ブログ『ぼちぼちいこか』のトキコさんが、内容起こしをしてくださった、原発作業員の現状について伝えてくれた『報道するラジオ』。
これは、毎日放送の『たね蒔きジャーナル』が急に廃止ということになり、その後立ち上げられた番組です。
以前から、この原発作業員の方々を取り巻く、大変厳しい環境というのを、事細かに取材してくださっていて、
わたしも一度、その内容を、書き出したことがありました。
今の日本が、とりあえず無事に、人によっては、まるで以前と全く変わりなく暮らせる国であり続けていられるのも、
この、非常に劣悪なだけでなく、実際に、膨大な被ばくという、命に関わる健康被害を前提にした作業をしてくださっている、
原発事故現場の収束作業に関わってくださっている、たくさんの作業員の方々のおかげなのに、
その方々の、作業環境はもちろんのこと、仕事外の暮らしの環境までもが、信じられないほどに酷いものだということを、
わたしはもっともっと、日本中の人達に知ってもらい、自分のこととして考えてもらいたいと、心からそう思っています。
↓以下、転載はじめ
2012年10月06日03:22
10月5日【内容起こし】
原発作業員-その後:
「宿代・食事代が出なくなった」「東電にしたら俺らは『使い捨て』」「日当2000円減額」@報道するラジオ
※この記事は、
★3月5日 【内容起こし】たね蒔きジャーナル:福島原発作業員の方々の声【現状・被曝管理・賃金・待遇……届かない声】
★9月19日 【内容起こしUP】原発作業員に聞く 福島第一原発事故の真実@スーパーニュースアンカーより「造血幹細胞知らない」「最期はがんで死ぬ」
★2月23日BBC放送"This World 2012 Inside the Meltdown"のご紹介などに関連しています。
たね蒔きジャーナルが終了し、水野アナウンサーがメインとなっている、『報道するラジオ』が始まりました。
たね蒔きジャーナルと、ほぼ同じような印象を受けたのですが、今後はどうなっていくのか、よく判りません。
事故を経て1年半の、福島第一原発の、作業員の方々の待遇は、こういう状況だそうです。
どうぞ。
20121005 報道するラジオ 「原発作業員が語る福島第一原発のその後」
【以下、お時間の無い方のために、内容を起こしています。ご参考まで】
水野氏:
本日始まりました『報道するラジオ』、大きく二つのテーマを取り上げていきます。
今日二つ目のテーマは、『原発作業員-その後』でございます。
福島第一原発の事故は、まだ全く収束していない状態で、実態としては、平野さん、多くの作業員の方々が、過酷な環境で、働き続けていはるわけですよね。
平野氏:
そうですね。
水野氏:
ただ、その様子は、ちっとも伝わってきません。
私たちは、ここに引っ掛かりたいと思います。
事故から1年半経った今、福島第一原発の作業員に、何が起こっているのか、上田崇順(たかゆき)アナウンサーが、取材してまいりました。
上田さんこんばんは。
上田氏:
こんばんは。よろしくお願いします。
1年半経ちました春にも、取材をしたんですけれども、
この9月の終わりに、全国から来た作業員が多く宿泊している、福島第一原発から40㎞離れた、福島県のいわき市を取材してきました。
東京電力によると、今でも、福島第一原発で、毎日3000人の人が、事故収束に向けて、危険な作業に携わっているということです。
水野氏:
3000人の方たち。はい。
上田氏:
8月末時点で、事故のあと、2万3700人の人が、福島第一原発の中に入った、ということなんだそうです。
さっそく、その作業員の方が泊まっている、宿を訪ねてみました。
こんな音がありました。
―――――――――――
《ビリビリビリッ(何かを破る音)》
作業員A:
これ、持っていくんか……<苦笑>
―――――――――――
上田氏:
ビリビリっという音がしましたけれども、これは、ガムテープで段ボールをとめて、梱包している様子なんですけど、
作業員の方が、宿から、引っ越し作業をしていたんですね。
水野氏:
引っ越しですか?
上田氏:
はい。
作業員の皆さんは、雇われている会社が用意した、宿に泊まっています。
旅館やホテルが、借り上げられているんですね。
遠方から来ている作業員は、1泊2食付、という条件で来ています。
そこから、バスに乗って、みんなで福島第一原発に通う、という形なんですが……。
ところが、9月の終わりに取材していますと、多くの作業員が、宿泊している宿を、出ようとしています。
取材できた宿では、もう、半分もの原発作業員が、出ていってしまった……。
水野氏:
半分もの人たちが、出ていっちゃう……?
上田氏:
はい。
そして、「どうして宿舎を引き払うんですか?」というふうに、聞くことができましたので、その声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員B:
9月になって、もう、9月も入ってからですよ。
結局、自分たちの所属してる会社の人から、メールが来たんですよ。
で、メールが、「あれ?珍しいな。電話じゃなくてメールってなんでやろ?」って見てみたら、
『9月いっぱいで、宿代がもう出なくなります。なので、帰ってきてください』
っていうメールが来たんですよ。
「え!!」っと思って、電話しますよね。
そしたら、どうやら、
「元請のほうから言われたんやけど、9月いっぱいで、宿代が出せなくなる。
宿は、全員退去してください。
それでも残ってやりたいんやったら、皆さん、自分たちで、福島でアパートなり部屋なりを借りて……やったら雇います」
っていうことやったらしいんですよ。
―――――――――――
上田氏:
はい。
出ていかなければならない状況に、なったわけですよね。
「自分たちで家を見つけるんだったら、続けて仕事をしてほしい」、というようなことで……。
水野氏:
そんなこと、急に言われても……。
上田氏:
そうなんですよ。
当初の約束と、当然変わってきますよね。
そして皆さん、「大変困る」ということなので、別の作業員の方に、どうなるのか聞きました。
―――――――――――
作業員C:
俺はもう、宿代カット、要するに衣食住……衣は自分のあれですから、食住がなくなっちゃったわけですよね。
単純に考えて、宿代と食事代で、1泊2食で5000円だとしますよね。
それが30日ですから、15万ですよね。
その15万っていうのが、無くなったんですよ……。
かなりの痛手ですよ。
今まで……貰ってた給料から、食と住を引かなくちゃいけないんですから。
残ったものっていうのは、本当に、微々たるものじゃないですかね。
―――――――――――
水野氏:
15万円分、自分の方でなんとかしないといけない、ということになりますよね。
上田氏:
そうなんです。
単身の人というのは、もともと住んでいたアパートを引き払って、福島に来ているんですね。
それは、仕事が、もともと長期になる、事故の収束には時間がかかる、ということを聞いてきているから、
「住まないところの家賃を払うのは、もったいない」と。
当然、急に無いと言われたら、帰るところも無いですよね。
福島で、家を探すというのも難しい。
家族のある人は、宿代を出してもらえるからこそ選んだ、という仕事なんですよね。
でないとやっぱり、家族のいる分の生活費と、自分の分と、二重にかかってきて暮らしていかなければいけないと。
そもそも、作業員の給料って安いんです。
前回の取材では、1日働いて、7000円から1万2000円~3000円くらい。
水野氏:
なんでそう安いのか……。
上田氏:
その話も、取材しましたけれども、作業員の多くは、東京電力から数えると、5次請けとか6次請けとか7次請け。
水野氏:
下請けの構造が、何次にも重なってるんですね。
上田氏:
そうなんです。
そういった構造になっていて、その会社に雇われてますから、間を抜かれるわけですね。
中間搾取がある。
これは、前回の取材で判ったことだったんですけれども、それで結局、下の下の方の現場の作業員の方のところまでいくと、日当が下がってしまうんです。
調査した弁護士さんに聞くと、東京電力が元請に支払う日当は、一人当たり7万円、というケースもあるんだそうですけれども、
下請けは、酷いと20次請け、というところまで確認されているケースもありまして、93%がピンハネされるケースもあったと……。
水野氏:
20次請け!
