県を経由して、ずーっと流れて、静岡県の方に、実は流れてるんです。
これは一例です。
風の流れも、当然皆さんお分かりのように、様々な方向に吹きますよね。
だから、この風の一部、しかも、一番濃い放射能が含まれた風が、こちらにも到達したんだと思います。
ここは、3月15日の午前10時、東京に、最大の放射能が到達したとき、たまたまそれを検出しました。
それを、さっき言った、大気中の塵を集めるハイボリュームエアサプラというもので集めて、
それを、京都大学原子炉実験所の、小出さんの方に送って、小出さんによって、発表してもらいました。



その時は、東京都でも、1マイクロシーベルト/時を超えてるわけです。
実際に、朝早く、放射能は、いわきを通過したんです。
昨年3月の、23日から30日にかけて、原子力保安院は、子供たち1200名に対しての、甲状腺の簡易検査をしたんです。
その中で、最大が、35ミリシーベルトのお嬢さんが見つかりました。
これは、小学校4年生のお嬢さんなんですが、なんと、飯舘村や浪江町とか、そういったところではございません。
最大の放射線被ばくをしたお嬢さんは、いわき市です。
いわきは、今現在、空間線量率0.1くらいです。
非常に低いんです。
なんでこういったことが起きたか、皆さんも、3月15日から3月30日まで、思い起こしてください。
これは、絶対、皆さんには大切なことです。
ここ、汚染地域なので、思い出してください。
思い出す方法は、震災があった時から、ずーっと遡って計算していくんです。
そうすると、震災の時は、絶対覚えてますから、震災直後からどうだった、ああだったという話を、
みんなと、お友達と一緒に話していけば、その時の、3月15日の、状況が出てきます。
そういったことで、思い出して、書き留めておくっていうことが、大切なこと
ですが、
実は、この日の、気象条件が左右するんです。
この日、雨が降った地域、雪が降った地域は、飯舘村、福島市、郡山市です。
これらが、汚染を拡大しました。
土壌を汚染させた原因
です。
更に、いわき市は、その時間帯、雨も雪も降らなかった。
表面を通過していったんです。
だからこそ、土壌汚染が少なかったから、空間線量率が、今のように、0.1なわけなんです。
こういったような状況で、この静岡市が、静岡県が、気象条件がその時どうだったかということで、汚染レベルが決定されるわけなんです。


だから、実は、このいわき市で見つかったお嬢さん、放医研が、このデータをもとに計算した結果は、35ミリシーベルト。
これは、3月12日から、爆発が起きた、事故が起きた時点から、3月30日まで、
食品が汚染されたとして、毎日、経口摂取をしたときの計算でやったら、35ミリシーベルトです。
でも、私は、二本松市で、今5000人を越える人の、内部被曝調査をしました。
その結果で、事故から早い時期の段階の方々は、外に居た時間に比例して、内部被曝量が変わる。
ということは、これは、食べ物じゃなくて、呼吸から入ってる。
肺による吸入摂取被曝=呼吸からなんです。
だから、吸入によって、摂取したときの被曝線量で、お嬢さんを計算し直しました。
その結果、甲状腺部分での被曝量は、80ミリシーベルト
です。
 
これは、1200人という簡易検査で、ちょっとした簡易検査です。
氷山の一角であって、もっともっとたくさんの人が、被曝をしてる可能性があります。
そういった状況というものが、まだ見えてこない。
これで、
「じゃあ影響があるかどうか?」
「ほとんどないでしょう」
とは言えないんす。
「ある」、と僕は思っています。

出てくるかもしれません。
 
実はおととい、双葉町の井戸川町長と、3時間ほど対談してきました。
双葉町は帰りません。
原発の敷地を持ってる町ですから、汚染が高いです。
福島弁でお話すると、
「先生、俺ん家は、庭先で60マイクロまだあるんだ。でもよ、墓はよ、200マイクロ超えてんだよね」
「有り得ない」
「先生、これは帰れるのけ?」
「帰れるわけねぇやないか」
とはっきり答えています。
「無理です。帰還困難です」
っていうふうに言ってるんですが、この双葉町の方々や町長は、実はもう、まことしやかに、
町長はいの一番に逃げて、住民を置き去りにしたんだと言っていたんですが、実はそうではなくて、彼は、最後まで残ったんです。
残った状況の話を、聞いていきました。

