木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その②】
<2-3開始>
・ベクレルという単位は何を表すか
・自然放射線(カリウム40)と人口放射線の違いと注意点
・シーベルトという単位は何を表すか
・α線はβ線/γ線の20倍!
・ラドンガスと肺がんの関係
・臓器に対する放射線の影響の違い
・被ばくによる遺伝的影響
・チェルノブイリと福島第一事故の違い
・長崎の放射能到達状況
・放射能汚染時代
・2011年3月15日の汚染の広がり
・2011年3月に保安院が行った簡易の甲状腺被曝検査
『最大35mSv評価は経口吸入評価だと80mSv』
(木村真三氏)
今回は、放射線の単位。
また、放射線の種類と人体影響、というものを知っていただいた上で、今現在の、放射能の広がり。
また、その放射能によって、汚染された人々は、一体どれくらいの被曝をしたか、
外部と内部について、お話をしていきたいと思っております。
こういったことを中心に、お話をしていきたいと思います。
では、気持ちを新たに、勉強会ということでやっていきましょう。
まず皆さんに知っていただきたいのは、二つです。
『シーベルト=Sv』と『ベクレル=Bq』です。
簡単な方から行きます。
この、ベクレルと言っているものは、放射能を表す単位。
この放射能というのは、一体どういうことなの?っていうと、
これは『1秒間に、何個の放射線を出すか』で、ベクレルという単位になるわけです。
だから、それを、重さで割ってやるというと、放射能濃度、という言葉になるんですが、
この放射能濃度というのは、例えば、食の安全基準である、厚生労働省の食の基準値、
これは、大人で、100ベクレル/㎏、というふうになってますが、これは、
「1㎏の食品中に、1秒間に、放射線が100個放出される量。これ以上は食べては危険ですよ」
というふうになっているわけです。
子供の場合はというと、50ベクレル/㎏です。
これは逆に、半分になった、というふうに考えてください。
1㎏の食べ物の中に、1秒間で、50個の放射線が出てるもの、これを、50ベクレル/㎏、というふうに言うわけです。
だから、放射線の量だ、というふうに思ってください。
『1秒間に、何個の放射線が出てるか=ベクレル』ということです。
身長167㎝で、体重60㎏sの成人男性を、イメージしてください。
この成人男性の身体の中には、平均値ではありますが、約4000ベクレルの放射能が出てるんです。
1秒間に、4000個の放射線が、我々の身体の中から出てきています。
これは、体重の筋肉量に依存します。
女性の場合は、もちろん男性よりも、筋肉量が少ないです。
そのため、3000ベクレルから3500ベクレルくらいの放出量だ、というふうに言われていますが、
逆に、ふくよかな体をお持ちの方々というのは、やはり、それなりの線量が上がるわけなんです。
ちなみに、この放射線の大元は、セシウムではございません。
天然中に存在する、カリウム40というものです。
この、カリウム40というのは、半減期が12.7億年、というふうに言われているものですから、
もうこれは、我々人類というか、生命が誕生する前から、ずーっと放射能とお付き合いをしてるわけです。
だからこそ、我々の中に、放射能として存在するけれども、我々の人体に、影響はほとんど無いんだというのが、このレベルなんです。
この、カリウム40というものが、天然中には多く含まれております。
そういったものの中で、今回は、人口放射線核種ですね。
ヨウ素131や、ストロンチウム90……はほとんどないんですが、セシウム137と134といった放射性物質が、新たな放射性物質として加わり、食品の中に入ってるわけです。
ちなみに、じゃあ、お米でどのくらいかといいますと、
大体㎏あたり、50ベクレルから150ベクレルくらいの、カリウム40の放射能がある、というふうに、実測値が出ております。
この、カリウム40というのは、エネルギーが非常に高いのですが、セシウムに比べて、反応性が弱いんです。
だから、セシウムに比べて、その影響というのは、同じ量があったとしても、その量的関係でいいますと、約8分の1か、9分の1程度のレベルなんです。
でも、これを多く摂りすぎれば、やはり、8分の1であろうが9分の1であろうが、影響は出てきます。
だから、カリウムの摂取のし過ぎ。
通常、食べられているのは大丈夫なんですよ。
でも、福島県内なんかは、
「食品汚染を軽減するために、カリウムを撒きなさい」
っていうふうに、農水省が推奨してます。
そのため、土壌100gに対して、25㎎から30㎎の、カリウムを撒いています。
このカリウムを撒くことによって、セシウムは吸収されにくいけれども、選択的に、カリウムは吸収されるわけです。
その吸収されやすさというものによって、セシウムの影響を軽減させる、というふうにやってるんですが、
実は、カリウム量が、ぐんと上がるわけです。
上がってしまったら、実は、同じことが起きてしまう。
カリウムによる被ばく影響も、増加されるということは、実は、農水省に、大臣に、僕は言っています。
言ってるんですが、無視され続けています。
この危険性は、テレビでも言ってるんですが、あの有名な公共放送機関で、解説員が、
「先生、農水省で、私もこの話は聞いている。確認しましたら、農水省は大丈夫だ、と言っております」
「お前は、学者が調べた話と、農水の机にしか座ってない人間の話、どっちを信じるの?僕は実態調査の中で得られてるんだよ」
っていうことを、生放送で言いました。
こういったことを平気で言う、御用のマスメディアの人間がいるわけです。
だからこそ、誤魔化されるんです。
こういったことが、実際に、平気で横行してます。
「自分の身は、自分で守らなくちゃいけない」って、福島の人たちに言ってるんですが、
要するに、国が言ったり県がやってること自体が、信用できるかどうかっていうのは、情報公開をきちんとしていれば信用できるんです。
その、情報公開がしてないからこそ、不信につながるわけです。
だからこそ、こういった情報をきちんと出せば、行政に対してだって、「良くしてくれてるな、ありがとう」という気持ちを持てるんですが、持てないのはそういったことなんです。
こういうことで、ベクレルというのは、放射能というものの単位を表すもので、
放射能濃度というのは、『Bq/kg』重さで割り算してるものが、1㎏中に、どのくらい放射能が含まれているかっていうので、このベクレルを使うものだ、ということです。
続きまして、この『シーベルト=Sv』。
このシーベルトは、更に難しいです。
これは、一筋縄ではいきません。
これは、人体に影響を及ぼす単位として、シーベルトというものがあるわけなんですが、
このシーベルトは、実は、放射線の種類によっても違うわけなんです。
α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、そのほか、中性子線とか中間子とかμ粒子とかあるんですが、
代表的なα・β・γについて、お話をしていきたいと思います。
このα線というのは、皆さんもお手持ちの紙切れ1枚で、実は遮蔽することができるんです。
だから、この紙1枚、服を着ていれば、放射線はここで遮られる。
服で遮られてしまうものなんですが、実は、このα線が、人体に対して、影響というのが一番強いというふうに言われています。
じゃあなぜ、そういったことが起きるのか?
それは、紙1枚に対して、この紙切れに、α線というものが、一気に、すべてのエネルギーの受け渡しをしてしまう、
だからこそ、受けた側の影響は、一番大きくなるわけです。
ヘビー級のハードパンチャーが、どんとやってしまえば、人の命は失われる、というのは判りますよね?
