わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸25(加藤卓男1)

2012-01-23 17:59:01 | 現代陶芸と工芸家達
岐阜県土岐市の陶芸の名家である加藤幸兵衛の家柄に生まれながら、古代ペルシャ陶器のラスター彩に

魅せられ、その技術の復元と研究で、世界的に活躍した人物に、加藤卓男がいます。

 注:ラスター彩 とは、9世紀、メソポタミア文明で起こり、特殊な絵具で絵付けし700度前後の

   低温で焼成して出来た皮膜は、光によって虹や真珠のような光沢を発します。

   それは、金属をイメージさせる技法でもありました。

  ・ 当ブログでも、陶磁器の絵付け(ラスター彩)として、2010-01-21、22 日 で取り上げて

    いますので、興味のある方は、ご覧ください。

1) 加藤卓男(かとうたくお): 1917年(大正6年)~ 2005年(平成17年)

 ① 経歴

  ) 岐阜県多治見市に、父五代目加藤幸兵衛(こうべい)の長男として生まれます。

  ) 1934年、多治見工業高校卒業し、京都の国立陶磁器試験所の陶芸科へ入ります。

  ) 1949年、父幸兵衛が岐阜県陶磁器試験場長に就任すると、幸兵衛窯の運営に当たります。

  ) 1953年、第九回日展で初入選します。(出品作は、「黒地緑彩花器」です。)以降入選を

     重ねます。更に入選、特選を重ね、日展審査員、日展評議員などを歴任し、

     1988年 紫綬褒章受章し、1995年 三彩で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。

  ) 1960年、フインランド政府の招きで、同国工芸美術学校に、技術交流で9ヶ月間留学します。

     滞在中にイランの陶磁器研究する大学などを訪れたり、窯址を訪ね、ペルシャ陶器に興味を

     示します。

  ) 1965年、カスピ海南部の古窯跡の発掘を行い、大量の陶片を見つけます。その中に織部に似た

    破片を発見します。一部に緑釉が掛り、白地には鉄絵が描かれ、絵織部と同様の梅鉢や市松文様

    も描かれていました。又黄瀬戸風の釉に胆礬 (たんぱん =硫酸銅)の緑が施されていたものも

    有った様です。

    この発見は卓男に大きな衝撃を与え、アジアの東西で同じ様な技法が存在している事を見出し、

    ペルシャ陶器に魅せられ、その研究ににのめり込むで行きます。

2) ラスター彩陶器について

 ① 陶磁器生産の代表的地域と言えば、中国を始め朝鮮半島や日本を含む東アジアですが、

   その他の代表として、7世紀以降の中近東地域が挙げられます。

   地理的範囲は、西アジアから北アフリカ、中央アジア、南アジアやヨーロッパの一部にまたがる

   地域で、特に、10世紀から13世紀にかけて現在のイラク・エジプト・イランでラスター彩陶器が

   製作されています。又、各地域で相互に影響し合いながら、独自に発展を遂げています。

   イスラーム文化圏で製作された陶器を、総称してイスラーム陶器と呼んでいます。

 ② 多種多様なイスラーム陶器の中でも、ラスター彩陶器は代表的な陶器です。

   乳白色釉(錫白釉)の上に、ラスター彩と呼ばれる金属光沢を持つ文様や、絵画的な装飾が

   施された高級陶器です。

 ③ ラスター彩の技法は、施釉され一度焼成された器に、銅や銀が溶かされた液体顔料で彩画し、

   強還元焔で焼成することで、陶器の表面に非常に薄い膜を作り出す装飾技法です。

   光が当たると金属的な輝きを発することから、英語のluster(輝く、ほのかな虹色の輝き)と

   いう語が用いられ、ラスター彩と称されるようになりました。

 ④ ラスター彩陶器は、9世紀のアッバース朝のイラクにおいて誕生したとされています。

   当初は、多彩ラスター彩陶器(複数の色調のラスター彩が施された陶器)が製作されていたが、

   より金属的な光沢を持つ、単色ラスター彩陶器へと変わり、10世紀後半にアッバース朝の衰退に

   伴い、ファーティマ朝のエジプトに移動します、エジプトでの生産も12世紀代には終了し、続いて

  シリアやイランで生産が開始されます。ラスター彩の技法は13世紀にスペインへ伝わり、その後、

  イタリア等でこの技法を用いた陶器が製作されています。イランでの生産は14世紀以降衰退し、

  18世紀迄は製作されていたが、それ以降、次第に忘れ去られ、失われた技術となっていました。

3) 加藤卓男氏の陶芸

以下次回に続きます。
 
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