なんと、あの建屋を覆ってる、断熱してるブラスウール、ふわふわの黄色いやつですね。
このふわふわのやつが、音もなく、しんしんと降るさまを、見たそうです。
これは、原発から8㎞離れたところ。
それが、雪のように、しんしんと降るさまを見ながら、全員が、呆然と立ち尽くしながら、
町民も、役場の職員も逃げてるんですが、残った人、警察や自衛隊、町の残ってる人たちや病院の先生方は、その風景を見たらしいです。
「この中で、どれだけ放射能が飛び出たか、わかんねぇんだよね。俺もちょっとおかしいんだ」
って言ってます。
 
ということはですよ、本人に言ってません。
許可も得てません。
でもね、これは事実です。
こういったことが、直近ではあったわけです。
こういったところで、もしかしたら、まだまだお子さんでも見つからないけど、これから出てくる可能性はあります。
 
通常であれば、チェルノブイリのほうでは4年後に、甲状腺ガンが、基準値・平均値を越えて優位になったということで、
放射線の影響が、4年後から出た、というふうに言われています。
でも、これは、事故当時の検査技術が発達してなかった、ということも含めて考えますと、もうちょっとしてから出てくるんじゃないか
と。
今現在、調べたものは、ちょっと、影響が出るのが早すぎるんじゃないか。
もし出るとすると、よっぽどの影響がないと出てこないです。
更に、チェルノブイリで、甲状腺ガンになったり、甲状腺の良性腫瘍になった方々というのは、実は、ヨウ素欠乏症の地域なんですね。
これは、海から遠いから、ヨウ素が入ってこない。
ところが、日本は海洋国家です。
ヨウ素がたくさん含まれてるんで、もともとヨウ素は多く含まれてる上に、放射性ヨウ素が取り込まれるということで、
取り込み量が違うんじゃないか、というふうに見てる学者さんが、結構多いです。
僕も、それはあるかもしれないなと思いますが、ただ、可能性を捨ててはないし、
もし影響が出た時の対応は、せねばならんと思って、甲状腺検査というのを、これから、いわき市でやろうとしています。
いわき市で、僕は、放射能測定所のジェネラルアドバイザーっていうのをやってますので、
放射能汚染による、甲状腺検査への指導をしてやっていこうか、というような話をしてるんですが、
そういった地域では、まだ出る可能性があります。
だから、今出てる方々っていうのは、自然発生率の中に、含まれるかもしれません。
でも36%、甲状腺になんらかの障害があるのは、これは、今まで調べてないから判らないけど……多いのかな……ちょっと怖いかなっていうのが、正直なとこ
なんですが、
放射線によってガンになるっていうのは、かなり時間が経って出てくる晩発性障害だ、というふうに、僕らは習ってたんですよね。
だから、この中で出てくるというふうになると、僕はあんまり考えてないんですが、
これは、今までの学問と、これから新しく調べていって判るものには、違いがあります。
だから、「学問上ではこう考えられます。でも、出てくる可能性は、ゼロではない。
だから出てくるんだったら、証拠をきちんと出さないといけない」というのが、学者の務め、役割
じゃないかな、というふうに思っております。
<2-3終了>


この後、非公開で、二本松市の状況のお話があったあとに、質疑応答があるのですが、割愛させていただきます。
ただ、その中で、「甲状腺検査を断られた場合、どこに行けばいいか?」という、親御さんの切実な質問に対し、木村先生は、
「医者ではないし、僕の範疇ではないが、聞いたことがあるのは、民医連(共産党系)では、検査を受けてくれる
という趣旨で、回答されていました。
詳しくは、9月23日【内容起こし】木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その①】の、三つ目の動画をごらんください。

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『市民科学者養成講座』by 木村真三氏 その1

2012年10月04日 | 日本とわたし
ブログ『ぼちぼちいこか』で、膨大な量の書き起こしをコツコツしてくださっているトキコさんのお許しをいただいて、
9月23日に、静岡にて、木村真三氏によって行われた、市民科学者要請講座の内容を書き起こしを、ここに転載させていただきます。
木村真三氏がおっしゃる言葉には、被災地や、今も被災されている方々に密着しておられる者ならではの思いがこもっており、
想像でしか思いを馳せられないわたしなどは、厳しかったり、また、わずからがらに抵抗を感じてしまったりすることもあるのですが、
自分が偏らないよう、一方的な思い込みをしないよう、いろんな方々の、
特に現場に身を置いて現実を見ておられる方々の意見を聞かなければならないと思っているわたしにとって、この資料はとてもありがたく、
この内容を、こうやって何度も読めるようにしてくださったトキコさんの、途方もない大変な作業に、心から感謝をしたいと思っています。