でも、子供がじゃれ合って殴っても、その力は弱いですよね。
だから、その人体の影響っていうのは、同じパンチだけれども、影響は違うわけです。
これと一緒のことが、このα線でも起きているわけです。
実はγ線・β線に比べて、1を基準とした場合、このα線の影響力は20倍だ、というふうに言われています。
だから、発がん影響が、20倍になっています。
ここで説明しますと、ICRP=国際放射線防護委員会の、90年勧告と2007年勧告というのを、表にしてますが、
基本的に、この、光子というのが1です。
これは、γ線やX線を表しています。
電子・μ粒子、この電子というのは、現在も、この蛍光灯なんかで使われている、電気の流れ、これを作ったのが電子なのですが、
この電子が、ポンと飛び出してきたものが、なんと、β線というふうな名前に変わるわけです。
このβ線も、1なわけです。
これが、90年度でも07年度でも同じなんですが、このα線は、20というふうに、重みづけされているわけです。同じエネルギーでも、その影響たるや、相手に及ぼす影響は、20倍なんだよ、というのがα線なんです。
このα線というのは、欧米諸国、特に、アメリカの統計データなんですが、
アメリカ人の肺がん患者の、4人に1人は、このα線によって、肺がんになってるんだ、というふうに言われています。
じゃあ、その由来はというと、これは、食べ物や、地面から出てきている、ラドンガスというガス。
このガスっていうのは、α線放出核種なんですね。
α線を出すから、それを吸ってしまう。
ガス状ですので、知らず知らずに吸ってしまう。
そのことによって、DNAが壊されてしまう。
そのDNAが壊されたものの、修復がうまくいかずに、そのまま、遺伝的に受け継がれていく。
そのうちに、突然変異として、ガン細胞が出来上がるというのが、ガンのメカニズムなんですが、
こういったことが、実際に、肺の中で起きてるわけです。
じゃあなぜ、欧米諸国は、こういったことが少なくないのかと申しますと、これは、石造りの家や地下室が、多いんですね。
だからこそ、ラドンガスというのは、実は、ウランという核燃料物質、これは、天然中でも、ほんのちょびっとですが存在します。
それらが、原子核崩壊をしながら出てきた物質が、このラドンガスなんです。
だから、石の中にも含まれてるし、土の中にも入ってる。
もちろん、コンクリの中にも入ってるわけです。
こういったものがあるために、その濃度が濃い状況で、生活をしてしまうから、肺がんが起きてしまうんだ、というふうに言われています。
では、日本ではといって、日本で調べてみました。
これは2009年、2010年ですが、厚生労働省のお金をもって、実は、ラドン調査の??になりました。
全国4200か所の加盟に対して、このα線量を調べた。
ラドン濃度を調べた結果ですが、大体、1時間あたり、100ベクレル以下です。
でも、100ベクレル前後はあるわけです。
高いところで、200ベクレルを超えています。
欧米諸国では、250ベクレルとか400ベクレルというところがあるわけです。
そういったものを、WHOが今、規制をかけようとしております。
というわけで、このラドンガスが壊れるときに、放出されるα線というものが、肺がんリスクにかなり寄与してるんだということです。
こういった天然中の放射性物質があるわけです。放射線の種類によって、その影響は同じエネルギーであったとしても、影響の度合いは全然違ってくるということが言われております。
その一覧表がさきほどのこの表になるわけです。
でも、最新データをお伝えしますと、このβ線というものは、実は、皮膚の表面にくっついたり、体内に取り込まれた場合、
これは、ストロンチウムの場合、と考えてください。
ストロンチウムというのは、β線を100%放出する、準β各種といわれるんですが、
ストロンチウムなどのβ線放出核種では、なんと、γ線に比べて、影響が大きく出ているという実験が、ねずみさんの実験なんですが、もう言われております。
今、WHOやICRPでは、このβ線に対する基準を、考え直さなければならないというふうに、検討に入ってるところなんです。
これを見つけたのは、大阪大学の、今、名誉教授をされている、野村大成先生というお医者さんです。
この野村先生は、様々なお医者さんがいらっしゃる中で、一番僕が尊敬している、最も信用のおける先生なんですが、
この先生は、実験的に、全部調べてくださった。
こういったようなことで、実は、β線についても、危機感を持たなければならない、というふうに解しております。
ちなみに、セシウム137、134というのは、実はβ線放出核種です。
γ線は、ちょびっとしか出しません。
ほとんどγ線だ、というふうに言われてるのは、セシウムが壊れて、すぐにバリウムというものになります。
バリウム134、137という物質になるんですが、これがわずか、2分ちょっとで崩壊して、違う物質に変わるわけです。
その時に、γ線をドーンと出すんです。
セシウム137は、半減期が30年、134は2年、というふうに言われております。
これが、半分の量になるっていうのが、30年や2年、というわけなんですが、
かたや、バリウムになると、わずか2分程度で、γ線を放出して、違う物質に変わるということで、ほとんど平衡状態になってるわけです。
バリウムの量=セシウム量と一緒になってしまうから、
ここから出てくるバリウムの量と、出てくるγ線は、セシウムから出てきた、とみなすことができるので、
γ線放出核種のようにいわれてるんですが、実はβ線です。
実は、β線放出核種です。
これらのβ線の影響というのが、もしかしたら、効いてくる可能性も、今後あるわけです。
続いて、もう一つ。
放射線の種類によって、違うシーベルトなんですが、もっと大変なのは、実は、臓器の中でも、放射線の種類によって、影響が異なるということです。
それをちょっとご紹介しますと、例えばこの結腸、肺、胃っていうのは、0.12、というふうに出てますよね。
これは、ICRPの、2007年度版でも同じです。
生殖腺は、0.20~0.08に落ちました。
組織荷重係数というものがあります。
全く影響を示さないものとしては、他の臓器がありまして、これらも、何らかの影響があるかもしれないということで、全部、足し合わせて、1になるようになっています。
だから、実は、臓器ごとの被曝線量を求めて、その臓器ごとに被曝線量を出して、足し合わせたものが、シーベルトという単位になるわけです。
ちなみに、なぜ、この0.12という高い数字になるかというと、
これは、細胞増殖回数、細胞分裂回数が大きい組織ほど、放射線の影響が大きい、というふうに言われています。
また、未分化細胞、肝細胞ですよね。
よくiPS細胞というのが、最近言われてますが、この、なんにでも変わる万能細胞は、実は、放射線の影響が強いんだ、というふうに言われています。
これは、1906年に、フランス人の研究者である、ベルモニーさんとプリモンドさんという方が、
ねずみの精子に放射線を当てて、実験をした結果、導き出された実験則なんですが、
この実験則でいうと、骨髄や結腸というのは、細胞分裂が非常に大きいんです。
東海村臨界事故の時に、お亡くなりになられた方は、輸血が始まります。
これは、直腸や結腸というものが???が壊されて、もう表面が、ズルズルにずる剥けになってしまって、
そこから血液が漏れ出てる症状、というので、輸血が始まるわけです。
こういったことで、白血病の話がありますね。
広島・長崎では、白血病が出ました。
それは、赤色骨髄細胞というものが、背中のあたりにあるんですが、主には白血球ですが、白血球を作る細胞というのが、骨髄になります。
この細胞がやられてしまいやすい、ということで、影響が大きいんだ、というふうに言われています。
ではなぜ、2007年度勧告では、生殖腺が下がってきたかといいますと、これは、遺伝的な影響がほとんどない、確認されてないから、
生殖腺の影響はほとんどないんだ、あまり大きくみなすことはないんだ、ということで下げられました。
これは、僕は、異論を呈します。
というのは、これ、実は、広島・長崎で、被爆者から生まれた子供というもの、これは第2世代。
第3世代というのは、この被爆者の子供から生まれた子供が、第3世代ですが、彼らは実は、ほとんど、遺伝的な影響というのはありません。
出てないです。
これは、自然発生率の中で出てくる、遺伝的な影響はもちろんあります。
その中から、明らかに超える数字が出ていない。
だからこそ、遺伝的な影響は、ほとんど無いんだ、ということで下げられたわけですが、でもこれは、僕は、ICRPは間違いだ、と思っています。
なぜならば、これは、放射線遺伝学という、学問があるんです。
この放射線遺伝学の中では、既に、もう結論が出てるんです。
被曝をした人たちというのは、実は、遺伝的な影響が出るのは、普通に被曝をすれば、数十世代後に出る、というふうに言われています。
数十世代ですよ?
だから、何千年も後に、出て来る可能性があるんです。
だから、第1世代、第2世代、第3世代では出ない、ということを知っているけれども、
知っているから、大したこと無いんだといわんばかりに、こうやって、リスクを下げてるんです。
今回のような、福島第一原発や、チェルノブイリの事故。
こういった場合には、遺伝的な影響が出るのは、早くて5世代以降だと思います。
でも、普通に考えて、10世代以降だと、我々は考えています。
実際に、遺伝的な影響が出るといっても、目に見えないとか、手がないとか、身体の部分の一部が欠損してる、というようなものではありません。
本人すらも、周りの人すらも、全然気づかないレベル、ほんのちょっとした……、
例えば、かけっこでいえば、ちょっとだけ足が遅かったり、ちょっとだけ??が遅かったり、
ほとんど、自分自身も影響がなく、健常人とほとんど変わらない状況で、まずは出現するだろうというのが、
1970年代に、遺伝学の大家、日本では、遺伝学の父と言われている、木村??先生という先生がいらっしゃるんですが、その先生が、本の中で言われています。
こういった遺伝というものは、実は、長い長い年月を経て、出てくることです。