ピンハネされてる方が、93%?
上田氏:
そうです。
水野氏:
残り7%!
上田氏:
ですから、7万円、というスタートでいっても、現場作業員が受け取る日当は、7000円とか1万円とか、そういった額になるんですね。
ですから、1か月、20日で働いても、20万円とか25万円。
ここから、住居費、光熱費を出す。
そして今度は、自炊しなきゃいけないとか、そういった条件になってきますと、なかなかやっぱり大変と……。
水野氏:
いや、それはやっていけないですよ。
上田氏:
という話なんですよね、はい。
どうして、この宿代が、急に打ち切られたのか、理由を、ある作業員の方に聞きました。
―――――――――――
作業員D:
結局、なんでそんなふうになったかっていう背景は、10月から新しく、仕事の落札がスタートするっていうところやったんですけど、
請け負う仕事のベースが、グーンと下がったらしいんですよね。
安い賃金で落とさないと、かなり安い賃金で落とさないと、仕事が取れない。
その安い賃金で、仕事をとってしまうと、ようは、一次請けのところが、今まで出していた宿代とかを、払う余裕がなくなるという。
だから、「もう宿代払いませんから、後は2次請け、3次請けで、なんとかしなさいよ」っていうふうに、丸投げしたって感じ……。
―――――――――――
上田氏:
当初、事故の後は、緊急ということで、指名で仕事があった、ということだったんです。
東京電力からの指名で。
ところが、去年の夏ごろから、国のお金で仕事をする、ということにもなっていきますので、入札、という制度になりました。
去年の夏ごろから、入札が始まって、1年ちょっと経ってるわけですが、
この10月からの、仕事の落札価格が、下がったのではないかということなんですね。
自分が働いてる、会社の元請が、もし入札で負けてしまったら、仕事がなくなるし、
安い価格で競り落とす、ということになると、宿代が払えない、ということにつながる。
東京電力に聞くと、「入札価格については、ちょっと調査をする」、という話でした。
水野氏:
「調査をする」……。
上田氏:
元請の会社に聞くと、
「入札は適正に行われているし、不当に低いと、応札はしないです」、と話していました。
競争の原理が働いて、価格が下がってきているのかな、ということが考えられるわけですね。
水野氏:
平野さん、いかがですか?
平野氏:
調査すべきは、私は、東京電力じゃなくて、やっぱり行政ですよね。
労働条件の、過酷な変更っていう、いわゆる、肩に重くのしかかるという意味では。
水野氏:
労働行政を問わなきゃいけない。
平野氏:
そうです。
労働基準局というのが、当然あるはずなので、ここがやっぱり、監視の目を強めなければいけないんですが、
いろいろ聞いてても、そういうところが、実際機能してる気配がないですよね。
やっぱり、20次下請けという、酷いケース。
これはもう明らかに、労基法違反ですよ。
というのは、要するに、自分の契約してる人と、雇用の雇ってる先が、ころころ変わってるわけだから、雇用条件が守られてないわけですよね。
これはもう、摘発しなければならない、と私は思いますけどね。
水野氏:
そうした厳しい中で、働いている方たちの眼をとおして、じゃあ、福島第一原発は、今どうなのか?
上田氏:
はい。
1年半、凄まじい作業をしてきたわけで、今年の3月に、作業員の方が、どのような仕事をしてるのかを聞いたその音を、もう一度聞いていただこうと思うんですけれども、
どんな仕事をしてきたのか、二人の作業員の方に、聞いています。
―――――――――――
作業員E:
建屋の人間。
「あそこに走って、登っていって、あれ取ってきて」、とかそんな仕事です。
水処理。
「あそこにレバーあるやろ?走っていって、あのレバー開けてきて」、とかそんなんですよ。
そういうふうにしか、進められないんですよね。
放射能が高いんで。
みんなで入って、ワーってやりましょうっていうわけにはいかないんです。
漏れている、それを止めるとかってなると、無人の機械でいったりしてる。
要は、それの下準備をしたりとか、後片付けをしたりっていうことなんですけど、
線量が高い、仕事できる時間が20分、30分。
人が要る。
進まないですよね。
入れ替わり入れ替わりで。
ものっすごい、進歩は遅いと思います。
―――――――――――
上田氏:
ここは、お1人の方でした。
失礼しました。
この3月で、この話だったわけです。
そして、事故から9か月を過ぎた12月の16日に、野田総理が、福島第一原発の事故の、収束を宣言した。
この時どう感じたのかも、3月に聞いています。
こちらをお聞きください。
―――――――――――
作業員F:
なんぼ収束宣言したっていうけど、なんか収束収束っていっても、やっぱ現場に入っとる人間からしたら、ほんまにこれ、収束しとんのか……怪しい。
来てから見とるけど、中身はなんら変わりはない。
変わらん。何も変わってない。現場は、周り何も変わってない。
―――――――――――
作業員G:
いや、何を言うてるんやろうと。
何をもって収束なのかっていうのを、まず聞きました。
収束っていうのは、やっぱり、「もう大丈夫ですよ」ってことじゃないですか。
「ここから先は、放射能は漏れることもないですし、あとは、改善に向かって、進んでいくだけですよ」っていうことでしょ?
収束っていうのは。
全然ですからね。
「ステップ1からステップ2になった」とか言ってますけども、何一つ変わってないですよね。
今日も、放射能出続けてますし、今日も何百人、何千人という作業員が、被曝してますから。
何にも変わってないですよ。
―――――――――――
上田氏:
という、これが、半年前に聞いた状態だったわけですが、では、今どうなのか、ということをお聞きいただきます。
こちらです。
―――――――――――
作業員H:
建屋にちょっと、銅板のフタしたりとかしだしてるんで、ちょっと離れた免震棟とか、外であるっていうのは、多少は、線量は下がってるんですけど、
でも、未だに、建屋で仕事をする人、汚染水の仕事をする人っていうのは、最初の頃と、線量全く変わってないですからね。
休憩室とかで、一緒になるでしょ。
仲良くなって、線量計のAPDを、見せてきたりするんですよ。
「15分でこれや」
ってパッと見せたら、『0.5』とか出てる、15分で。
『0.5ミリ』
上田氏:
ミリですか!?