↓以下、転載はじめ

木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その①】 9月23日【内容起こし】





【質疑応答】


【講演内容】
福島の子どもたちの放射能被害の実態、26年を経たチェルノブイリ原発事故の現実、そして浜岡原発事故が起きた場合の静岡の汚染予測など、
ご自身の足で汚染実態をつかむ、フィールドワークに基づいたお話をしていただきます。

主催:東北関東大震災・原発震災救援基金
(独立行政法人福祉医療機構・社会福祉振興事業)

<1-3>
・『市民科学者養成講座』とは何か
・放射線衛生学を専門とするようになった経緯
・政府側に居ながら、JCO、柏崎刈羽で出来なかったこと、福島第一の危うさ
・現状取り組んでいる活動内容
・実際に起きている、いじめと虐待の事例2件―なぜ起こるのか
・メンタルケアと調査の必要性
<2-3>
・ベクレルという単位は、何を表すか
・自然放射線(カリウム40)と、人口放射線の違いと注意点
・シーベルトという単位は、何を表すか
・α線は、β線/γ線の20倍!
・ラドンガスと肺がんの関係
・臓器に対する放射線の影響の違い
・被ばくによる遺伝的影響
・チェルノブイリと福島第一事故の違い
・長崎の放射能到達状況
・放射能汚染時代
・2011年3月15日の汚染の広がり
・2011年3月に保安院が行った、簡易の甲状腺被曝検査
 『最大35mSv評価は、経口吸入評価だと80mSv』


【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】

(木村真三氏)
長いご紹介ありがとうございました。
皆さん、待ち焦がれていると思います。
実際に話をしないと、時間はどんどん経っていきます。
なので、お話をさせていただきます。
僕、こんな高い壇上からお話するの嫌いなんで、できるだけ動きながらお話させていただきたいと思います。

題目

まず、私がこの、『市民科学者養成講座』というふうに書いてありますが、
これは、ほとんど、どこの地域に対しても、まずこの『市民科学者』とは?っていうのをですね、
「放射能について、皆さん理解してください」
という意味合いで、「まず市民科学者になりましょう」ということの一環として、こうやって各地を回っております。
その中で、いろんな副題として、その地域・地域で要望されている内容というので、話を組み立てていくということで、
こちらの方の題目をさせていただいておりますが、実際、皆さん、ここに来られている方々というのは、実はものすごく優秀な方々。
なぜか?
既に、問題意識がある。
放射能についても、原発についても、皆さん、かなり意識をされている方々で、
ここでは本来であれば、もうほとんどの方々がきちんと……実態というのは知らないかもしれませんが、大まかには理解されている。
 
じゃあ、ここにきて何をすればいいの?
話を聞くだけではございません。
皆さんにこれからお願いするのは、今日来られなかった方々や、こういった現状を知らなかった方々に、皆さんが、市民科学者となって、伝えていってほしいと思います。
そのために、こういう、講義という形をとっております。
こういった苦悩の中で、皆さんが感じられたことっていうのを少しずつ、皆さん、他の方々、今日来られてない方々に対して伝えていくっていうのが、自分自身で、これからできることの一つだと思っておりますので、お話をさせていただきます。
 
ちょっと写真が暗いですね。
申し訳ございません。
前だけ暗くしてください。
後ろは明るくしてください。
っていうのは、皆さん、これ、医学部で、衛生学というのが、僕の専門なんですね。
暗くなると、皆さん眠くなります。
これは、本当のことなんですよ。
これは、目から入ってくる信号が、遠視野反応といって、脳の中でちゃんと光を感じる、
それによって、覚醒が起こるんです。
ところが、これがちょっと暗くなると、また難しい話に入っていくと、だんだん眠くなってくるんです。
これは仕方がありません。
人の世の常です。
その時に出てくるのが……ど忘れしてしまいましたが、メラトニンです。
メラトニンというのが出てくると、もうこれは耐えられません。
もうね、手足が熱くなってきて、ほんわかしてくると、睡魔に負けてしまいます。
ということで、できるだけ明るくお願いしたいということで、いつも、こういう会場とか、大学の講義でもそうやってます。
 