ちなみに、つい最近、今年の8月ですが、NHKの子供科学ラジオ電話相談に出たんですが、その中で、虫の質問が出たんです。
『ノコギリクワガタとコクワガタを飼ってます。これが交尾をして、ノコギリコクワガタはできますか?』
っていう問題だったんです。
「う~……きっち~!」
と思って、僕は、放射能で良かったと思いながら聞いてたんですが、実は、僕も、答えが「できない」です。
これは、「できません」。
残念ながら、これは、交配ができません。
でも、よくよく似た近縁種、ライオンと虎が交配すると、レオポンというものになります。
(これは間違いで、正しくはライガー。ライオンとヒョウの交配が、レオポンだそうです)
例えば、ジャガイモとトマトをかけあわせても、ポマトというものになる、という話があります。
こういった交配では、第一世代しか残せないです。
種の存続は、できないです。
だから、第2世代ができない、というふうに言われています。
かけあわせた交配によっては、子供はできるんですが、その次に、遺伝的に、ずっと持ち合わすことはできないです。
これが、種の保存、というものなんです。
固有種というものは、きちんと、その種の存続をしなければならないということで、突然変異は、ほとんど好みません。
でも、その中で、突然変異ができて、その突然変異が、遺伝的に伝わる、ということになれば、
それは、ものすごい弱い影響でしか、遺伝的影響としては出てこない。
でも、それが出始めると、弱い種族が出てくるわけです。
この弱い種族が出会う確率が、今度出てくるというのは、交配が続くと、どんどん弱い遺伝を持った人たちが、増えていきます。
そうすると、数十世代以降、数百世代後には、ものすごい弱い影響が、顕著に表れた人類が、出てくることになります。
だから、人類の滅亡というのは、もしかしたら、そういうところから始まるかもしれないと。
遺伝的なお話は、こういったことなんです。
だから、こういったことを、正しく理解せねば、広島・長崎のときのように、奇形が生まれる、というような話が出てくるわけです。
奇形が生まれてくるとしても、これはゼロではありません。
出てくるのはあります。
チェルノブイリでも、でてきたという報告は受けてますが、この中でのほとんどは、出てきても、生命維持が出来ないような形で、
1週間後には、死んでしまうような状況が多いわけです。
そのほかには、直接的に、非常に大きな遺伝を持った人が、出てきましたっていう話をしますが、
その自然発生率が、いったい何%かっていうのは、事故前から調べなければいけないのですが、調べられてない。
ほとんど判らないわけなんですよ。
あたかも、見てきたかのようなことを言いますが、科学的に言えば、実は、
実験的に実証された遺伝学の中では、直接そうやった、遺伝的欠損を持った方々が、生きながらえるくらいのレベルで出てくることは、ほとんど……ごくごくわずかだと思います。
中には、いらっしゃると思いますよ。
ゼロではない、と思いますが、数学的にゼロでない、というだけなんです。
じゃあ、実際にはどうなのかというと、ほとんどが、被曝をされた場合、生き残れないと判断すると、流産になってしまうというのが、我々の身体なんです。
そういったことをきちんと理解しなければいけないなと思います。
ということで、実際に、シーベルト、この一つ一つをとっても、放射線の種類によっても、その影響は違う。
また、臓器によっても、影響は全然違うんだ、ということで、
放射線の種類を掛け合わし、さらに、組織の影響する感受性の違いというものを掛けあわせて、
初めて、もともとの放射線のエネルギーを掛けあわせることで、シーベルトというものが出てくるわけです。
それを、全ての臓器を足し合わせて出したものが、この実行線量、シーベルトという単位になるわけです。
だから、簡単に、シーベルトというふうに使われるんですが、実は、大変な計算をしなければならないということなんです。
今回の場合、より複雑にしてるのは、チェルノブイリほどではありませんが、β線の影響の寄与率を考えて、更に、γ線の寄与率も考える。
それから、それぞれの組織の寄与率も考えた上で、出してくるっていうのが、本当の正確な値なので、
実際に???されてるのは、簡潔に簡略化された、計算式から求められたもので、
きちんとした精度の良いものではない、ということを、皆さんも理解してください。
ということで、ちょっと、話がだいぶ長くなってしまいましたが、
もう一つは、放射能というのは、実はこの地域を含めて、広く薄くではありますが、一度は汚染され、被曝をしましたよっていうことを理解してください。
皆さんにお配りしたレジュメですが、この中で一つだけ、今日、文書をさっきちらっと見てたら、間違いがありました。
『燃料棒を覆う金属の一部から、水素が発生する』
というふうに書いておりますが、それは間違いです。
訂正して、線を引いておいてください。
実際は、どういったものかというと、
燃料棒を覆うジルコニウムという金属が、通常、原子炉っていうのは、加圧された状態、圧力容器によって、中で冷却されてます。
だから、その水というのは、100℃以上で、水の状態を保っています。
通常、240℃だ、というふうにいわれていますが、この240℃では、ジルコニウムに触れても、水素は発生しないんですが、
ジルコニウムが、900℃を越えた場合、水と反応して、水が酸素と水素に分れるらしいです。
この水素濃度が、4%を超えた時に、大気中の酸素と触れ合うことで、大爆発が起きる。
これが、水素爆発なんだということです。
ちょっと誤りがありましたので、訂正しておきますが、
これは、『ジルコニウムという金属と、900℃以上になった水が触れ合った場合、水素が発生する。
その水素によって、大爆発を起こすのが、水素爆発なんだ』ということです。
不幸にして、これは皆さんご存知のように、全交流電源喪失という事態になりました。
冷却水を冷やすための外部電源が、全部、津波によって、ショートしてしまいました。
そのおかげで、冷やす能力がなくなって、どんどん空焚きの状態になって、わずか十数時間後には、メルトダウンが起きたと言われています。
メルトダウンが起きたんですが、チェルノブイリと全然違うのは、チェルノブイリは、原発の構造が違う、というのがまず一つ。
もう一つは、その構造の中に、圧力容器という、安全構造を持っておりません。
だから、チェルノブイリの場合は、一気に、水素爆発じゃなくて水蒸気爆発。
水と、メルトダウンした、ドロドロに溶けた燃料が触れ合った瞬間に、一気に水の体積が膨張し、
水蒸気になって、その水蒸気が、150トンもの重さがある蓋、原子炉釜を取り付けてある蓋、ちょうど、イメージは、この白いぼんぼりみたいなものですね。
こうやって、ぶら下がってたんですよ。
このぶら下がってるこの状況、蓋が150トンあるのですが、水蒸気が持ち上げたんです。
グーッと持ち上げて、大気と触れた瞬間に、今度は、大爆発をしたということで、水素爆発じゃなくて、水蒸気爆発である、というふうに言われています。
そのために、このぶら下がってたのは、燃料棒だと思ってください。
これが、大気中に、大量放出されたのが、チェルノブイリです。
ところが、ここは、圧力容器というもので守られてたものが、圧力容器は、メルトダウンによって溶かされました。
でも、水素爆発はしたけれども、水蒸気爆発を起こさなかったために、圧力容器は、そのままの形で残っています。
だから、原子炉の内部の核燃料というものが、大量に放出されることが無かったということで、
実は、チェルノブイリと福島の事故というのは、大きく違うんだ、ということをご理解ください。
ただ、原子炉建屋、格納容器は、大爆発をして壊れました。
そのため、大量の放射能が出てきて、家々を汚染し、また、山々を汚染していきました。
家を汚染したことで、帰ることができないような方々を生み、また、食品の汚染にも、繋がっていったわけですが、
更に不幸な出来事は、山を汚染した放射性物質が、表面にくっついた状態になったんですね。
これが、雨によって洗い流されて、川を汚染し、更には、河口を汚染し、海を汚染してしまったんだ、という事実を理解してください。
これから見せる、衝撃的なお話ですが、実は、早い時期にもう、放射能は、長崎に到達してるんです。
静岡じゃないですよ。
静岡は300㎞、400㎞くらいの圏内だと思うんですが、遥かに超えた、2000㎞くらい離れた長崎で、もう既に、3月の時点で、放射能は到達しています。
これを計測したのは、長崎大学の、僕の親友で、常に、僕のデータを分析して、未だにずっと、二人羽織で調査をしている、高辻俊宏先生が解析してくださったんですが、
彼は、事故前からずっと、エアロゾル、大気中に浮遊してる粉じんを集めて、その粉じん中の放射能を測る、という仕事をしてました。
更に、これは、中国大陸から飛んでくる、環境汚染物質をしらべる、ということもやってたんですが、
この放射能が、長崎に到達しているんではないかということで、彼が分析した結果、
ただ、これを、指導していた大学院生の仕事だったんですが、出来が悪くて……、
事故直後から測っていれば、ヨウ素が判ったんですが、ヨウ素が未検出のままだったんです。
ヨウ素が全部飛んでしまった後に、見てしまった残念な結果なんですが、
この赤い部分が、セシウム134で、青いのが、新たな放射性核種ですが、銀の110Mというものです。
Mというのは、メタステーブル、準安定状態というものなんですが、銀の110M、というものが出てる。
更には、セシウム134が、緑色で出ているわけです。
後の、紫色の、鉛の210というのは、天然中に常に存在するもので、それはほとんど差が無い。
でも、人工放射性核種は、量の最大値が、昨年4月6日から13日の、この1週間で、長崎市が最大ピークを迎えました。
この、有り得ない話をしますと、この塵、1㎏に換算して計算すると、
飯舘村の蕨平、僕が、3月28日に入った時は、40マイクロシーベルト/時を越えている地域です。
この飯舘村の、蕨平の、0~5㎝の土壌と、ほぼ匹敵するくらいの放射能が、飛んできているということになりました。
ということはですよ?
