わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸22(加藤唐九郎2)

2012-01-19 16:08:05 | 現代陶芸と工芸家達
陶磁器に付いての博識家であり、筆も立ち(著書や雑誌への投稿)、口も達者(各地での講演会、

話上手、話好き)で、且つ活動家(古窯跡の発掘、多くの陶磁器関係の組織の設立)、更には

陶磁器公募展の審査委員としての心眼、何よりも、作家としての実力(各公募展への出品と受賞、

多くの陶芸展への招待出品)など、瀬戸の一陶工から日本全国の著名な陶芸家として、唐九郎は

活躍の場を広げて行きます。順風満帆であった唐九郎に、1960年(昭和35年)60歳の時、「永仁の壷」

事件が起こり、全ての公的職務を辞任する事に成ってしまいます。

 ・ 注: 「永仁の壷」とは、1959年、「永仁二年」(1294年)の銘をもつ瓶子(へいし)が、

   鎌倉時代の古瀬戸の傑作であるとして、国の重要文化財に指定されます。

   加藤唐九郎が編纂し1954年に発刊した『陶器辞典』に「永仁の壺」の写真を掲載し、自ら解説を

   執筆し、この作品を鎌倉時代の作品であるとしています。しかし直ぐに、この作品は現代物では

   無いかと疑問の声が上がります。再度の鑑定の結果、1961年に重要文化財の指定を解除されます。

   その根拠に成ったのが、文化財保護委員会での、エックス線蛍光分析を行った結果、釉薬に

   含まれる元素の比率が、鎌倉時代の物とは異なると結論され、位相差顕微鏡による調査でも、

   表面には経年変化が認められなかった事が上げられました。

   更に、唐九郎自身が、自分が作った事を認め、現代作である事で決着が着きます。

  ◎ その結果、文部技官で文化財専門審議会委員の小山富士夫は、責任を取って辞任し、

    加藤唐九郎も人間国宝(重要無形文化財保持者)の認定を解除されてしまいます。

 ② 唐九郎の陶芸作品

  ) 事件以降、公の仕事から製作一筋の生活に成って行き、この事件以降、唐九郎の作品は

    出来が良くなったと言われています。
 
  ) 事件以前の作品群は、瀬戸の古陶復元に重きを置いていた様です。

    即ち、人間国宝の認定と成った、織部を中心に、織部黒、黄瀬戸、志野、鼠志野、絵唐津など

    広範囲の焼き物に挑戦し、一箇所に留まる事は無かったと言われています。

    作品は、茶陶を中心に、茶碗、水指、懐石用の向付、輪花鉢、どら鉢、茶入などが多いです。

  ) 事件以降でも、製作意欲は失われず、製作を続けます。

    1964年の東京オリンピック記念「唐九郎展」では、黄瀬戸の「どら鉢」が現代作家では

    前代未聞の、百万円を超える値段で取引され、世間の注目を集めます。

    尚、黄瀬戸釉には、備長炭(ウメ樫の炭)の灰が最良との事です。

  ) 唐九郎と「紫匂」

    1979年、彼の代表作とも言える、志野茶碗「紫匂」(むらさきにおい=立原正秋命銘)を

    製作します。 この作品は、釉を通して胎土がほのかな紫色に発色しています。

    胎土に鉄、マンガン等の諸々の金属が、自然に含有しているのではないかと、推測されて

    います。当然それらは秘密事項です。

  ) その後も各地で展示会を催しています。

    1980年には「作陶七十年展示」を富士美術館で、1982年には、「唐九郎の世界展示」を東京

    伊勢丹デパートや名古屋の丸栄で開催しています。

 ③ 唐九郎は幼少期から、反骨、反逆精神が盛んであった様です。

  ) 当時の瀬戸では、古くから作る業種が厳格に守られており、陶器を焼くのは、加藤姓、

   磁器染付は川本姓、水甕(かめ)や擂鉢は本業屋と親子代々決っていた様です。

   飯茶碗焼き、皿焼き、丼焼きなども専門があり、親子代々変わること無く引き継がれる制度です。

  ) この様な状態の中で、唐九郎は業種(ジャンル)を超えて挑戦しています。

   即ち、陶器、磁器の垣根を越え、本業焼、瓦、茶陶など次々に挑んでいます。

  ) 自分の窯も何度も作り替えています。例え前回、旨く焼けた窯であっても、あえて壊して

     造り替えています。(一般には、旨く焼成出来た窯は、余りいじらないものです。)

  ) 「炎の人」「炎の野人」「八方破れ」「奇想天外な人」などのイメージが付き纏う、人で

     有った様です。それ故、自由奔放に自分の人生を、大いに堪能したのではないでしょうか。

以下次回に続きます。
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