そういったようなことで、実は、もともと僕は、放射能というものに携わる前は、北海道大学の大学院で、パーキンソン病の研究をしておりました。
パーキンソン病の発現基準、一体、どういったところで、パーキンソン病が起こるのか?というようなところを、その原因が判れば、根本治療ができるんじゃないか。
今は、対処療法しかできないんです。
根本治療についての基礎的研究、というのをやっておりました。
 
ということで、全く、実は、放射能に関係ありませんでした。
放射能自身も、「面倒くさいからやりたくない」、という気持ちが実際ありました。
でも、実はですね、最近少し、僕の素性が明らかになってきて、あまり言いたくないんですが、昔、素行不良でした。
素行不良で、ほとんど大学に行けないような状況で、きたのが、やくざとシカゴだけだったというのは、実は本当の話なんですが、
ホント、言いたくないんですが、もう朝日新聞に出ちゃったので、仕方がないと腹をくくりました。
【参考】http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/802.html
 
そういった中で、一念発起して、勉強してきたんですが、出来が悪いので、身の丈を知ったということで、
短期大学からずっと、ステップアップで勉強していったんですね。
で、編入しながら、大学院を二つ受けて……っていうことで、四つの大学を卒業し、四つの分野=物理、化学、薬学、医学出てます。
っていうことで、そもそも物理は、僕の基礎にありますので、その物理の関連することだからということで、
当時の放射線医学研究所、科学技術庁の人員募集、求人というのに、出してみないかという誘いが来たので、
「じゃあやってみようか」っていうのが、実は始めるきっかけなんですね。

本当に性根を入れてやろう、と思ったのは、実は、入った年が1999年、東海村臨界事故の年です。
東海村臨界事故を経験したときに、すぐに、現場に入らなければならない、ということで、研究所に帰って、
実は、その時には、日本原子力研究所というところで、1か月の講習の研修を受けてました。
研修中に、この事故が起きた。
だから、その時に、
「大変なことが起きた。臨界事故だ」
「先生すいません。臨界を、もう少し説明してください」
というくらいのレベルでした。
 
そういった、臨界事故ということすらもはっきりわからない時に、これは何か、研究者としてやれることはないかということで、
すぐに研究所に帰って、研究所の有志たちと、現場調査の話をしたんですが、研究所からは、止められてしまいました。
本省(当時の科学技術省)からも止められて、結局1週間、現地に入ることができなかった、というような経験がありまして、
今回のこの事故では、すぐさま入らなければならない、というふうな形で、職を辞したというのがあります。
 
でも、これってただの、「起きるかもしれない」とかではなくて、実は、「必ず世界のどこか」……基本的に、もっと焦点を絞ってお話をすると、
やはり、「日本で、こういった原発事故は起こるだろう」と、実は思っていました。
というのは、さきほども、まつやさんがおっしゃられてましたけども、柏崎刈羽原発の中越沖地震。
あの時に、実は、事故が起きた瞬間に、「原発どうなった!?」って、やっぱり僕は動いたんです。
本省にも問いあわせて、その時の本省は、厚生労働省です、厚生労働省に移りました。
移った後に、あの事故があったんで、
「どうなんだ?」
「原発は大丈夫だ。原子炉は大丈夫だけれども、原子炉建屋内では、汚染が起きてる」
ということで、
「入らせてくれ」って言ったんですが、それでも本省からは、
「ダメだ」
というふうに言われました。
 
結局、こうやって、国がやってることっていうのは、実際は、自分たちの体裁だけを整えて、
一体現場で何が起きてて、一体どういった被害があるかというものを、きちんとつぶさに研究しなかったからこそ、この事故が起きたんです。
まさに人災ですよ。


地震が起きるというのは、当たり前のことですし、もうこの、関東大震災クラスの地震というのは、
日本では、様々な、南海トラフも含めて、「あるだろう」と言われていながら、
原発の、地震に対する対策、また、柏崎刈羽原発を一切無視して、このまま放置していたっていうことは、
これは、国の責任
ではないか、と僕は思っております。
 