これは、皆さんのこの地域でさえも、一度は汚染されてしまったんだ、ということを認識してください。
なぜなら、京都の五山の送り火、大文字焼きですよね。
あそこで、岩手県の陸前高田市の薪が、「放射能で汚染されてるから焼かない、燃やさない」と言ってやらなかった、京都市の判断がありますよね。
こういったことっていうのは、実は愚の骨頂で、実際には、それ以上の放射能は、既に到達してるんだから、
ほんのわずかしかでてない、放射性物質を怖がって、
「琵琶湖の水が汚染される」
「もう既に、汚染はされております」
というのが、僕の結論なんです。
こういったことが、風評被害として、明らかに、風評被害として出てしまうというのが、胸の痛むところなんです。
これを、きちんと、科学を持って否定をせねばならない。
当初から、ずっと言っていたんですが、やはり、伝えるということっていうのは、なかなか難しいことで、
全国的には伝わらないから、そういうことが起こるんですが、こういったことは言ってました。
実際に、どこの地域でも、きちんと測れば、今回の原発事故由来の放射能っていうのは、検出されるわけです。
こういったことが、実際にはありました。
更にですよ、これ、今年の2月2日、3日と、釧路にある北海道教育大学釧路校というところで、放射線教育を二日間やりました。
そこで、最終日の最後の時間に、
「皆さん、じゃあ、この地域が、放射能で汚染されてるかどうか、調べてみましょう」
っていうことで、放射能を測定したんです。
そしたら、やっぱり、線量計上がるんですよ。
しかも、足ふきマットや、思わぬところで上がるっていうことは、これは、放出されたものが、やっぱり浮遊してきてるってことなんですね。
『釧路でも起きてる。長崎でも起きてるということは、これは、広く薄くではありますが、全国で、放射能に汚染されたんだということを、認識せねばならない時代に来たんだ。放射能汚染時代だ』
ということを、理解してください。
だから、この静岡。
実際に、ちょうど海側を通る風によって、実は、お茶が汚染されましたよね。
あれは、ただの付着じゃありませんよ。
汚染も吸収も、されてるはずです。
だからこそ、実は、この静岡だって同じことなんだと。
一緒に考えて、同朋のために、考えていかねばならないと思います。
これ、3月15日、北西方向に吹いた風っていうのは、飯舘村を襲って、更には、僕が避難させた、浪江町の赤宇木集会所に居た人たちも、被曝しました。
そしてさらには、福島市や郡山市も、汚染されたんですが、この汚染状況というのは、3月15日の夕刻です。「じゃあ朝はどうだったの?」っていう疑問が出てくるじゃないですか。
その答を、ちょっとお見せします。
これは、実は、海沿いの風が吹いたんです。
南側の風がグイッと吹いて、なんと、海を通過して、千葉県を経由して、ずーっと流れて、静岡県の方に、実は流れてるんです。
これは一例です。
風の流れも、当然皆さんお分かりのように、様々な方向に吹きますよね。
だから、この風の一部、しかも、一番濃い放射能が含まれた風が、こちらにも到達したんだと思います。
ここは、3月15日の午前10時、東京に、最大の放射能が到達したとき、たまたまそれを検出しました。
それを、さっき言った、大気中の塵を集めるハイボリュームエアサプラというもので集めて、
それを、京都大学原子炉実験所の、小出さんの方に送って、小出さんによって、発表してもらいました。
その時は、東京都でも、1マイクロシーベルト/時を超えてるわけです。
実際に、朝早く、放射能は、いわきを通過したんです。
昨年3月の、23日から30日にかけて、原子力保安院は、子供たち1200名に対しての、甲状腺の簡易検査をしたんです。
その中で、最大が、35ミリシーベルトのお嬢さんが見つかりました。
これは、小学校4年生のお嬢さんなんですが、なんと、飯舘村や浪江町とか、そういったところではございません。
最大の放射線被ばくをしたお嬢さんは、いわき市です。
いわきは、今現在、空間線量率0.1くらいです。
非常に低いんです。
なんでこういったことが起きたか、皆さんも、3月15日から3月30日まで、思い起こしてください。
これは、絶対、皆さんには大切なことです。
ここ、汚染地域なので、思い出してください。
思い出す方法は、震災があった時から、ずーっと遡って計算していくんです。
そうすると、震災の時は、絶対覚えてますから、震災直後からどうだった、ああだったという話を、
みんなと、お友達と一緒に話していけば、その時の、3月15日の、状況が出てきます。
そういったことで、思い出して、書き留めておくっていうことが、大切なことですが、
実は、この日の、気象条件が左右するんです。
この日、雨が降った地域、雪が降った地域は、飯舘村、福島市、郡山市です。
これらが、汚染を拡大しました。
土壌を汚染させた原因です。
更に、いわき市は、その時間帯、雨も雪も降らなかった。
表面を通過していったんです。
だからこそ、土壌汚染が少なかったから、空間線量率が、今のように、0.1なわけなんです。
こういったような状況で、この静岡市が、静岡県が、気象条件がその時どうだったかということで、汚染レベルが決定されるわけなんです。
だから、実は、このいわき市で見つかったお嬢さん、放医研が、このデータをもとに計算した結果は、35ミリシーベルト。
これは、3月12日から、爆発が起きた、事故が起きた時点から、3月30日まで、
食品が汚染されたとして、毎日、経口摂取をしたときの計算でやったら、35ミリシーベルトです。
でも、私は、二本松市で、今5000人を越える人の、内部被曝調査をしました。
その結果で、事故から早い時期の段階の方々は、外に居た時間に比例して、内部被曝量が変わる。
ということは、これは、食べ物じゃなくて、呼吸から入ってる。
肺による吸入摂取被曝=呼吸からなんです。
だから、吸入によって、摂取したときの被曝線量で、お嬢さんを計算し直しました。
その結果、甲状腺部分での被曝量は、80ミリシーベルトです。
これは、1200人という簡易検査で、ちょっとした簡易検査です。
氷山の一角であって、もっともっとたくさんの人が、被曝をしてる可能性があります。
そういった状況というものが、まだ見えてこない。
これで、
「じゃあ影響があるかどうか?」
「ほとんどないでしょう」
とは言えないんす。
「ある」、と僕は思っています。
出てくるかもしれません。
実はおととい、双葉町の井戸川町長と、3時間ほど対談してきました。
双葉町は帰りません。
原発の敷地を持ってる町ですから、汚染が高いです。
福島弁でお話すると、
「先生、俺ん家は、庭先で60マイクロまだあるんだ。でもよ、墓はよ、200マイクロ超えてんだよね」
「有り得ない」
「先生、これは帰れるのけ?」
「帰れるわけねぇやないか」
とはっきり答えています。
「無理です。帰還困難です」
っていうふうに言ってるんですが、この双葉町の方々や町長は、実はもう、まことしやかに、
町長はいの一番に逃げて、住民を置き去りにしたんだと言っていたんですが、実はそうではなくて、彼は、最後まで残ったんです。
残った状況の話を、聞いていきました。
なんと、あの建屋を覆ってる、断熱してるブラスウール、ふわふわの黄色いやつですね。
このふわふわのやつが、音もなく、しんしんと降るさまを、見たそうです。
これは、原発から8㎞離れたところ。
それが、雪のように、しんしんと降るさまを見ながら、全員が、呆然と立ち尽くしながら、
町民も、役場の職員も逃げてるんですが、残った人、警察や自衛隊、町の残ってる人たちや病院の先生方は、その風景を見たらしいです。
「この中で、どれだけ放射能が飛び出たか、わかんねぇんだよね。俺もちょっとおかしいんだ」
って言ってます。
ということはですよ、本人に言ってません。
許可も得てません。
でもね、これは事実です。
こういったことが、直近ではあったわけです。
こういったところで、もしかしたら、まだまだお子さんでも見つからないけど、これから出てくる可能性はあります。
通常であれば、チェルノブイリのほうでは4年後に、甲状腺ガンが、基準値・平均値を越えて優位になったということで、
放射線の影響が、4年後から出た、というふうに言われています。
でも、これは、事故当時の検査技術が発達してなかった、ということも含めて考えますと、もうちょっとしてから出てくるんじゃないかと。
今現在、調べたものは、ちょっと、影響が出るのが早すぎるんじゃないか。
もし出るとすると、よっぽどの影響がないと出てこないです。
更に、チェルノブイリで、甲状腺ガンになったり、甲状腺の良性腫瘍になった方々というのは、実は、ヨウ素欠乏症の地域なんですね。
これは、海から遠いから、ヨウ素が入ってこない。
ところが、日本は海洋国家です。
ヨウ素がたくさん含まれてるんで、もともとヨウ素は多く含まれてる上に、放射性ヨウ素が取り込まれるということで、
取り込み量が違うんじゃないか、というふうに見てる学者さんが、結構多いです。
僕も、それはあるかもしれないなと思いますが、ただ、可能性を捨ててはないし、
もし影響が出た時の対応は、せねばならんと思って、甲状腺検査というのを、これから、いわき市でやろうとしています。
いわき市で、僕は、放射能測定所のジェネラルアドバイザーっていうのをやってますので、
放射能汚染による、甲状腺検査への指導をしてやっていこうか、というような話をしてるんですが、
そういった地域では、まだ出る可能性があります。
だから、今出てる方々っていうのは、自然発生率の中に、含まれるかもしれません。
でも36%、甲状腺になんらかの障害があるのは、これは、今まで調べてないから判らないけど……多いのかな……ちょっと怖いかなっていうのが、正直なとこなんですが、
放射線によってガンになるっていうのは、かなり時間が経って出てくる晩発性障害だ、というふうに、僕らは習ってたんですよね。
だから、この中で出てくるというふうになると、僕はあんまり考えてないんですが、
これは、今までの学問と、これから新しく調べていって判るものには、違いがあります。
だから、「学問上ではこう考えられます。でも、出てくる可能性は、ゼロではない。
だから出てくるんだったら、証拠をきちんと出さないといけない」というのが、学者の務め、役割じゃないかな、というふうに思っております。
<2-3終了>
この後、非公開で、二本松市の状況のお話があったあとに、質疑応答があるのですが、割愛させていただきます。
ただ、その中で、「甲状腺検査を断られた場合、どこに行けばいいか?」という、親御さんの切実な質問に対し、木村先生は、
「医者ではないし、僕の範疇ではないが、聞いたことがあるのは、民医連(共産党系)では、検査を受けてくれる」
という趣旨で、回答されていました。
詳しくは、9月23日【内容起こし】木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その①】の、三つ目の動画をごらんください。
<2-3開始>
・ベクレルという単位は何を表すか
・自然放射線(カリウム40)と人口放射線の違いと注意点
・シーベルトという単位は何を表すか
・α線はβ線/γ線の20倍!