作業員H:
30分働くと、1ミリですよ。
上田氏:
えー!
作業員H:
「俺、こんなんやから」
「いつまで働くんですか?」
「いや、これ1か月もたない」
上田氏:
そうですよね……。
作業員H:
そういうとこが、未だに、1か月で帰って、次の人が来てって、それを繰り返してるんですよね。
―――――――――――
水野氏:
えぇ!この数字の意味、教えてください。
上田氏:
「30分で1ミリ」、という話がありました。
これ、一般の人が許される、被曝の上限っていうのは、1年間に1ミリ。
作業員の人でも、年間20ミリシーベルトなんですね。
それを、一般の人が許されるのが、30分でいってしまう。
水野氏:
1年分を、30分でこの方、達してしまう!?
上田氏:
1日30分働いても、20日しか働けない量、ということになります。
水野氏:
はぁ……。
今もこんな状況……平野さん?
平野氏:
はい。
もう本当に、健康障害が気になるんですけども、気の遠くなるような作業ですよね。
廃炉に向けて、20年、30年。
本当に、こういう労働者の方を、確保できるのかなと、これだけね、健康障害心配される。
もう、大量の人々が要るわけですよ。
ここらへんの目途は、全然たってないと思うんですよね。
水野氏:
これだけ厳しい環境に、相変わらずある、その中で働いてはるのに、労働条件だけは、悪くなっていってるって、ねぇ……。
上田氏:
はい。
そして次なんですが、不当な扱い。
今、「宿代が無くなる」「食事代が無くなる」っていう話をご紹介しましたけれども、
4月から見てますと、更に、他にも、こんなことがということが起こってましたので、その作業員の方の声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員I:
いつごろやったかな。
4月……ころかな。
2000円……やっぱ痛いですよね。月にしたらね、ほんとにね。
だから、うちら下請けの、その下に入ってるでしょ?
だから、強く言えないんですよね、やっぱね。
上からの命令だから、しょうがないですよね。
作業員J:
6月いっぱいですね。
「7月頭から下がります」っていうことやったんですけど。
上田氏:
それは、いくらくらい?
作業員J:
まぁ、自分らの会社で2000円。
1日2000円っていうことです。
上田氏:
1日2000円。
それは、一方的に、下げますって言ってきた?
作業員J:
そう。
それも、7月から下がりますっていうのを、7月入ってから言われたんですよ。
もう全員そうです。
一律、ようは、東電から支払われている金額が、下がったっていうことですよね。
上田氏:
もともと、大元から出るお金が、減ってしまってると?
作業員J:
そうです。
結局は、下がったもんで、1次請け・2次請けってあるんですけど、
いいところは、良い会社は、1次請け・2次請けが被ってくれて、作業員にまでいかないところもあったんですけど、少ないんですけどね。
ほとんどのところは、下げられた分は、作業員が負担するっていう感じで、下げられたって話ですね。
―――――――――――
上田氏:
春からの間で、皆さん、日当を2000円下げられている、という状況なんですね。
作業員の方に聞くと、
「線量が大きく下がったとか、燃料棒が片付いたとか、そういうんなら、日当が下がるっていうのもわかるかもしれない。
危険性が変わらないのに、賃下げになるっていうのは、ちょっと納得がいかない」
というふうに、皆さん怒ってました。
水野氏:
なんで今そうなるのか……。
上田氏:
はい。
地元で話を聞いてると、
「やっぱり、東京電力が苦しいのではないか。
そこからまず、出るお金が減ってしまっていて、それが、賃金に反映してるんじゃないか」っていう声が、多く聞かれました。
水野氏:
でも、作業してらっしゃる方にしたら、もうやりきれないでしょうね。
上田氏:
やはり、「使命感を感じて、福島に来てる」という方が非常に多いので、大変なお気持ちだということが判ります。
その、作業員の方の声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員K:
東電もね、やっぱり……なんて言うのかなぁ……けっこう、『使い捨て』、みたいな感じで考えてるなと思う。
……そうね、『使い捨て』だもんね。
―――――――――――
作業員L:
今は確かに、たくさんあるところはありますよ。
だから、値上げはする。
電気料金値上げはするわ、ボーナスは出るわ。
で、俺らはって言ったら、宿代は下げられるわ、食費は無くなるわ。
―――――――――――
作業員M:
いや、もう単純に、怒りを感じますよね。
一番しんどいときに、来たわけじゃないですか。
それも、「長いことやってもらうから」ってことで、上がることはあっても、下がることはないと思ってたんで。
「期間長いこと働いてくれてたら、当然、貴重な戦力になってくるんで、給料は上がっていきます」っていう話やったもんですから。
それで来たもんで、いきなり「下げますよ」って話になって、全く真逆の減少が起こったわけじゃないですか。
だから、正直ちょっと、本当に……どういうつもりやと思いますけどね。
その下の、人間の都合とか、全く考えてない。
行き当たりばったりじゃないですかね。
本当にこんなことで、本当にちゃんと直る、収束できるのかなとか、先に進むのかなって思うんですよ。
―――――――――――
上田氏:
急に言われたこともあって、次の仕事も無いですし、住むところも見つからないし、
そして、東京電力のこの待遇って、一体どうなんだろう?と、皆さん疑問に思ってらっしゃる、ということなんです。
最後になりますが、この1年半、原発の作業員を見てきたというのは、福島県の皆さんなんですね。
地元の宿の方だったり、お店の方だったりするわけなんですが、
そういった、原発の作業員の方に直接接してきた人の話も、聞いてきましたので、その方のお話をお聞きいただくんですが、
2分半ほど、ちょっと長いんですけど、お二人の、お店をやってらっしゃる方、続けてお二人の声を、お聞きください。
―――――――――――
女性A:
馴染みのお客さんが、やっぱり去っていくっていうのは、寂しいですよ。
ほんっとに、よくやってくださったと思いますし、?????。
知らない土地に来てね。
だから、電話で、お子さんとか奥さんからかかってきて、お話してる顔なんか、本当に嬉しそうだしね。
本当に早く、原発のほう直って、早く自宅に戻してあげたいなって思いましたね。
中にはもう、
「福島県のために、子供たちのために、頑張んなきゃなんない。おいらがやらなきゃ誰がやるんだ」
っていう、
すごい強い気持ちで来てる方いらっしゃるんで、びっくりしましたね。
「妻には止められたんだけど、福島救わなきゃならないから。『小さな子供どうすんだ』って言って、そして、納得してもらって来たんだ」
っていう方も、何人かいました。
ありがたいことですよ。
―――――――――――
女性B:
でも、だんだん、東電の体質が変わってきたっていうか、そんなにやりきれなくなってきてるんだろうけど、
作業員の人たちも、お金はそんなに貰ってないだろうし、被曝するだけ損する感じだから、帰るのも仕方がないと思う。
だけど、やっぱり福島県民だったら、あそこを片づけてもらわなくちゃいけないんだから、未だに、誰も見に行けないわけでしょ、燃料棒のあるところ。
それなのに、収束なんかしてないのに、収束してるっていう……。
『福島を元気に』なんて、元気だよ。
そりゃ、ここで暮らす人は、覚悟をもって生きてんだから、元気に暮らしてるよ。
だけど、それはね……毎日、元気無くは暮らせないのよ、人は、笑わなくちゃいけないし、食べなきゃいけないし。