こういったことで、実際には、予測していたために、更にもう少し……実は、皆さんに、初めて言うかもしれません。
実は、もし、次に原発事故が起きるんだったら、この福島第一原発だ、ということまで、予測しておりました。僕、預言者じゃないです。
だから、超能力者でもないですよ。
夢に見ました、という話じゃなくて、ちゃんとした科学的実証が、証拠があるんです。
 
正直言いまして、僕は、ずーっと、原発事故というのを全部、歴史的に追っていったんです。
これは、何でやったかというと、厚生労働省で、僕は、労働基準局の所轄だったんですね。
だから、労働者の被曝対策、というものをやらないといけなかったので、原発内で、不正の事故隠しとか、そういった歴史を、ずーっと調べていったんですね。
そうした時に、一番多く出てたのが、実は、福島第一原発なんです。
 
本省の中でも、厚生労働省の中の、僕の親友と二人で話した時でも、
「先生、やっぱり、ここは危ないよね」
っていう話をやっぱりしてました。
ということで、これは何も、全然予測不可能であったわけではなくて、僕は予測しており、実際にこの事故が起きた、ということが判ってたので、中に入ったということです。
実際に、正義感も何もっていうわけじゃなくて、やることっていうのは、放射線の専門家であって、
更に、事故の専門家である人間が、実態を明らかにして、市民にどうやって対応していくか、
更に、被曝の軽減はどうやってできるか、というのを考えていく材料を出すためには、調査しかないです。
実態調査しかないから、入りにいく。
だから、使命というか、当たり前のことで、別にこれを、本来評価されたいとかっていうのは、おかしいと思っていて、
だからいつも、「こんなところで、こうやってしゃべるのおかしいよな」って思いながら、話をしています。

当たり前のことなんですが、この写真。


この写真は、今月(9月)の7日の写真です。
福島第一原発から約200m以内まで、船で行きました。
この船で、ずーっと行くんですが、なんと放射能が……放射能っていうのは、一度地面を汚染すると、そこからも放射線を発しますよね。
この放射線によって、線量が、常に高いままになってるんですが、
海は、放射性物質がいくら入っていようが、海の厚み・水の厚みで、遮蔽されてるわけです。
遮られてるので、ほとんど、放射能は上がりません。
 
それが、原発方面にかざして、ずっと近づいていくわけですよ。
そうすると、だんだん徐々に、線量が上がっていくんです。
これはまさに、原発から、放射能が届いてる距離というのを、実は、世界で初めてじゃないですか、目測で出ている。
しかも、海の上からっていう、稀に見るケースで、放射能が飛んでくる距離を測った、実験だったんです。
その結果、一番遠いところで、線量計が動き始めたのは、1㎞です。
ということは、放射能っていうのは、今まで僕は、岡野先生からも、
「セシウム137というものは、飛んでも100mくらいだよ」
本には、75mとかって言ってたんですが、実際、海からの測定では、1㎞飛んでくるんだ、ということが判ったんです。
ここでは、1.32マイクロシーベルト/時、という数字が出てるんですが、最終的には、7.5マイクロシーベルト/時までいきます。
 
原発敷地内に入った方の、お話を聞きますと、
「1時間当たり、1ミリシーベルトを超える、というところがまだある」
というふうに言われています。
こういったような現状っていうのが、見えてまいります。

実は、この放射能汚染地図を、僕が作ったわけなんですが、この汚染地図だけが、僕の仕事ではなくて、
これ、書ききれないんですが、ダイジェストとして思ってください。
これを、ほとんど平行してやってます。
こうやって、平行していきますと、自分の自由な時間とかは、ほとんどない感じです。


この中で、今回ご紹介できるのは、二本松市を中心とした、内部被曝・外部被爆の実態調査の結果。
これは、できるだけ皆さん、写真やビデオというものは撮らないでほしい、というのがお願いです。
これは、二本松市に、許可を得て使わせていただきますが、
まだ、市民にも公表していないデータを、今日は特別に、こういったこの、汚染地域になるかもしれない、
この地域のために、まつやさんのご要望に沿った形で、実態というものをお見せしたい、ということで、
たってのお願いで、使わせていただくことになりました。
ということで、この部分は、表にはまだ出さないでください。
これは必ず、11月23日、市民発表会をやった後に、二本松市のブログ上にアップされるものですから、
そうすると、いくらでも使ってもいいんですが、それまでは、申し訳ございませんが、伏せておいていただきたいと思います。
これは一応、10月の広報にも、ある概要は載せました。
載せてるんですが、まだ、きちんとした説明をやってないということなので、申し訳ございませんが、この場をお借りして、お願いということにしております。
(よって、動画の3-3は無いようです)
 