・ラドンガスと肺がんの関係
・臓器に対する放射線の影響の違い
・被ばくによる遺伝的影響
・チェルノブイリと福島第一事故の違い
・長崎の放射能到達状況
・放射能汚染時代
・2011年3月15日の汚染の広がり
・2011年3月に保安院が行った簡易の甲状腺被曝検査
『最大35mSv評価は経口吸入評価だと80mSv』
(木村真三氏)
今回は、放射線の単位。
また、放射線の種類と人体影響、というものを知っていただいた上で、今現在の、放射能の広がり。
また、その放射能によって、汚染された人々は、一体どれくらいの被曝をしたか、
外部と内部について、お話をしていきたいと思っております。
こういったことを中心に、お話をしていきたいと思います。
では、気持ちを新たに、勉強会ということでやっていきましょう。
まず皆さんに知っていただきたいのは、二つです。
『シーベルト=Sv』と『ベクレル=Bq』です。
簡単な方から行きます。
この、ベクレルと言っているものは、放射能を表す単位。
この放射能というのは、一体どういうことなの?っていうと、
これは『1秒間に、何個の放射線を出すか』で、ベクレルという単位になるわけです。
だから、それを、重さで割ってやるというと、放射能濃度、という言葉になるんですが、
この放射能濃度というのは、例えば、食の安全基準である、厚生労働省の食の基準値、
これは、大人で、100ベクレル/㎏、というふうになってますが、これは、
「1㎏の食品中に、1秒間に、放射線が100個放出される量。これ以上は食べては危険ですよ」
というふうになっているわけです。
子供の場合はというと、50ベクレル/㎏です。
これは逆に、半分になった、というふうに考えてください。
1㎏の食べ物の中に、1秒間で、50個の放射線が出てるもの、これを、50ベクレル/㎏、というふうに言うわけです。
だから、放射線の量だ、というふうに思ってください。
『1秒間に、何個の放射線が出てるか=ベクレル』ということです。
身長167㎝で、体重60㎏sの成人男性を、イメージしてください。
この成人男性の身体の中には、平均値ではありますが、約4000ベクレルの放射能が出てるんです。
1秒間に、4000個の放射線が、我々の身体の中から出てきています。
これは、体重の筋肉量に依存します。
女性の場合は、もちろん男性よりも、筋肉量が少ないです。
そのため、3000ベクレルから3500ベクレルくらいの放出量だ、というふうに言われていますが、
逆に、ふくよかな体をお持ちの方々というのは、やはり、それなりの線量が上がるわけなんです。
ちなみに、この放射線の大元は、セシウムではございません。
天然中に存在する、カリウム40というものです。
この、カリウム40というのは、半減期が12.7億年、というふうに言われているものですから、
もうこれは、我々人類というか、生命が誕生する前から、ずーっと放射能とお付き合いをしてるわけです。
だからこそ、我々の中に、放射能として存在するけれども、我々の人体に、影響はほとんど無いんだというのが、このレベルなんです。
この、カリウム40というものが、天然中には多く含まれております。
そういったものの中で、今回は、人口放射線核種ですね。
ヨウ素131や、ストロンチウム90……はほとんどないんですが、セシウム137と134といった放射性物質が、新たな放射性物質として加わり、食品の中に入ってるわけです。
ちなみに、じゃあ、お米でどのくらいかといいますと、
大体㎏あたり、50ベクレルから150ベクレルくらいの、カリウム40の放射能がある、というふうに、実測値が出ております。
この、カリウム40というのは、エネルギーが非常に高いのですが、セシウムに比べて、反応性が弱いんです。
だから、セシウムに比べて、その影響というのは、同じ量があったとしても、その量的関係でいいますと、約8分の1か、9分の1程度のレベルなんです。
でも、これを多く摂りすぎれば、やはり、8分の1であろうが9分の1であろうが、影響は出てきます。
だから、カリウムの摂取のし過ぎ。
通常、食べられているのは大丈夫なんですよ。
でも、福島県内なんかは、
「食品汚染を軽減するために、カリウムを撒きなさい」
っていうふうに、農水省が推奨してます。
そのため、土壌100gに対して、25㎎から30㎎の、カリウムを撒いています。
このカリウムを撒くことによって、セシウムは吸収されにくいけれども、選択的に、カリウムは吸収されるわけです。
その吸収されやすさというものによって、セシウムの影響を軽減させる、というふうにやってるんですが、
実は、カリウム量が、ぐんと上がるわけです。
上がってしまったら、実は、同じことが起きてしまう。
カリウムによる被ばく影響も、増加されるということは、実は、農水省に、大臣に、僕は言っています。
言ってるんですが、無視され続けています。
この危険性は、テレビでも言ってるんですが、あの有名な公共放送機関で、解説員が、
「先生、農水省で、私もこの話は聞いている。確認しましたら、農水省は大丈夫だ、と言っております」
「お前は、学者が調べた話と、農水の机にしか座ってない人間の話、どっちを信じるの?僕は実態調査の中で得られてるんだよ」
っていうことを、生放送で言いました。
こういったことを平気で言う、御用のマスメディアの人間がいるわけです。
だからこそ、誤魔化されるんです。
こういったことが、実際に、平気で横行してます。
「自分の身は、自分で守らなくちゃいけない」って、福島の人たちに言ってるんですが、
要するに、国が言ったり県がやってること自体が、信用できるかどうかっていうのは、情報公開をきちんとしていれば信用できるんです。
その、情報公開がしてないからこそ、不信につながるわけです。
だからこそ、こういった情報をきちんと出せば、行政に対してだって、「良くしてくれてるな、ありがとう」という気持ちを持てるんですが、持てないのはそういったことなんです。
こういうことで、ベクレルというのは、放射能というものの単位を表すもので、
放射能濃度というのは、『Bq/kg』重さで割り算してるものが、1㎏中に、どのくらい放射能が含まれているかっていうので、このベクレルを使うものだ、ということです。
続きまして、この『シーベルト=Sv』。
このシーベルトは、更に難しいです。
これは、一筋縄ではいきません。
これは、人体に影響を及ぼす単位として、シーベルトというものがあるわけなんですが、
このシーベルトは、実は、放射線の種類によっても違うわけなんです。
α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、そのほか、中性子線とか中間子とかμ粒子とかあるんですが、
代表的なα・β・γについて、お話をしていきたいと思います。
このα線というのは、皆さんもお手持ちの紙切れ1枚で、実は遮蔽することができるんです。
だから、この紙1枚、服を着ていれば、放射線はここで遮られる。
服で遮られてしまうものなんですが、実は、このα線が、人体に対して、影響というのが一番強いというふうに言われています。
じゃあなぜ、そういったことが起きるのか?
それは、紙1枚に対して、この紙切れに、α線というものが、一気に、すべてのエネルギーの受け渡しをしてしまう、
だからこそ、受けた側の影響は、一番大きくなるわけです。
ヘビー級のハードパンチャーが、どんとやってしまえば、人の命は失われる、というのは判りますよね?