だから、みんなそれぞれ、元気で生きてるけど、決して、収束とか、安全でも安心でもないだろうし、
外に向かって、「安全だから」「安心だから来てください」って言ったところで、自分たちだって、地元の不安を、いつも持ってるわけなんだしさ。
……人が居なくなるのは、大変っちゃ大変だけど、しょうがないとも思うけど……。
でも、東電も国も、もっと考えてやんなきゃいけないことなのかな、とも思うけどね。
―――――――――――
上田氏:
「作業員の方には、もう少し手厚くしてほしい」と???てらっしゃったというのが、今の方でした。
原発について考えるとき、なかなか、作業員の話は出てこないので。
水野氏:
そうなんですよ、ほとんど今や、出てこないんですよ。
上田氏:
こういう状況で働いてる方に、支えられているということを、どこか考えていただきたいと。
水野氏:
今も支えられてるし、これからもずーっと、支えられる以外には、もう無いんですよね。
道がね、日本にはね。或いは世界にはね……。
しかしながら、「私ら『使い捨て』ですわ」、という作業員の方の声は、私は忘れられないですね。
上田氏:
ちょっと、あまりにも、待遇が悪くなっていきすぎるので、本当に僕も聞いていて、どうしていいんだろうと……。
中には、「これをあなたに話して、僕らはなんとかなるんですか!?」と。
水野氏:
あぁ……。上田さんに、「今しゃべるけど、それがどないなんねん!」って、ものすごく絶望してらっしゃる想いなわけですね。
上田氏:
はい。
水野氏:
今まで、下請け構造の中で、声を挙げられなかった、今も挙げられない。
で、上田さんに、やっとの思いで、しゃべってくださってると思うんですけども、
その声を、なんとかこうやって、『報道するラジオ』で、皆さんにお伝えすることができました。
ただ、これが、サーっと流れていくだけだと、それこそ作業員の方は、「それはどないなってん!」って、余計絶望なさるかもしれません。
上田氏:
できるだけ多くの方に、考えていただきたいです。
水野氏:
聞いていただいた方が、どう受け止めてくださるか、そして何をこれからどうするべきかって、考えていただかないことには……。
これ、出口が見えないんですね……はぁ……。
平野さん、ほんっとうに、過酷な状況の中でみなさんがいるということを、お伝えしました。
平野氏:
そうですね。
7日にね、首相が原発に行く予定なんですね、確か。
こういう現象を、本当に見る気があるのかどうか、
本当に、セレモニーで終わって、サッと帰ったんでは、何もこの方々の助けにもならないし、行く意味もないわけですよね。
水野氏:
そこは厳しく、私たちは見なきゃいけないですし。
上田さん、ずっと続けて取材するってことの意味を、今日、私は教えられたような気がしますので、また報告を待っております。
上田崇順(たかゆき)アナウンサーでした。
* * *
水野氏:
今日から始まりました『報道するラジオ』、平野さん、この原発のことについてですね、皆さんが、いろいろと、感想を送ってきてくださいました。
ご紹介します。
『福島の原発で働く人たちの、賃金や待遇が、どんどん悪くなっていくなんて、本当におかしなことですね。
この方達が、頑張ってくれていることを、忘れてはいけないし、なんとかならないか、という思いです。
震災の予算が、ほかに使われている現実があるなら、ここに使ってよと。
お金の使い方は、どうなってるんだ?』
というお話ですね。
平野さん、どう感じますか?
平野氏:
そうですね。
上田さんのリポート、『足で書く』という言葉がありますけど、ほんとうによく取材されて、地道な作業の連続だったんですけど、
今日のテーマである、ジャーナリズムということの中に、『真実は細部に宿る』、という言葉があるんですけど……。
水野氏:
『真実は、細部(小さなところ、細かなところ)に宿る』
平野氏:
『現場には、伝えるべき真実の断片がある』とも言われてね、それを寄せ集めるのが、僕らの記者の仕事である。
水野氏:
『真実の断片』、ですよね。
平野氏:
今日、水島さんも、ずっと現場、現場っていうのにこだわって、言われたんですけど、
やはり、現場に真実……に近いものがあって、それを、全体像として、我々がいかにして指し示すことができるかってことが、まさに問われてる、と思うんですよね。
お二人とも、それを本当、まさに、実践された上田さんも水島さんも。
我々に、こういう現実を示してくれる、という意味で、今日は、非常に意義のある、お話を聞けたなと思いますね。
復興予算が、別のところに使われている、というのは、まさにその通りで、
沖縄のなんか、公共事業に使われたり、有り得ない、福島以外のところに使われている、というニュースが、最近流れてきています。
本当に、政治はどうなっているんだろうと、既得権益の擁護ばっかりに収れんしていって、
もう、この事故の過酷さを、忘れたのではないか、と思わせるくらいです。
水野氏:
忘れてませんよ、ほんまにみんな。
だけど、忘れたかのように振る舞う政治家がいると、だんだん、そっちに流れちゃうという危険性って、本当にはらんでると思うんですね。
リスナーの方は、
『想像してましたけど、現場は、何も進んでないということが、よくわかりました。
なんで、元請だけが潤って、下請けにしわ寄せが来るんですか?』
その恐ろしさは、情報が外に出てこない、ということにも繋がってる、と思いますね。
今日から始まりました『報道するラジオ」。
来週の金曜日は、夜9時からお送りする予定です。
平野さん、ありがとうございました。
【以上】
失礼します。
【追記】
各府省への政策に関する、意見・要望を出しました。
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
https://www.e-gov.go.jp/policy/servlet/Propose
【意見内容】
福島第一原発事故の作業員待遇について、意見を申し上げさせて頂きます。
事故発生から1年半以上経ち、現場作業員の方々の待遇に変化があったことが、報道されています。
時給が2000円減額、宿代・食事代補助が廃止され、経済的な待遇が悪化している、とのこと。
6次下請け、7次下請けも当たり前で、その搾取率は90%を超えるとも。
この現状を調査し、早急に改善していただきたいと思います。
東京電力で、下請けの管理ができない、ということであれば、
福島第一原発に関してだけでも、国が、作業員を募集し、各会社に派遣する、という形が取れないものでしょうか。
そうでもしないと、多重下請けの仕組みは、変わらないのではないでしょうか。
どうか、現場作業員の方々の待遇を、見直してください。
私たちの税金、復興予算があるなら、そちらにも回るよう、なにとぞご対応願います。
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
【送信先省庁】
内閣官房、内閣府、復興庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省
↑以上、転載おわり
これは、毎日放送の『たね蒔きジャーナル』が急に廃止ということになり、その後立ち上げられた番組です。
以前から、この原発作業員の方々を取り巻く、大変厳しい環境というのを、事細かに取材してくださっていて、
わたしも一度、その内容を、書き出したことがありました。
今の日本が、とりあえず無事に、人によっては、まるで以前と全く変わりなく暮らせる国であり続けていられるのも、
この、非常に劣悪なだけでなく、実際に、膨大な被ばくという、命に関わる健康被害を前提にした作業をしてくださっている、