この後、いくつか。
いわき市の、川前町の志田名・荻地区というところでの放射能汚染調査とか、新潟県のお話というものを、ちょっとしていきたいと思っています。

まず、ちょっと唐突ではありますが、緊急を要することができて、
実は、つい4,5日前、まつやさんからちょうど電話があったときに、まつやさんがご出身の柏崎市に、僕はいました。
なぜ緊急を要したかというと、今から、二つの事例というものを、皆さんと一緒になって考えていただきたいと思います。

一つの事例は、まず、学校でのいじめが起こりました。
 
これは、福島から避難されてきた、中学校3年生のお嬢さんです。
このお嬢さんが、福島から避難してきたときに、転校先の中学校で、ちょっと体系がぽっちゃりしてたらしいんですが、
「おまえの身体の中、全部放射能だろ。だからおまえ、そんなに太ってるんだ」
って言われて、その言葉がショックになって、拒食症になりました。

実際に今、26㎏sです。
150何㎝で、平均的な身長ですよ。
そのお嬢さんが、今26㎏sです。
医師からは、25kgsになったら強制入院。
もう、非常に、命に危険性が出てます。
26㎏でも、それでも学校に行っています。
学校通い続けてるんです。

こういった実態があるわけですが、そのいじめを受け……他愛もない……それはいじめではありません。
まぁ正直に言ったら、まだまだ他愛もない、相手にとっての痛みを感じずに、ちょっとしたからかいだったと思うんです。
その言った子どもに対しては、実際、それを制裁するのではなくて、まず考えていただきたいのは、
こういった状況が起きるというのは、『教育』です。
『教育』を、きっちりしないといけない。
なんの教育か。
少なくとも、この放射線に関する教育っていうは、必要ではないか。
正しい知識をもっていれば、こういったことは起こりえません。

その女の子は、実は、もっと複雑な関係がありまして、親が東電の職員です。
非難されることを嫌がって、子供を表に出す。
表面に出す。
「見て。この子、こんなに痩せたけど、頑張ってるのよ」
という評価を受けたい、ということで、その子のお母さん、もうほとんどチアノーゼも出て、血色もほとんど良くない、そのような状況で、運動会とか出してる。
そういったような状況。
それは、自分たちに非難がこないように、自分たちの子供を犠牲にしてる。

もうほとんど虐待です。
 
こういったことが起きてるんです。
 
さらに、その女の子は、虐待というよりは……虐待になるんですが、やっぱり、錯乱するわけです。
家の中で、パニック障害を起こすんです。
その時には、親が、隣近所にバレないようにといって、まず父親が羽交い絞めにして、母親が口を押えて、泣き叫ぶ声を殺すらしいんです。
これ、1時間くらいやってると、動かなくなるから……。

「これ……ずっと続けてるの!?」
って言ったら、そうなんですよ。
「どうしたらいいですか?」
っていうSOSが来たので、すぐに対応するために、実は、行きました。
「これは正直な話、虐待です。すぐに警察に行きなさい。これは、親と子供を離さなければならない」
「こういったことを起こしてはいけない。学習会をきちんと、どこででもやっていかないといけない。
そのために、こうやって、講演会というか学習会を、今回やります」
というような話をして、対応策というのもいくつか指示してまいりました。
こういったものがあります。
 
しかも、東電職員は、エリート職員です。
エリートだから、彼らもその、ハイソサイエティな生活を維持しようとするから、結局は、子どもの声、痛みや叫びが聞こえないわけです。
だから、そのお子さんは、なぜ学校に行くか。
これは、家に居たら、自分が死ぬんじゃないかという、恐怖感もあるんです。
だから、学校が、避難所になってるんです。

 
こういったまま、今も続いています。
これを、県の教育委員会の方々と、今度また、きちんと、10月3日に話をするんですが。
それと、後は、福島から支援をしてこられてる教育委員会の方々と、前回もお話したんですが。
こういった対応をとらねばならない状況、というのが、一つ起きています。