でも、子供がじゃれ合って殴っても、その力は弱いですよね。
だから、その人体の影響っていうのは、同じパンチだけれども、影響は違うわけです。
これと一緒のことが、このα線でも起きているわけです。
実はγ線・β線に比べて、1を基準とした場合、このα線の影響力は20倍だ、というふうに言われています。
だから、発がん影響が、20倍になっています。
ここで説明しますと、ICRP=国際放射線防護委員会の、90年勧告と2007年勧告というのを、表にしてますが、
基本的に、この、光子というのが1です。
これは、γ線やX線を表しています。
電子・μ粒子、この電子というのは、現在も、この蛍光灯なんかで使われている、電気の流れ、これを作ったのが電子なのですが、
この電子が、ポンと飛び出してきたものが、なんと、β線というふうな名前に変わるわけです。
このβ線も、1なわけです。
これが、90年度でも07年度でも同じなんですが、このα線は、20というふうに、重みづけされているわけです。同じエネルギーでも、その影響たるや、相手に及ぼす影響は、20倍なんだよ、というのがα線なんです。
このα線というのは、欧米諸国、特に、アメリカの統計データなんですが、
アメリカ人の肺がん患者の、4人に1人は、このα線によって、肺がんになってるんだ、というふうに言われています。
じゃあ、その由来はというと、これは、食べ物や、地面から出てきている、ラドンガスというガス。
このガスっていうのは、α線放出核種なんですね。
α線を出すから、それを吸ってしまう。
ガス状ですので、知らず知らずに吸ってしまう。
そのことによって、DNAが壊されてしまう。
そのDNAが壊されたものの、修復がうまくいかずに、そのまま、遺伝的に受け継がれていく。
そのうちに、突然変異として、ガン細胞が出来上がるというのが、ガンのメカニズムなんですが、
こういったことが、実際に、肺の中で起きてるわけです。
じゃあなぜ、欧米諸国は、こういったことが少なくないのかと申しますと、これは、石造りの家や地下室が、多いんですね。
だからこそ、ラドンガスというのは、実は、ウランという核燃料物質、これは、天然中でも、ほんのちょびっとですが存在します。
それらが、原子核崩壊をしながら出てきた物質が、このラドンガスなんです。
だから、石の中にも含まれてるし、土の中にも入ってる。
もちろん、コンクリの中にも入ってるわけです。
こういったものがあるために、その濃度が濃い状況で、生活をしてしまうから、肺がんが起きてしまうんだ、というふうに言われています。
では、日本ではといって、日本で調べてみました。
これは2009年、2010年ですが、厚生労働省のお金をもって、実は、ラドン調査の??になりました。
全国4200か所の加盟に対して、このα線量を調べた。
ラドン濃度を調べた結果ですが、大体、1時間あたり、100ベクレル以下です。
でも、100ベクレル前後はあるわけです。
高いところで、200ベクレルを超えています。
欧米諸国では、250ベクレルとか400ベクレルというところがあるわけです。
そういったものを、WHOが今、規制をかけようとしております。
というわけで、このラドンガスが壊れるときに、放出されるα線というものが、肺がんリスクにかなり寄与してるんだということです。
こういった天然中の放射性物質があるわけです。放射線の種類によって、その影響は同じエネルギーであったとしても、影響の度合いは全然違ってくるということが言われております。
その一覧表がさきほどのこの表になるわけです。
でも、最新データをお伝えしますと、このβ線というものは、実は、皮膚の表面にくっついたり、体内に取り込まれた場合、
これは、ストロンチウムの場合、と考えてください。
ストロンチウムというのは、β線を100%放出する、準β各種といわれるんですが、
ストロンチウムなどのβ線放出核種では、なんと、γ線に比べて、影響が大きく出ているという実験が、ねずみさんの実験なんですが、もう言われております。
今、WHOやICRPでは、このβ線に対する基準を、考え直さなければならないというふうに、検討に入ってるところなんです。
これを見つけたのは、大阪大学の、今、名誉教授をされている、野村大成先生というお医者さんです。
この野村先生は、様々なお医者さんがいらっしゃる中で、一番僕が尊敬している、最も信用のおける先生なんですが、
この先生は、実験的に、全部調べてくださった。
こういったようなことで、実は、β線についても、危機感を持たなければならない、というふうに解しております。
ちなみに、セシウム137、134というのは、実はβ線放出核種です。
γ線は、ちょびっとしか出しません。
ほとんどγ線だ、というふうに言われてるのは、セシウムが壊れて、すぐにバリウムというものになります。
バリウム134、137という物質になるんですが、これがわずか、2分ちょっとで崩壊して、違う物質に変わるわけです。
その時に、γ線をドーンと出すんです。
セシウム137は、半減期が30年、134は2年、というふうに言われております。
これが、半分の量になるっていうのが、30年や2年、というわけなんですが、
かたや、バリウムになると、わずか2分程度で、γ線を放出して、違う物質に変わるということで、ほとんど平衡状態になってるわけです。
バリウムの量=セシウム量と一緒になってしまうから、
ここから出てくるバリウムの量と、出てくるγ線は、セシウムから出てきた、とみなすことができるので、
γ線放出核種のようにいわれてるんですが、実はβ線です。
実は、β線放出核種です。
これらのβ線の影響というのが、もしかしたら、効いてくる可能性も、今後あるわけです。
続いて、もう一つ。
放射線の種類によって、違うシーベルトなんですが、もっと大変なのは、実は、臓器の中でも、放射線の種類によって、影響が異なるということです。
それをちょっとご紹介しますと、例えばこの結腸、肺、胃っていうのは、0.12、というふうに出てますよね。
これは、ICRPの、2007年度版でも同じです。
生殖腺は、0.20~0.08に落ちました。
組織荷重係数というものがあります。
全く影響を示さないものとしては、他の臓器がありまして、これらも、何らかの影響があるかもしれないということで、全部、足し合わせて、1になるようになっています。
だから、実は、臓器ごとの被曝線量を求めて、その臓器ごとに被曝線量を出して、足し合わせたものが、シーベルトという単位になるわけです。
ちなみに、なぜ、この0.12という高い数字になるかというと、
これは、細胞増殖回数、細胞分裂回数が大きい組織ほど、放射線の影響が大きい、というふうに言われています。
また、未分化細胞、肝細胞ですよね。
よくiPS細胞というのが、最近言われてますが、この、なんにでも変わる万能細胞は、実は、放射線の影響が強いんだ、というふうに言われています。
これは、1906年に、フランス人の研究者である、ベルモニーさんとプリモンドさんという方が、
ねずみの精子に放射線を当てて、実験をした結果、導き出された実験則なんですが、
この実験則でいうと、骨髄や結腸というのは、細胞分裂が非常に大きいんです。
東海村臨界事故の時に、お亡くなりになられた方は、輸血が始まります。
これは、直腸や結腸というものが???が壊されて、もう表面が、ズルズルにずる剥けになってしまって、
そこから血液が漏れ出てる症状、というので、輸血が始まるわけです。
こういったことで、白血病の話がありますね。
広島・長崎では、白血病が出ました。
それは、赤色骨髄細胞というものが、背中のあたりにあるんですが、主には白血球ですが、白血球を作る細胞というのが、骨髄になります。
この細胞がやられてしまいやすい、ということで、影響が大きいんだ、というふうに言われています。
ではなぜ、2007年度勧告では、生殖腺が下がってきたかといいますと、これは、遺伝的な影響がほとんどない、確認されてないから、
生殖腺の影響はほとんどないんだ、あまり大きくみなすことはないんだ、ということで下げられました。
これは、僕は、異論を呈します。
というのは、これ、実は、広島・長崎で、被爆者から生まれた子供というもの、これは第2世代。
第3世代というのは、この被爆者の子供から生まれた子供が、第3世代ですが、彼らは実は、ほとんど、遺伝的な影響というのはありません。
出てないです。
これは、自然発生率の中で出てくる、遺伝的な影響はもちろんあります。
その中から、明らかに超える数字が出ていない。
だからこそ、遺伝的な影響は、ほとんど無いんだ、ということで下げられたわけですが、でもこれは、僕は、ICRPは間違いだ、と思っています。
なぜならば、これは、放射線遺伝学という、学問があるんです。
この放射線遺伝学の中では、既に、もう結論が出てるんです。
被曝をした人たちというのは、実は、遺伝的な影響が出るのは、普通に被曝をすれば、数十世代後に出る、というふうに言われています。
数十世代ですよ?
だから、何千年も後に、出て来る可能性があるんです。
だから、第1世代、第2世代、第3世代では出ない、ということを知っているけれども、
知っているから、大したこと無いんだといわんばかりに、こうやって、リスクを下げてるんです。
今回のような、福島第一原発や、チェルノブイリの事故。
こういった場合には、遺伝的な影響が出るのは、早くて5世代以降だと思います。
でも、普通に考えて、10世代以降だと、我々は考えています。
実際に、遺伝的な影響が出るといっても、目に見えないとか、手がないとか、身体の部分の一部が欠損してる、というようなものではありません。
本人すらも、周りの人すらも、全然気づかないレベル、ほんのちょっとした……、
例えば、かけっこでいえば、ちょっとだけ足が遅かったり、ちょっとだけ??が遅かったり、
ほとんど、自分自身も影響がなく、健常人とほとんど変わらない状況で、まずは出現するだろうというのが、
1970年代に、遺伝学の大家、日本では、遺伝学の父と言われている、木村??先生という先生がいらっしゃるんですが、その先生が、本の中で言われています。
こういった遺伝というものは、実は、長い長い年月を経て、出てくることです。