原発事故現場の収束作業に関わってくださっている、たくさんの作業員の方々のおかげなのに、
その方々の、作業環境はもちろんのこと、仕事外の暮らしの環境までもが、信じられないほどに酷いものだということを、
わたしはもっともっと、日本中の人達に知ってもらい、自分のこととして考えてもらいたいと、心からそう思っています。
↓以下、転載はじめ
2012年10月06日03:22
10月5日【内容起こし】
原発作業員-その後:
「宿代・食事代が出なくなった」「東電にしたら俺らは『使い捨て』」「日当2000円減額」@報道するラジオ
※この記事は、
★3月5日 【内容起こし】たね蒔きジャーナル:福島原発作業員の方々の声【現状・被曝管理・賃金・待遇……届かない声】
★9月19日 【内容起こしUP】原発作業員に聞く 福島第一原発事故の真実@スーパーニュースアンカーより「造血幹細胞知らない」「最期はがんで死ぬ」
★2月23日BBC放送"This World 2012 Inside the Meltdown"のご紹介などに関連しています。
たね蒔きジャーナルが終了し、水野アナウンサーがメインとなっている、『報道するラジオ』が始まりました。
たね蒔きジャーナルと、ほぼ同じような印象を受けたのですが、今後はどうなっていくのか、よく判りません。
事故を経て1年半の、福島第一原発の、作業員の方々の待遇は、こういう状況だそうです。
どうぞ。
20121005 報道するラジオ 「原発作業員が語る福島第一原発のその後」
【以下、お時間の無い方のために、内容を起こしています。ご参考まで】
水野氏:
本日始まりました『報道するラジオ』、大きく二つのテーマを取り上げていきます。
今日二つ目のテーマは、『原発作業員-その後』でございます。
福島第一原発の事故は、まだ全く収束していない状態で、実態としては、平野さん、多くの作業員の方々が、過酷な環境で、働き続けていはるわけですよね。
平野氏:
そうですね。
水野氏:
ただ、その様子は、ちっとも伝わってきません。
私たちは、ここに引っ掛かりたいと思います。
事故から1年半経った今、福島第一原発の作業員に、何が起こっているのか、上田崇順(たかゆき)アナウンサーが、取材してまいりました。
上田さんこんばんは。
上田氏:
こんばんは。よろしくお願いします。
1年半経ちました春にも、取材をしたんですけれども、
この9月の終わりに、全国から来た作業員が多く宿泊している、福島第一原発から40㎞離れた、福島県のいわき市を取材してきました。
東京電力によると、今でも、福島第一原発で、毎日3000人の人が、事故収束に向けて、危険な作業に携わっているということです。
水野氏:
3000人の方たち。はい。
上田氏:
8月末時点で、事故のあと、2万3700人の人が、福島第一原発の中に入った、ということなんだそうです。
さっそく、その作業員の方が泊まっている、宿を訪ねてみました。
こんな音がありました。
―――――――――――
《ビリビリビリッ(何かを破る音)》
作業員A:
これ、持っていくんか……<苦笑>
―――――――――――
上田氏:
ビリビリっという音がしましたけれども、これは、ガムテープで段ボールをとめて、梱包している様子なんですけど、
作業員の方が、宿から、引っ越し作業をしていたんですね。
水野氏:
引っ越しですか?
上田氏:
はい。
作業員の皆さんは、雇われている会社が用意した、宿に泊まっています。
旅館やホテルが、借り上げられているんですね。
遠方から来ている作業員は、1泊2食付、という条件で来ています。
そこから、バスに乗って、みんなで福島第一原発に通う、という形なんですが……。
ところが、9月の終わりに取材していますと、多くの作業員が、宿泊している宿を、出ようとしています。
取材できた宿では、もう、半分もの原発作業員が、出ていってしまった……。
水野氏:
半分もの人たちが、出ていっちゃう……?
上田氏:
はい。
そして、「どうして宿舎を引き払うんですか?」というふうに、聞くことができましたので、その声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員B:
9月になって、もう、9月も入ってからですよ。
結局、自分たちの所属してる会社の人から、メールが来たんですよ。
で、メールが、「あれ?珍しいな。電話じゃなくてメールってなんでやろ?」って見てみたら、
『9月いっぱいで、宿代がもう出なくなります。なので、帰ってきてください』
っていうメールが来たんですよ。
「え!!」っと思って、電話しますよね。
そしたら、どうやら、
「元請のほうから言われたんやけど、9月いっぱいで、宿代が出せなくなる。
宿は、全員退去してください。
それでも残ってやりたいんやったら、皆さん、自分たちで、福島でアパートなり部屋なりを借りて……やったら雇います」
っていうことやったらしいんですよ。
―――――――――――
上田氏:
はい。
出ていかなければならない状況に、なったわけですよね。
「自分たちで家を見つけるんだったら、続けて仕事をしてほしい」、というようなことで……。
水野氏:
そんなこと、急に言われても……。
上田氏:
そうなんですよ。
当初の約束と、当然変わってきますよね。
そして皆さん、「大変困る」ということなので、別の作業員の方に、どうなるのか聞きました。
―――――――――――
作業員C:
俺はもう、宿代カット、要するに衣食住……衣は自分のあれですから、食住がなくなっちゃったわけですよね。
単純に考えて、宿代と食事代で、1泊2食で5000円だとしますよね。
それが30日ですから、15万ですよね。
その15万っていうのが、無くなったんですよ……。
かなりの痛手ですよ。
今まで……貰ってた給料から、食と住を引かなくちゃいけないんですから。
残ったものっていうのは、本当に、微々たるものじゃないですかね。
―――――――――――
水野氏:
15万円分、自分の方でなんとかしないといけない、ということになりますよね。
上田氏:
そうなんです。
単身の人というのは、もともと住んでいたアパートを引き払って、福島に来ているんですね。
それは、仕事が、もともと長期になる、事故の収束には時間がかかる、ということを聞いてきているから、
「住まないところの家賃を払うのは、もったいない」と。
当然、急に無いと言われたら、帰るところも無いですよね。
福島で、家を探すというのも難しい。
家族のある人は、宿代を出してもらえるからこそ選んだ、という仕事なんですよね。
でないとやっぱり、家族のいる分の生活費と、自分の分と、二重にかかってきて暮らしていかなければいけないと。
そもそも、作業員の給料って安いんです。
前回の取材では、1日働いて、7000円から1万2000円~3000円くらい。
水野氏:
なんでそう安いのか……。
上田氏:
その話も、取材しましたけれども、作業員の多くは、東京電力から数えると、5次請けとか6次請けとか7次請け。
水野氏:
下請けの構造が、何次にも重なってるんですね。
上田氏:
そうなんです。
そういった構造になっていて、その会社に雇われてますから、間を抜かれるわけですね。
中間搾取がある。
これは、前回の取材で判ったことだったんですけれども、それで結局、下の下の方の現場の作業員の方のところまでいくと、日当が下がってしまうんです。
調査した弁護士さんに聞くと、東京電力が元請に支払う日当は、一人当たり7万円、というケースもあるんだそうですけれども、
下請けは、酷いと20次請け、というところまで確認されているケースもありまして、93%がピンハネされるケースもあったと……。
水野氏:
20次請け!