もう一つは、これは、新潟市で起きた事例です。

これは、35歳になるお母さんなんですが、このお母さんは、生まれながらに、足がちょっと不自由らしいんです。
この不自由な身体で、どうにか避難をして、その仮物件というか、仮居住という場所を、県からあてがってもらえたんですが、
そのアパートが、2階でした。
5歳になるお子さんと一緒に、避難をされてきたんですが、5歳のお子様です。
当然、騒ぐなと言っても、騒ぎますよね。
走っちゃう。
走ってしまうと、下から
「ちょっと、放射能が降ってくるから、騒がさないで」
って言われる
んです。
 
お母さん、それに苦労されて、心を病みました。
病んでどうしたか。
お子さんを、その人たちが外から帰ってくる時間帯から、柱に縛り付けたらしいんです。
「ごめんなさいね」
って言いながら、泣きながら、縛り付けることを、ずっとやってたんです。
お子さんは、円形脱毛症になりました。


そこから更に、不幸が起きました。
実はそのお母さん、つい最近、悪性腫瘍が足に見つかりました。
これは、放射能とは関係ないですが、お母さんはもう……考えの中には、この夏、お盆の時期だと思うんですが、一時帰宅されたらしいんです。
ご両親のところに帰ったんですが、
「その時に食べた、自家栽培の野菜を食べたから、自分はガンになった」
と思っちゃたんです。
「先生、これ、どうしたらいいですか?放射能のことを、伝えてもらっていいですか?」
「いや、多分、そういった問題じゃないです。
これは、複雑に絡み合った、様々な要因が入ってますので、僕の手に負えるレベルではないです。
放射能については、きちんと話はできますが、他はどうしようもないです」
というような話をしましたが、でもまずお母さん。
これは、悪性の腫瘍なんですから、進行がものすごい早いらしいんです。
話を聞いてると、もしかしたら、これは、お母さん助からないかもしれません。
でも、お母さんが1日でも早く良くなってほしいということで、5歳の子供が、よくしてくださってる近所のおばちゃんに、
「おばちゃん、僕、お母さんが病気で、早く病気が治るように、養護施設に入れてください」
って、言いに行ったらしいんです。
5歳の子供が、『養護施設』なんか、判るわけないです。
これは、周りが言ってる言葉なんです。
だから、子供はわからないけれども、お母さんのためにといって、一生懸命こう言うわけです。
 
それを聞いて、お母さんも、我に返れいいんですけど、返らないんです。
生きる気力を失ってるから、今度はもう、食事もまともに作らなくなっちゃって、子供がだんだん、痩せ衰えてる状況なんです。
 
これも、さっきの事例と一緒で、
「まず、子供と親を離してください。
子供はとにかく、保護者が必要ですから、保護者というものをどうにか……、
例えば、両親の親御さん、おじいちゃん・おばあちゃんに見てもらうか、どうにかして、まずは治療に専念してほしい」
という話をして、とにかく、お子さんを守っていかないといけない。
 
こういったことが、実際に今、起きてるんです。
これ、しかも、その5歳の子供に向かって、下の住民は、子どもを呼びつけて、
「あなたはね、放射能という病気になってるの。だからね、早く福島へ帰りなさい。みんなに迷惑をかけないようにね」
って言ってる
んです。

これっていうのは、これを言ってる人の、情けなさを責めるんではないんです。
これを言わせてるこの現状、この教育の無さ、知識の無さっていうものに、対象、怒りをぶつけなければ変わりません。
変えていくことができません。

これを、皆さんに聞いていただきたかったんですね。
 
これって、皆さん、よく考えてください。
 
まず、差別が起こる。
この差別というのは、士農工商・エタ・ヒニンの被差別、これにも共通することなんです。
室町時代、その当時、河原ものと呼ばれる、河原に生活していた彼らを、身分制度の中へ押し込めてしまった、っていうことが始まりの、
いわれのない差別から始まったこの歴史と、全く一緒の状況なんです。
この、差別っていうものを、無くしていく世の中っていうのは、やはり、皆さんと一緒に考えていって、どうやって対応していくかというのが、大切になるんじゃないかと思います。
また、この差別だけじゃなくて、差別に繋がっていることなんですが、広島・長崎で、原爆に遭われて被爆された方々。
結婚をしても、子どもは作ってはいけないと言われ、子供ができないということで離縁され、っていう形で、
原爆孤老という形で、実は、広島市の、とある集団住宅に、皆さんがひっそりと生きています。