ちなみに、つい最近、今年の8月ですが、NHKの子供科学ラジオ電話相談に出たんですが、その中で、虫の質問が出たんです。
『ノコギリクワガタとコクワガタを飼ってます。これが交尾をして、ノコギリコクワガタはできますか?』
っていう問題だったんです。
「う~……きっち~!」
と思って、僕は、放射能で良かったと思いながら聞いてたんですが、実は、僕も、答えが「できない」です。
これは、「できません」。
残念ながら、これは、交配ができません。
でも、よくよく似た近縁種、ライオンと虎が交配すると、レオポンというものになります。
(これは間違いで、正しくはライガー。ライオンとヒョウの交配が、レオポンだそうです)
例えば、ジャガイモとトマトをかけあわせても、ポマトというものになる、という話があります。
こういった交配では、第一世代しか残せないです。
種の存続は、できないです。
だから、第2世代ができない、というふうに言われています。
かけあわせた交配によっては、子供はできるんですが、その次に、遺伝的に、ずっと持ち合わすことはできないです。
これが、種の保存、というものなんです。
固有種というものは、きちんと、その種の存続をしなければならないということで、突然変異は、ほとんど好みません。
でも、その中で、突然変異ができて、その突然変異が、遺伝的に伝わる、ということになれば、
それは、ものすごい弱い影響でしか、遺伝的影響としては出てこない。
でも、それが出始めると、弱い種族が出てくるわけです。
この弱い種族が出会う確率が、今度出てくるというのは、交配が続くと、どんどん弱い遺伝を持った人たちが、増えていきます。
そうすると、数十世代以降、数百世代後には、ものすごい弱い影響が、顕著に表れた人類が、出てくることになります。
だから、人類の滅亡というのは、もしかしたら、そういうところから始まるかもしれないと。
遺伝的なお話は、こういったことなんです。
だから、こういったことを、正しく理解せねば、広島・長崎のときのように、奇形が生まれる、というような話が出てくるわけです。
奇形が生まれてくるとしても、これはゼロではありません。
出てくるのはあります。
チェルノブイリでも、でてきたという報告は受けてますが、この中でのほとんどは、出てきても、生命維持が出来ないような形で、
1週間後には、死んでしまうような状況が多いわけです。
そのほかには、直接的に、非常に大きな遺伝を持った人が、出てきましたっていう話をしますが、
その自然発生率が、いったい何%かっていうのは、事故前から調べなければいけないのですが、調べられてない。
ほとんど判らないわけなんですよ。
あたかも、見てきたかのようなことを言いますが、科学的に言えば、実は、
実験的に実証された遺伝学の中では、直接そうやった、遺伝的欠損を持った方々が、生きながらえるくらいのレベルで出てくることは、ほとんど……ごくごくわずかだと思います。
中には、いらっしゃると思いますよ。
ゼロではない、と思いますが、数学的にゼロでない、というだけなんです。
じゃあ、実際にはどうなのかというと、ほとんどが、被曝をされた場合、生き残れないと判断すると、流産になってしまうというのが、我々の身体なんです。
そういったことをきちんと理解しなければいけないなと思います。
ということで、実際に、シーベルト、この一つ一つをとっても、放射線の種類によっても、その影響は違う。
また、臓器によっても、影響は全然違うんだ、ということで、
放射線の種類を掛け合わし、さらに、組織の影響する感受性の違いというものを掛けあわせて、
初めて、もともとの放射線のエネルギーを掛けあわせることで、シーベルトというものが出てくるわけです。
それを、全ての臓器を足し合わせて出したものが、この実行線量、シーベルトという単位になるわけです。
だから、簡単に、シーベルトというふうに使われるんですが、実は、大変な計算をしなければならないということなんです。
今回の場合、より複雑にしてるのは、チェルノブイリほどではありませんが、β線の影響の寄与率を考えて、更に、γ線の寄与率も考える。
それから、それぞれの組織の寄与率も考えた上で、出してくるっていうのが、本当の正確な値なので、
実際に???されてるのは、簡潔に簡略化された、計算式から求められたもので、
きちんとした精度の良いものではない、ということを、皆さんも理解してください。
ということで、ちょっと、話がだいぶ長くなってしまいましたが、
もう一つは、放射能というのは、実はこの地域を含めて、広く薄くではありますが、一度は汚染され、被曝をしましたよっていうことを理解してください。
皆さんにお配りしたレジュメですが、この中で一つだけ、今日、文書をさっきちらっと見てたら、間違いがありました。
『燃料棒を覆う金属の一部から、水素が発生する』
というふうに書いておりますが、それは間違いです。
訂正して、線を引いておいてください。
実際は、どういったものかというと、
燃料棒を覆うジルコニウムという金属が、通常、原子炉っていうのは、加圧された状態、圧力容器によって、中で冷却されてます。
だから、その水というのは、100℃以上で、水の状態を保っています。
通常、240℃だ、というふうにいわれていますが、この240℃では、ジルコニウムに触れても、水素は発生しないんですが、
ジルコニウムが、900℃を越えた場合、水と反応して、水が酸素と水素に分れるらしいです。
この水素濃度が、4%を超えた時に、大気中の酸素と触れ合うことで、大爆発が起きる。
これが、水素爆発なんだということです。
ちょっと誤りがありましたので、訂正しておきますが、
これは、『ジルコニウムという金属と、900℃以上になった水が触れ合った場合、水素が発生する。
その水素によって、大爆発を起こすのが、水素爆発なんだ』ということです。
不幸にして、これは皆さんご存知のように、全交流電源喪失という事態になりました。
冷却水を冷やすための外部電源が、全部、津波によって、ショートしてしまいました。
そのおかげで、冷やす能力がなくなって、どんどん空焚きの状態になって、わずか十数時間後には、メルトダウンが起きたと言われています。
メルトダウンが起きたんですが、チェルノブイリと全然違うのは、チェルノブイリは、原発の構造が違う、というのがまず一つ。
もう一つは、その構造の中に、圧力容器という、安全構造を持っておりません。
だから、チェルノブイリの場合は、一気に、水素爆発じゃなくて水蒸気爆発。
水と、メルトダウンした、ドロドロに溶けた燃料が触れ合った瞬間に、一気に水の体積が膨張し、
水蒸気になって、その水蒸気が、150トンもの重さがある蓋、原子炉釜を取り付けてある蓋、ちょうど、イメージは、この白いぼんぼりみたいなものですね。
こうやって、ぶら下がってたんですよ。
このぶら下がってるこの状況、蓋が150トンあるのですが、水蒸気が持ち上げたんです。
グーッと持ち上げて、大気と触れた瞬間に、今度は、大爆発をしたということで、水素爆発じゃなくて、水蒸気爆発である、というふうに言われています。
そのために、このぶら下がってたのは、燃料棒だと思ってください。
これが、大気中に、大量放出されたのが、チェルノブイリです。
ところが、ここは、圧力容器というもので守られてたものが、圧力容器は、メルトダウンによって溶かされました。
でも、水素爆発はしたけれども、水蒸気爆発を起こさなかったために、圧力容器は、そのままの形で残っています。
だから、原子炉の内部の核燃料というものが、大量に放出されることが無かったということで、
実は、チェルノブイリと福島の事故というのは、大きく違うんだ、ということをご理解ください。
ただ、原子炉建屋、格納容器は、大爆発をして壊れました。
そのため、大量の放射能が出てきて、家々を汚染し、また、山々を汚染していきました。
家を汚染したことで、帰ることができないような方々を生み、また、食品の汚染にも、繋がっていったわけですが、
更に不幸な出来事は、山を汚染した放射性物質が、表面にくっついた状態になったんですね。
これが、雨によって洗い流されて、川を汚染し、更には、河口を汚染し、海を汚染してしまったんだ、という事実を理解してください。
これから見せる、衝撃的なお話ですが、実は、早い時期にもう、放射能は、長崎に到達してるんです。
静岡じゃないですよ。
静岡は300㎞、400㎞くらいの圏内だと思うんですが、遥かに超えた、2000㎞くらい離れた長崎で、もう既に、3月の時点で、放射能は到達しています。
これを計測したのは、長崎大学の、僕の親友で、常に、僕のデータを分析して、未だにずっと、二人羽織で調査をしている、高辻俊宏先生が解析してくださったんですが、
彼は、事故前からずっと、エアロゾル、大気中に浮遊してる粉じんを集めて、その粉じん中の放射能を測る、という仕事をしてました。
更に、これは、中国大陸から飛んでくる、環境汚染物質をしらべる、ということもやってたんですが、
この放射能が、長崎に到達しているんではないかということで、彼が分析した結果、
ただ、これを、指導していた大学院生の仕事だったんですが、出来が悪くて……、
事故直後から測っていれば、ヨウ素が判ったんですが、ヨウ素が未検出のままだったんです。
ヨウ素が全部飛んでしまった後に、見てしまった残念な結果なんですが、
この赤い部分が、セシウム134で、青いのが、新たな放射性核種ですが、銀の110Mというものです。
Mというのは、メタステーブル、準安定状態というものなんですが、銀の110M、というものが出てる。
更には、セシウム134が、緑色で出ているわけです。
後の、紫色の、鉛の210というのは、天然中に常に存在するもので、それはほとんど差が無い。
でも、人工放射性核種は、量の最大値が、昨年4月6日から13日の、この1週間で、長崎市が最大ピークを迎えました。
この、有り得ない話をしますと、この塵、1㎏に換算して計算すると、
飯舘村の蕨平、僕が、3月28日に入った時は、40マイクロシーベルト/時を越えている地域です。
この飯舘村の、蕨平の、0~5㎝の土壌と、ほぼ匹敵するくらいの放射能が、飛んできているということになりました。
ということはですよ?