ピンハネされてる方が、93%?
上田氏:
そうです。
水野氏:
残り7%!
上田氏:
ですから、7万円、というスタートでいっても、現場作業員が受け取る日当は、7000円とか1万円とか、そういった額になるんですね。
ですから、1か月、20日で働いても、20万円とか25万円。
ここから、住居費、光熱費を出す。
そして今度は、自炊しなきゃいけないとか、そういった条件になってきますと、なかなかやっぱり大変と……。
水野氏:
いや、それはやっていけないですよ。
上田氏:
という話なんですよね、はい。
どうして、この宿代が、急に打ち切られたのか、理由を、ある作業員の方に聞きました。
―――――――――――
作業員D:
結局、なんでそんなふうになったかっていう背景は、10月から新しく、仕事の落札がスタートするっていうところやったんですけど、
請け負う仕事のベースが、グーンと下がったらしいんですよね。
安い賃金で落とさないと、かなり安い賃金で落とさないと、仕事が取れない。
その安い賃金で、仕事をとってしまうと、ようは、一次請けのところが、今まで出していた宿代とかを、払う余裕がなくなるという。
だから、「もう宿代払いませんから、後は2次請け、3次請けで、なんとかしなさいよ」っていうふうに、丸投げしたって感じ……。
―――――――――――
上田氏:
当初、事故の後は、緊急ということで、指名で仕事があった、ということだったんです。
東京電力からの指名で。
ところが、去年の夏ごろから、国のお金で仕事をする、ということにもなっていきますので、入札、という制度になりました。
去年の夏ごろから、入札が始まって、1年ちょっと経ってるわけですが、
この10月からの、仕事の落札価格が、下がったのではないかということなんですね。
自分が働いてる、会社の元請が、もし入札で負けてしまったら、仕事がなくなるし、
安い価格で競り落とす、ということになると、宿代が払えない、ということにつながる。
東京電力に聞くと、「入札価格については、ちょっと調査をする」、という話でした。
水野氏:
「調査をする」……。
上田氏:
元請の会社に聞くと、
「入札は適正に行われているし、不当に低いと、応札はしないです」、と話していました。
競争の原理が働いて、価格が下がってきているのかな、ということが考えられるわけですね。
水野氏:
平野さん、いかがですか?
平野氏:
調査すべきは、私は、東京電力じゃなくて、やっぱり行政ですよね。
労働条件の、過酷な変更っていう、いわゆる、肩に重くのしかかるという意味では。
水野氏:
労働行政を問わなきゃいけない。
平野氏:
そうです。
労働基準局というのが、当然あるはずなので、ここがやっぱり、監視の目を強めなければいけないんですが、
いろいろ聞いてても、そういうところが、実際機能してる気配がないですよね。
やっぱり、20次下請けという、酷いケース。
これはもう明らかに、労基法違反ですよ。
というのは、要するに、自分の契約してる人と、雇用の雇ってる先が、ころころ変わってるわけだから、雇用条件が守られてないわけですよね。
これはもう、摘発しなければならない、と私は思いますけどね。
水野氏:
そうした厳しい中で、働いている方たちの眼をとおして、じゃあ、福島第一原発は、今どうなのか?
上田氏:
はい。
1年半、凄まじい作業をしてきたわけで、今年の3月に、作業員の方が、どのような仕事をしてるのかを聞いたその音を、もう一度聞いていただこうと思うんですけれども、
どんな仕事をしてきたのか、二人の作業員の方に、聞いています。
―――――――――――
作業員E:
建屋の人間。
「あそこに走って、登っていって、あれ取ってきて」、とかそんな仕事です。
水処理。
「あそこにレバーあるやろ?走っていって、あのレバー開けてきて」、とかそんなんですよ。
そういうふうにしか、進められないんですよね。
放射能が高いんで。
みんなで入って、ワーってやりましょうっていうわけにはいかないんです。
漏れている、それを止めるとかってなると、無人の機械でいったりしてる。
要は、それの下準備をしたりとか、後片付けをしたりっていうことなんですけど、
線量が高い、仕事できる時間が20分、30分。
人が要る。
進まないですよね。
入れ替わり入れ替わりで。
ものっすごい、進歩は遅いと思います。
―――――――――――
上田氏:
ここは、お1人の方でした。
失礼しました。
この3月で、この話だったわけです。
そして、事故から9か月を過ぎた12月の16日に、野田総理が、福島第一原発の事故の、収束を宣言した。
この時どう感じたのかも、3月に聞いています。
こちらをお聞きください。
―――――――――――
作業員F:
なんぼ収束宣言したっていうけど、なんか収束収束っていっても、やっぱ現場に入っとる人間からしたら、ほんまにこれ、収束しとんのか……怪しい。
来てから見とるけど、中身はなんら変わりはない。
変わらん。何も変わってない。現場は、周り何も変わってない。
―――――――――――
作業員G:
いや、何を言うてるんやろうと。
何をもって収束なのかっていうのを、まず聞きました。
収束っていうのは、やっぱり、「もう大丈夫ですよ」ってことじゃないですか。
「ここから先は、放射能は漏れることもないですし、あとは、改善に向かって、進んでいくだけですよ」っていうことでしょ?
収束っていうのは。
全然ですからね。
「ステップ1からステップ2になった」とか言ってますけども、何一つ変わってないですよね。
今日も、放射能出続けてますし、今日も何百人、何千人という作業員が、被曝してますから。
何にも変わってないですよ。
―――――――――――
上田氏:
という、これが、半年前に聞いた状態だったわけですが、では、今どうなのか、ということをお聞きいただきます。
こちらです。
―――――――――――
作業員H:
建屋にちょっと、銅板のフタしたりとかしだしてるんで、ちょっと離れた免震棟とか、外であるっていうのは、多少は、線量は下がってるんですけど、
でも、未だに、建屋で仕事をする人、汚染水の仕事をする人っていうのは、最初の頃と、線量全く変わってないですからね。
休憩室とかで、一緒になるでしょ。
仲良くなって、線量計のAPDを、見せてきたりするんですよ。
「15分でこれや」
ってパッと見せたら、『0.5』とか出てる、15分で。
『0.5ミリ』
上田氏:
ミリですか!?