 
こういったことが、起きてるわけです。
これと全く同じことが、今回もまた、起きてしまうっていうことを、皆さんも理解してほしい、ということです。
そういったことが、実際に起きてしまいました。
これを、今来てる方々、また、この地域でも起こるかもしれない。
もしかしたら、差別の対象者になってしまうかもしれない、というのも含めて、考えていただければと思います。

非常に大きな問題。
更には、学校のいじめ、というのも広がっています。
 
新潟の柏崎っていうのは、原発がありますから、福島の帰還困難地域=原発8町村の方々が、仕事もなくなってるし、家も無くなったということで、原発立地地域に避難されています。
「仕事もあるだろう」
でも、実際、原発全部止まりました。
大飯原発以外、動いていません。
だから、原発で働けないんです。
彼らだけじゃなくて、原発で働いていた人たちも、今逆に、福島の事故処理作業をやるために、福島に行ってるんです。
そうなると今度は、他愛もない話なんですが、中学校や小学校で、新潟の子供が、福島から避難してきた子供に対して、
「おまえらが、福島が事故を起こしたから、俺の父ちゃん福島行ってる。
俺たち、夏休み、どこかディズニーランド行こうと思ってた。
旅行に行くって話、全部無くなったんだ。
どうしてくれるんだ!おまえらが悪いんだ!」

っていうようなことを言うわけです。
 
こういった馬鹿な、常識の無さ、認識の無さっていうのが、実際に起きて、
逆に、福島からようやく、仮のお家とはいえ、避難できた場所でも、差別が起きていくっていうことがあるわけです。
こういった現状って、誰も聞いてないんですよ!
どこも報道されません!
こういったことを話さないといけない、ということで来ました。

 
今僕が、新潟県に入ってやってるのは、実は、新潟でも、特殊なところなんです。
これは、帰宅困難地域の方々が、約3000名。
自主的避難約3500名。
6500名くらいが、今も避難されてるんですが、それぞれの方々の声を聴き、実際に、心が病みつつあります。
そういった方々の調査っていうものを、きっちりやらないといけない。
これを、なぜやらないといけないかというと、やはり、避難された方々に対してのメンタルケアは、なされない
わけです。
原発事故っていうのは、いかにも、「100ミリシーベルト以下は大丈夫だ」っていうようなお話をしてる先生方もいらっしゃいますよね。
国もそう言ってます。
「20ミリシーベルト以下であったら、年間被ばくは大丈夫だ。だから帰りなさい」
 
こうやって言ってますが、直接的な被曝影響について、もし何かあった場合っていうのは、対処できるんですが、
チェルノブイリでは、実際に亡くなった方々は、5万人とも10万人とも言われています。
その亡くなった方々の半数は、メンタルから来る心的ストレスで、お亡くなりになってる
んですね。
 
今回の、福島第一原発の事故。
この現状からみると、直接的な被曝影響というのは、チェルノブイリよりずっと低いです。
多分、そうであろうと、僕は思っています。
今までのデータから見ても、チェルノブイリクラスではありません。
 
それは、事故も違います。
事故の様相が全然違うから、影響も違うわけなんですが、でも、影響は出ますよ。
出るけれども、その影響の出方っていうのは、一番多く出るのはやはり、心に病を持つような方が多くなるんじゃないか
、ということです。
 
もし、この状況を無視されて、見殺しにされてしまうというのでは、話にならない。
だからこそ、今、実際に、心の問題がどういうふうになってるかを、きちんとしたデータとして、出しておかなきゃいけないんです。
そのデータが、訴訟、裁判に際しての、裁判資料になる、ということなので、
実際には、その調査というものを中心に、これからやっていく、という形で入ってるわけです。
 
その前に、心を病まれそうな方々に対しては、きちんとしたメンタルケアをして、まず何を望むか、臨床心理士や精神科の医師では、できないことなんです。
放射能の知識がわからない。
だから、不安におののくわけです。
これについて、きちんと教えた上で、適切な対応をとらなければならない、ということなので、
こういった学習会を、この3月から、新潟県でも、震災1年を契機に、やっているわけです。
こういったような活動をやっているわけですが、今回も皆さんには、この学習に関して、
『正しい判断、正しい知識』というものを持った上で、時間の許す限り、、今の福島の現状を、お伝えできればと思っております。
<1-3終了>

【その②】へ続きます。
コメント (4)
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