敦賀 活断層判断 甘い建設審査のツケ
[東京新聞] 2012年12月11日
日本原子力発電(原電)敦賀原発(福井県敦賀市)の断層を調べた、原子力規制委員会の専門家チームが10日、
原子炉直下に活断層がある可能性が高いとして、クロの判定を下した。
敦賀原発の再稼働は、ほぼ不可能になり、建設当時の国の審査の甘さも浮かび上がった。(加藤裕治)
◆切れ込み
航空写真で敦賀半島の先端部を見ると、北西から原発の南東側にかけて、一直線に切れ込んでいるのが分かる。
「活断層があると学生でもわかる。何でこんな所に原発を建てたのか」。
専門家は口をそろえる。
これが、原発の東側約250メートルほどを走る、活断層「浦底断層」だ。
長さ35キロ余り。
その後の研究で、100キロにわたって連動し、1891(明治24)年10月に岐阜、愛知両県を襲った日本史上最大の内陸型地震「濃尾地震」(マグニチュード8)級の地震を起こす可能性も浮上した。
原電は、地形の不自然さを認めながら、「活断層ではない」と言い張り、規制機関の原子力安全委員会や旧原子力安全・保安院(いずれも廃止)は、その主張を追認してきた。
原電が、約4千年前という新しい時代に動いた活断層と認めたのは、2008年3月になってからだ。
◆怪しい溝
1、2両日に現地を調査した規制委のチームは、当初から、原発敷地内に明らかな活断層がある、敦賀原発の特殊性に着目。
さらに、これまで知られていなかった、別の活断層の存在を見抜いた。
怪しい地層のずれは、2号機の北約300メートルの試掘溝(トレンチ)で見つかった。
本来は、2号機直下を通る「D─1破砕帯」と、浦底断層の交わる点を確認するための溝だったが、
「嫌なものを掘り当ててしまった、と原電も困っていた」(チームの一人)。
このずれが、敦賀原発の運命を、事実上決めた。
10日の評価会合でも、この地層のずれが焦点となったが、チームの意見はあっという間に一致した。
「十数万年前以降に、地層が変形し、形は横にずれ、浦底断層に伴って活動─。これらが皆さんの共通したご意見と思いますが、よろしいですか」。
4人のメンバーの意見を聴いた後、規制委の島崎邦彦委員長代理が、こう意見を集約し、すんなり結論が出た。
◆いけにえ
規制委の田中俊一委員長はこの日、「個人的見解」と前置きしつつ、敦賀原発の再稼働は認められないとの考えを示し、この方針は12日にも、規制委として正式決定する。
初めて、運転ストップを求める規制委の決定になる。
ただ、注意すべきは、敦賀原発をいけにえにする形で、他の原発を生かす道につながらないか、という点だ。
特に、敦賀1号機は、1970年3月に営業運転を開始し、動いている原発としては日本で最も古い。
運転期間は既に40年を超えており、新たな活断層問題が浮上しなくても、運転期間を40年に制限する規定に引っかかり、廃炉を迫られることは目に見えていた。
最も運転を止めやすい原発ともいえ、逆に関西電力大飯原発(福井県おおい町)は、稼働中なのに、活断層の決め手がなく、いまだに結論が出ず、規制委の限界も見える。
活断層問題を訴えてきた東洋大学の渡辺満久教授(変動地形学)は、
「国内の原子力施設で、活断層は大丈夫だろうといえるのは、九州電力玄海原発(佐賀県)くらい。より詳しい調査が必要なのではないか」と語っている。