作業員H:
30分働くと、1ミリですよ。
上田氏:
えー!
作業員H:
「俺、こんなんやから」
「いつまで働くんですか?」
「いや、これ1か月もたない」
上田氏:
そうですよね……。
作業員H:
そういうとこが、未だに、1か月で帰って、次の人が来てって、それを繰り返してるんですよね。
―――――――――――
水野氏:
えぇ!この数字の意味、教えてください。
上田氏:
「30分で1ミリ」、という話がありました。
これ、一般の人が許される、被曝の上限っていうのは、1年間に1ミリ。
作業員の人でも、年間20ミリシーベルトなんですね。
それを、一般の人が許されるのが、30分でいってしまう。
水野氏:
1年分を、30分でこの方、達してしまう!?
上田氏:
1日30分働いても、20日しか働けない量、ということになります。
水野氏:
はぁ……。
今もこんな状況……平野さん?
平野氏:
はい。
もう本当に、健康障害が気になるんですけども、気の遠くなるような作業ですよね。
廃炉に向けて、20年、30年。
本当に、こういう労働者の方を、確保できるのかなと、これだけね、健康障害心配される。
もう、大量の人々が要るわけですよ。
ここらへんの目途は、全然たってないと思うんですよね。
水野氏:
これだけ厳しい環境に、相変わらずある、その中で働いてはるのに、労働条件だけは、悪くなっていってるって、ねぇ……。
上田氏:
はい。
そして次なんですが、不当な扱い。
今、「宿代が無くなる」「食事代が無くなる」っていう話をご紹介しましたけれども、
4月から見てますと、更に、他にも、こんなことがということが起こってましたので、その作業員の方の声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員I:
いつごろやったかな。
4月……ころかな。
2000円……やっぱ痛いですよね。月にしたらね、ほんとにね。
だから、うちら下請けの、その下に入ってるでしょ?
だから、強く言えないんですよね、やっぱね。
上からの命令だから、しょうがないですよね。
作業員J:
6月いっぱいですね。
「7月頭から下がります」っていうことやったんですけど。
上田氏:
それは、いくらくらい?
作業員J:
まぁ、自分らの会社で2000円。
1日2000円っていうことです。
上田氏:
1日2000円。
それは、一方的に、下げますって言ってきた?
作業員J:
そう。
それも、7月から下がりますっていうのを、7月入ってから言われたんですよ。
もう全員そうです。
一律、ようは、東電から支払われている金額が、下がったっていうことですよね。
上田氏:
もともと、大元から出るお金が、減ってしまってると?
作業員J:
そうです。
結局は、下がったもんで、1次請け・2次請けってあるんですけど、
いいところは、良い会社は、1次請け・2次請けが被ってくれて、作業員にまでいかないところもあったんですけど、少ないんですけどね。
ほとんどのところは、下げられた分は、作業員が負担するっていう感じで、下げられたって話ですね。
―――――――――――
上田氏:
春からの間で、皆さん、日当を2000円下げられている、という状況なんですね。
作業員の方に聞くと、
「線量が大きく下がったとか、燃料棒が片付いたとか、そういうんなら、日当が下がるっていうのもわかるかもしれない。
危険性が変わらないのに、賃下げになるっていうのは、ちょっと納得がいかない」
というふうに、皆さん怒ってました。
水野氏:
なんで今そうなるのか……。
上田氏:
はい。
地元で話を聞いてると、
「やっぱり、東京電力が苦しいのではないか。
そこからまず、出るお金が減ってしまっていて、それが、賃金に反映してるんじゃないか」っていう声が、多く聞かれました。
水野氏:
でも、作業してらっしゃる方にしたら、もうやりきれないでしょうね。
上田氏:
やはり、「使命感を感じて、福島に来てる」という方が非常に多いので、大変なお気持ちだということが判ります。
その、作業員の方の声を、お聞きください。
―――――――――――
作業員K:
東電もね、やっぱり……なんて言うのかなぁ……けっこう、『使い捨て』、みたいな感じで考えてるなと思う。
……そうね、『使い捨て』だもんね。
―――――――――――
作業員L:
今は確かに、たくさんあるところはありますよ。
だから、値上げはする。
電気料金値上げはするわ、ボーナスは出るわ。
で、俺らはって言ったら、宿代は下げられるわ、食費は無くなるわ。
―――――――――――
作業員M:
いや、もう単純に、怒りを感じますよね。
一番しんどいときに、来たわけじゃないですか。
それも、「長いことやってもらうから」ってことで、上がることはあっても、下がることはないと思ってたんで。
「期間長いこと働いてくれてたら、当然、貴重な戦力になってくるんで、給料は上がっていきます」っていう話やったもんですから。
それで来たもんで、いきなり「下げますよ」って話になって、全く真逆の減少が起こったわけじゃないですか。
だから、正直ちょっと、本当に……どういうつもりやと思いますけどね。
その下の、人間の都合とか、全く考えてない。
行き当たりばったりじゃないですかね。
本当にこんなことで、本当にちゃんと直る、収束できるのかなとか、先に進むのかなって思うんですよ。
―――――――――――
上田氏:
急に言われたこともあって、次の仕事も無いですし、住むところも見つからないし、
そして、東京電力のこの待遇って、一体どうなんだろう?と、皆さん疑問に思ってらっしゃる、ということなんです。
最後になりますが、この1年半、原発の作業員を見てきたというのは、福島県の皆さんなんですね。
地元の宿の方だったり、お店の方だったりするわけなんですが、
そういった、原発の作業員の方に直接接してきた人の話も、聞いてきましたので、その方のお話をお聞きいただくんですが、
2分半ほど、ちょっと長いんですけど、お二人の、お店をやってらっしゃる方、続けてお二人の声を、お聞きください。
―――――――――――
女性A:
馴染みのお客さんが、やっぱり去っていくっていうのは、寂しいですよ。
ほんっとに、よくやってくださったと思いますし、?????。
知らない土地に来てね。
だから、電話で、お子さんとか奥さんからかかってきて、お話してる顔なんか、本当に嬉しそうだしね。
本当に早く、原発のほう直って、早く自宅に戻してあげたいなって思いましたね。
中にはもう、
「福島県のために、子供たちのために、頑張んなきゃなんない。おいらがやらなきゃ誰がやるんだ」
っていう、
すごい強い気持ちで来てる方いらっしゃるんで、びっくりしましたね。
「妻には止められたんだけど、福島救わなきゃならないから。『小さな子供どうすんだ』って言って、そして、納得してもらって来たんだ」
っていう方も、何人かいました。
ありがたいことですよ。
―――――――――――
女性B:
でも、だんだん、東電の体質が変わってきたっていうか、そんなにやりきれなくなってきてるんだろうけど、
作業員の人たちも、お金はそんなに貰ってないだろうし、被曝するだけ損する感じだから、帰るのも仕方がないと思う。
だけど、やっぱり福島県民だったら、あそこを片づけてもらわなくちゃいけないんだから、未だに、誰も見に行けないわけでしょ、燃料棒のあるところ。
それなのに、収束なんかしてないのに、収束してるっていう……。
