わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

野焼き(縄文土器の焼成)1

2009-11-15 14:38:47 | 縄文土器の話、骨董の話
土器は 粘土で形を造った後、充分に乾燥させてから、焼いて完成と成ります。

縄文時代には、窯がなかったので、「野焼き」といわれる焼成方法で、焼き上げました。

 野焼きに付いて、考えて見たいと思います。

 1) 野焼きの温度

    熱を閉じ込める窯が、有りませんので、温度は高くなりません。大体600℃~800℃程度が、

    一般的で、部分的には、1000度位まで、昇温したかも知れません。

  ・ 粘土は、560~570℃位で、結晶水が抜け、質的変化を起し、水を加えても、元の粘土に、

    戻れなく成ります。それ故、土器として使用するには、600℃以上で、焼く必要が有ります。

    現在の陶芸での素焼は、一般に、700~800℃で行います。

    土器の強度は、素焼程度だと、思って下さい。

  ・ 温度が高ければ、高い程、土器の強度は増し、壊れ難くなります。当時の人は、当然その事を、

    知っていたはずです。温度が高くなる方法を、色々工夫したに違いありません。

 2) 野焼きの時間

  ① 野焼きの作業は、ほぼ1日仕事でした。日の出から日没まで掛かり、場合に拠っては、

    夜中や、翌日まで掛かった可能性も、あります。

    その間、燃料を補給し、良く燃える様に、棒で中を、かき混ぜたり、不用な灰を、取り除いたり、

    火の番をする事以外に、かなりの仕事量が、有りました。

  ② 最初の400℃程度までは、ゆっくり焼成します。(現代でも同じです。)

    この間が、一番作品が壊れる温度ですので、土器の内部に残っている、水分を、蒸発させる為、

    6時間以上の時間を掛けます。

    それ以上の温度に成ると、どんどん温度を上げる事が、可能になり、燃料の消費量も増えます。 

  ③ 温度計の無い当時は、どのよう様に、この温度を見分けたのでしょうか?

   ) 一番解かりやすいのは、水蒸気の発生状態を、見る事です。

     (現代での窯では、200℃程度までは、蒸気の発生も少ないですが、除々に発生量が多くなり、

      250~300℃で、 最高になり、後は少しづつ減少します。)

      盛んに発生していた蒸気が、段段少なくなり、ほとんど発生が、認められない状態に成れば、

      問題なく、温度を急に上げる事も、出来ます。

    ) 経験側から割り出す

      燃料の消費具合、炎の色や燃え具合、土器の表面の様子、焚いている時間など、

      今までの、経験から割り出したかも、知れません。

    ) 焼き上がりの温度は、粘土片等の「焼き見本」を置き、炎の中から棒等で、取り出し、

       冷却後、強度などを調べて、判断した事でしょう。

       (現在でも、本焼きで、同じ様な事を、行っています。)

 3) 野焼きの時期(季節)

  ① 野焼きをする前に、準備する必要が有る物

   ) 必要量の作品の数(数十個の作品)が、出来上がっている事。

      それらは、天日干しし、十分に乾燥してある事です。

    ・ この段階で、作品に「割れ」や「ひび」が、入っていたら、この作品は、焼けません。

      補修もほとんど、不可能です。水を加えて、粘土に戻し、最初から造り直したはずです。

   ) 燃料が、十分集められている事。

      枯れ葉や、枯れ草、枯れ枝、枯れ木(薪)など、野山で集める事が出来る季節で有る事。

   ) 野焼きは、人手が必要です。女子供だけでは、無理ですので、男手がいります。

      その男達に、手伝う時間が有る事。尚、縄文中期には、野焼きをする、専門の「窯を焚き」が

      存在していたと、思われます。

      彼らは、報酬を得て、「窯焚き」を請負い、村々を巡回していたかも知れません。

  ② 天候に恵まれている事

    ) 野焼き当日だけでなく、数日前から、晴天の事(少なくとも、雨が降らない事)

       土器を乾燥させるのは勿論、燃料を乾燥させ、更に野焼きする場所も、十分乾燥させて置く、

       必要が有ります。

    ) 野焼き当日は、絶対に雨が降らない事、及び大風が吹かない事。

       朝は晴天でも、急な夕立等が無いと、確信出来てから、野焼きを、始めます。

       雨が降ると、火が燃え無いばかりではなく、最悪、生の作品が溶け出し、壊れます。

       又、少しの風では、火は燃え易く成りますが、急に大風が吹くと、飛び火し、

       火事や、山火事などを、引き起こす恐れも有ります。

  以上の事を、満足する季節や、日にちを、選ぶ事に成ります。

 4) 野焼きの場所

 以下次回に続きます。

野焼き
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