これは、皆さんのこの地域でさえも、一度は汚染されてしまったんだ、ということを認識してください。
なぜなら、京都の五山の送り火、大文字焼きですよね。
あそこで、岩手県の陸前高田市の薪が、「放射能で汚染されてるから焼かない、燃やさない」と言ってやらなかった、京都市の判断がありますよね。
こういったことっていうのは、実は愚の骨頂で、実際には、それ以上の放射能は、既に到達してるんだから、
ほんのわずかしかでてない、放射性物質を怖がって、
「琵琶湖の水が汚染される」
「もう既に、汚染はされております」
というのが、僕の結論なんです。
こういったことが、風評被害として、明らかに、風評被害として出てしまうというのが、胸の痛むところなんです。
これを、きちんと、科学を持って否定をせねばならない。
当初から、ずっと言っていたんですが、やはり、伝えるということっていうのは、なかなか難しいことで、
全国的には伝わらないから、そういうことが起こるんですが、こういったことは言ってました。
実際に、どこの地域でも、きちんと測れば、今回の原発事故由来の放射能っていうのは、検出されるわけです。
こういったことが、実際にはありました。
更にですよ、これ、今年の2月2日、3日と、釧路にある北海道教育大学釧路校というところで、放射線教育を二日間やりました。
そこで、最終日の最後の時間に、
「皆さん、じゃあ、この地域が、放射能で汚染されてるかどうか、調べてみましょう」
っていうことで、放射能を測定したんです。
そしたら、やっぱり、線量計上がるんですよ。
しかも、足ふきマットや、思わぬところで上がるっていうことは、これは、放出されたものが、やっぱり浮遊してきてるってことなんですね。
『釧路でも起きてる。長崎でも起きてるということは、これは、広く薄くではありますが、全国で、放射能に汚染されたんだということを、認識せねばならない時代に来たんだ。放射能汚染時代だ』
ということを、理解してください。
だから、この静岡。
実際に、ちょうど海側を通る風によって、実は、お茶が汚染されましたよね。
あれは、ただの付着じゃありませんよ。
汚染も吸収も、されてるはずです。
だからこそ、実は、この静岡だって同じことなんだと。
一緒に考えて、同朋のために、考えていかねばならないと思います。
これ、3月15日、北西方向に吹いた風っていうのは、飯舘村を襲って、更には、僕が避難させた、浪江町の赤宇木集会所に居た人たちも、被曝しました。
そしてさらには、福島市や郡山市も、汚染されたんですが、この汚染状況というのは、3月15日の夕刻です。「じゃあ朝はどうだったの?」っていう疑問が出てくるじゃないですか。
その答を、ちょっとお見せします。
これは、実は、海沿いの風が吹いたんです。
南側の風がグイッと吹いて、なんと、海を通過して、千葉県を経由して、ずーっと流れて、静岡県の方に、実は流れてるんです。
これは一例です。
風の流れも、当然皆さんお分かりのように、様々な方向に吹きますよね。
だから、この風の一部、しかも、一番濃い放射能が含まれた風が、こちらにも到達したんだと思います。
ここは、3月15日の午前10時、東京に、最大の放射能が到達したとき、たまたまそれを検出しました。
それを、さっき言った、大気中の塵を集めるハイボリュームエアサプラというもので集めて、
それを、京都大学原子炉実験所の、小出さんの方に送って、小出さんによって、発表してもらいました。
その時は、東京都でも、1マイクロシーベルト/時を超えてるわけです。
実際に、朝早く、放射能は、いわきを通過したんです。
昨年3月の、23日から30日にかけて、原子力保安院は、子供たち1200名に対しての、甲状腺の簡易検査をしたんです。
その中で、最大が、35ミリシーベルトのお嬢さんが見つかりました。
これは、小学校4年生のお嬢さんなんですが、なんと、飯舘村や浪江町とか、そういったところではございません。
最大の放射線被ばくをしたお嬢さんは、いわき市です。
いわきは、今現在、空間線量率0.1くらいです。
非常に低いんです。
なんでこういったことが起きたか、皆さんも、3月15日から3月30日まで、思い起こしてください。
これは、絶対、皆さんには大切なことです。
ここ、汚染地域なので、思い出してください。
思い出す方法は、震災があった時から、ずーっと遡って計算していくんです。
そうすると、震災の時は、絶対覚えてますから、震災直後からどうだった、ああだったという話を、
みんなと、お友達と一緒に話していけば、その時の、3月15日の、状況が出てきます。
そういったことで、思い出して、書き留めておくっていうことが、大切なことですが、
実は、この日の、気象条件が左右するんです。
この日、雨が降った地域、雪が降った地域は、飯舘村、福島市、郡山市です。
これらが、汚染を拡大しました。
土壌を汚染させた原因です。
更に、いわき市は、その時間帯、雨も雪も降らなかった。
表面を通過していったんです。
だからこそ、土壌汚染が少なかったから、空間線量率が、今のように、0.1なわけなんです。
こういったような状況で、この静岡市が、静岡県が、気象条件がその時どうだったかということで、汚染レベルが決定されるわけなんです。
だから、実は、このいわき市で見つかったお嬢さん、放医研が、このデータをもとに計算した結果は、35ミリシーベルト。
これは、3月12日から、爆発が起きた、事故が起きた時点から、3月30日まで、
食品が汚染されたとして、毎日、経口摂取をしたときの計算でやったら、35ミリシーベルトです。
でも、私は、二本松市で、今5000人を越える人の、内部被曝調査をしました。
その結果で、事故から早い時期の段階の方々は、外に居た時間に比例して、内部被曝量が変わる。
ということは、これは、食べ物じゃなくて、呼吸から入ってる。
肺による吸入摂取被曝=呼吸からなんです。
だから、吸入によって、摂取したときの被曝線量で、お嬢さんを計算し直しました。
その結果、甲状腺部分での被曝量は、80ミリシーベルトです。
これは、1200人という簡易検査で、ちょっとした簡易検査です。
氷山の一角であって、もっともっとたくさんの人が、被曝をしてる可能性があります。
そういった状況というものが、まだ見えてこない。
これで、
「じゃあ影響があるかどうか?」
「ほとんどないでしょう」
とは言えないんす。
「ある」、と僕は思っています。
出てくるかもしれません。
実はおととい、双葉町の井戸川町長と、3時間ほど対談してきました。
双葉町は帰りません。
原発の敷地を持ってる町ですから、汚染が高いです。
福島弁でお話すると、
「先生、俺ん家は、庭先で60マイクロまだあるんだ。でもよ、墓はよ、200マイクロ超えてんだよね」
「有り得ない」
「先生、これは帰れるのけ?」
「帰れるわけねぇやないか」
とはっきり答えています。
「無理です。帰還困難です」
っていうふうに言ってるんですが、この双葉町の方々や町長は、実はもう、まことしやかに、
町長はいの一番に逃げて、住民を置き去りにしたんだと言っていたんですが、実はそうではなくて、彼は、最後まで残ったんです。
残った状況の話を、聞いていきました。
なんと、あの建屋を覆ってる、断熱してるブラスウール、ふわふわの黄色いやつですね。
このふわふわのやつが、音もなく、しんしんと降るさまを、見たそうです。
これは、原発から8㎞離れたところ。
それが、雪のように、しんしんと降るさまを見ながら、全員が、呆然と立ち尽くしながら、
町民も、役場の職員も逃げてるんですが、残った人、警察や自衛隊、町の残ってる人たちや病院の先生方は、その風景を見たらしいです。
「この中で、どれだけ放射能が飛び出たか、わかんねぇんだよね。俺もちょっとおかしいんだ」
って言ってます。
ということはですよ、本人に言ってません。
許可も得てません。
でもね、これは事実です。
こういったことが、直近ではあったわけです。
こういったところで、もしかしたら、まだまだお子さんでも見つからないけど、これから出てくる可能性はあります。
通常であれば、チェルノブイリのほうでは4年後に、甲状腺ガンが、基準値・平均値を越えて優位になったということで、
放射線の影響が、4年後から出た、というふうに言われています。
でも、これは、事故当時の検査技術が発達してなかった、ということも含めて考えますと、もうちょっとしてから出てくるんじゃないかと。
今現在、調べたものは、ちょっと、影響が出るのが早すぎるんじゃないか。
もし出るとすると、よっぽどの影響がないと出てこないです。
更に、チェルノブイリで、甲状腺ガンになったり、甲状腺の良性腫瘍になった方々というのは、実は、ヨウ素欠乏症の地域なんですね。
これは、海から遠いから、ヨウ素が入ってこない。
ところが、日本は海洋国家です。
ヨウ素がたくさん含まれてるんで、もともとヨウ素は多く含まれてる上に、放射性ヨウ素が取り込まれるということで、
取り込み量が違うんじゃないか、というふうに見てる学者さんが、結構多いです。
僕も、それはあるかもしれないなと思いますが、ただ、可能性を捨ててはないし、
もし影響が出た時の対応は、せねばならんと思って、甲状腺検査というのを、これから、いわき市でやろうとしています。
いわき市で、僕は、放射能測定所のジェネラルアドバイザーっていうのをやってますので、
放射能汚染による、甲状腺検査への指導をしてやっていこうか、というような話をしてるんですが、
そういった地域では、まだ出る可能性があります。
だから、今出てる方々っていうのは、自然発生率の中に、含まれるかもしれません。
でも36%、甲状腺になんらかの障害があるのは、これは、今まで調べてないから判らないけど……多いのかな……ちょっと怖いかなっていうのが、正直なとこなんですが、
放射線によってガンになるっていうのは、かなり時間が経って出てくる晩発性障害だ、というふうに、僕らは習ってたんですよね。
だから、この中で出てくるというふうになると、僕はあんまり考えてないんですが、
これは、今までの学問と、これから新しく調べていって判るものには、違いがあります。
だから、「学問上ではこう考えられます。でも、出てくる可能性は、ゼロではない。
だから出てくるんだったら、証拠をきちんと出さないといけない」というのが、学者の務め、役割じゃないかな、というふうに思っております。
<2-3終了>
この後、非公開で、二本松市の状況のお話があったあとに、質疑応答があるのですが、割愛させていただきます。
ただ、その中で、「甲状腺検査を断られた場合、どこに行けばいいか?」という、親御さんの切実な質問に対し、木村先生は、
「医者ではないし、僕の範疇ではないが、聞いたことがあるのは、民医連(共産党系)では、検査を受けてくれる」
という趣旨で、回答されていました。
詳しくは、9月23日【内容起こし】木村真三氏:市民科学者養成講座『福島県の放射能汚染の実状』@静岡【その①】の、三つ目の動画をごらんください。