『福島を元気に』なんて、元気だよ。
そりゃ、ここで暮らす人は、覚悟をもって生きてんだから、元気に暮らしてるよ。
だけど、それはね……毎日、元気無くは暮らせないのよ、人は、笑わなくちゃいけないし、食べなきゃいけないし。
だから、みんなそれぞれ、元気で生きてるけど、決して、収束とか、安全でも安心でもないだろうし、
外に向かって、「安全だから」「安心だから来てください」って言ったところで、自分たちだって、地元の不安を、いつも持ってるわけなんだしさ。
……人が居なくなるのは、大変っちゃ大変だけど、しょうがないとも思うけど……。
でも、東電も国も、もっと考えてやんなきゃいけないことなのかな、とも思うけどね。
―――――――――――
上田氏:
「作業員の方には、もう少し手厚くしてほしい」と???てらっしゃったというのが、今の方でした。
原発について考えるとき、なかなか、作業員の話は出てこないので。
水野氏:
そうなんですよ、ほとんど今や、出てこないんですよ。
上田氏:
こういう状況で働いてる方に、支えられているということを、どこか考えていただきたいと。
水野氏:
今も支えられてるし、これからもずーっと、支えられる以外には、もう無いんですよね。
道がね、日本にはね。或いは世界にはね……。
しかしながら、「私ら『使い捨て』ですわ」、という作業員の方の声は、私は忘れられないですね。
上田氏:
ちょっと、あまりにも、待遇が悪くなっていきすぎるので、本当に僕も聞いていて、どうしていいんだろうと……。
中には、「これをあなたに話して、僕らはなんとかなるんですか!?」と。
水野氏:
あぁ……。上田さんに、「今しゃべるけど、それがどないなんねん!」って、ものすごく絶望してらっしゃる想いなわけですね。
上田氏:
はい。
水野氏:
今まで、下請け構造の中で、声を挙げられなかった、今も挙げられない。
で、上田さんに、やっとの思いで、しゃべってくださってると思うんですけども、
その声を、なんとかこうやって、『報道するラジオ』で、皆さんにお伝えすることができました。
ただ、これが、サーっと流れていくだけだと、それこそ作業員の方は、「それはどないなってん!」って、余計絶望なさるかもしれません。
上田氏:
できるだけ多くの方に、考えていただきたいです。
水野氏:
聞いていただいた方が、どう受け止めてくださるか、そして何をこれからどうするべきかって、考えていただかないことには……。
これ、出口が見えないんですね……はぁ……。
平野さん、ほんっとうに、過酷な状況の中でみなさんがいるということを、お伝えしました。
平野氏:
そうですね。
7日にね、首相が原発に行く予定なんですね、確か。
こういう現象を、本当に見る気があるのかどうか、
本当に、セレモニーで終わって、サッと帰ったんでは、何もこの方々の助けにもならないし、行く意味もないわけですよね。
水野氏:
そこは厳しく、私たちは見なきゃいけないですし。
上田さん、ずっと続けて取材するってことの意味を、今日、私は教えられたような気がしますので、また報告を待っております。
上田崇順(たかゆき)アナウンサーでした。
* * *
水野氏:
今日から始まりました『報道するラジオ』、平野さん、この原発のことについてですね、皆さんが、いろいろと、感想を送ってきてくださいました。
ご紹介します。
『福島の原発で働く人たちの、賃金や待遇が、どんどん悪くなっていくなんて、本当におかしなことですね。
この方達が、頑張ってくれていることを、忘れてはいけないし、なんとかならないか、という思いです。
震災の予算が、ほかに使われている現実があるなら、ここに使ってよと。
お金の使い方は、どうなってるんだ?』
というお話ですね。
平野さん、どう感じますか?
平野氏:
そうですね。
上田さんのリポート、『足で書く』という言葉がありますけど、ほんとうによく取材されて、地道な作業の連続だったんですけど、
今日のテーマである、ジャーナリズムということの中に、『真実は細部に宿る』、という言葉があるんですけど……。
水野氏:
『真実は、細部(小さなところ、細かなところ)に宿る』
平野氏:
『現場には、伝えるべき真実の断片がある』とも言われてね、それを寄せ集めるのが、僕らの記者の仕事である。
水野氏:
『真実の断片』、ですよね。
平野氏:
今日、水島さんも、ずっと現場、現場っていうのにこだわって、言われたんですけど、
やはり、現場に真実……に近いものがあって、それを、全体像として、我々がいかにして指し示すことができるかってことが、まさに問われてる、と思うんですよね。
お二人とも、それを本当、まさに、実践された上田さんも水島さんも。
我々に、こういう現実を示してくれる、という意味で、今日は、非常に意義のある、お話を聞けたなと思いますね。
復興予算が、別のところに使われている、というのは、まさにその通りで、
沖縄のなんか、公共事業に使われたり、有り得ない、福島以外のところに使われている、というニュースが、最近流れてきています。
本当に、政治はどうなっているんだろうと、既得権益の擁護ばっかりに収れんしていって、
もう、この事故の過酷さを、忘れたのではないか、と思わせるくらいです。
水野氏:
忘れてませんよ、ほんまにみんな。
だけど、忘れたかのように振る舞う政治家がいると、だんだん、そっちに流れちゃうという危険性って、本当にはらんでると思うんですね。
リスナーの方は、
『想像してましたけど、現場は、何も進んでないということが、よくわかりました。
なんで、元請だけが潤って、下請けにしわ寄せが来るんですか?』
その恐ろしさは、情報が外に出てこない、ということにも繋がってる、と思いますね。
今日から始まりました『報道するラジオ」。
来週の金曜日は、夜9時からお送りする予定です。
平野さん、ありがとうございました。
【以上】
失礼します。
【追記】
各府省への政策に関する、意見・要望を出しました。
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
https://www.e-gov.go.jp/policy/servlet/Propose
【意見内容】
福島第一原発事故の作業員待遇について、意見を申し上げさせて頂きます。
事故発生から1年半以上経ち、現場作業員の方々の待遇に変化があったことが、報道されています。
時給が2000円減額、宿代・食事代補助が廃止され、経済的な待遇が悪化している、とのこと。
6次下請け、7次下請けも当たり前で、その搾取率は90%を超えるとも。
この現状を調査し、早急に改善していただきたいと思います。
東京電力で、下請けの管理ができない、ということであれば、
福島第一原発に関してだけでも、国が、作業員を募集し、各会社に派遣する、という形が取れないものでしょうか。
そうでもしないと、多重下請けの仕組みは、変わらないのではないでしょうか。
どうか、現場作業員の方々の待遇を、見直してください。
私たちの税金、復興予算があるなら、そちらにも回るよう、なにとぞご対応願います。
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
【送信先省庁】
内閣官房、内閣府、復興庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省
↑以上、転載おわり