五条坂の異端児とも称される、一夫は従来に無い形の焼き物による彫刻即ち、「陶彫」を作り出します。
③ 八木一夫の作品
) 彼の代表作と言えば、1954年発表の「ザムザ氏の散歩」が挙げられます。
カフカの「変身」と題する小説から採った物で、一夜にして昆虫に変身した小説の主人公が
散歩する姿を現し、一夫の自身の「変身願望」も表しているそうです。
注:フランツ・カフカ 1883年~1924年、チェコのドイツ語作家。プラハのユダヤ人の家庭に
生まれます。「変身」は1912年執筆され、1915年の月刊誌に発表された小説です。
この作品は轆轤の環造りの方法で成形した円筒を、横向きに立て、そこに昆虫の触角や足の様な
轆轤成形の円筒を付けて表現しています。(高さ26x径26.5cm)
・ 今でこそオブジェ等の認知は高まっていますが、当時としては、異端で異様な作品であったと
想像されます。
) 皺(しわ)寄せ手の技法
1963、64年に発表した「壁体」「書簡」「肖像」の作品には、器形の表面が「くしゃくしゃ」
した皺で表現されています。この技法は「皺寄せ手」と呼ばれています。
a) 皺の作り方は、新聞紙などの紙の上に、スライスした軟らかいタタラ(粘土板)を置き
土を寄せ集めたり、指で摘んだりして皺状に作ります。
b) 作品の大きさに応じて、この皺部分は、数枚必要に成ります。
c) 生乾きの基本の器形に、へらを使って、水で貼り付けている様です。
d) 生乾きの状態で、皺の一部を擦り込み、皺を消す方法も採られています。
e) 無釉の焼き締めの作品が多いです。但し、次に述べる黒陶の技法を使っています。
) 管々手(くだくだで)」法と作品。
轆轤挽きされた、細い管をばらばらの長さに切り、器に色々な方向に貼り付けた「作品」(1955年)や
細い管を器の上部に多数差し込んだ「ダルマサン」などの作品があります。
) 黒陶による作品
黒陶とは、焼成時(800~900度)の最後の段階で、煤(スス)を出す松葉、おが屑などを
窯に投入し、作品に炭素(煤)を吸着させ、黒土化する技法です。
a) 煤の吸着を良くする為に、作品が生乾きの段階で、丸い石や鉄製のへらで作品の表面を
磨き、素地を締め緻密化します。こうする事により、焼成後に一層光沢が出て、
艶やかな肌を持ち、低温特有の暖か味がでます。
b) 尚、この燻す(いぶす)事により、窯の内側全体が、炭素で汚れますので、専用の窯を
使うか、窯を空焼きして炭素を取り除く必要があります。
c) 「黒陶 偶像」「雲の記憶」「提示」「示」などの、手、本、頭(頭は先に進む、アリサの
人形、構想設計など)のシリーズや円環、円筒、立方体状の作品「「いつも離陸の角度で」
「円」「方」などは、黒陶を代表する作品です。八木一夫の作品では、黒陶が一番多い様です。
d) 黒陶の歴史は古く、新石器時代後期の中国龍山文化を代表する土器として有名です。
黒陶は、高温焼成の陶磁器に生じる収縮に伴う歪や、割れなどのトラブルがないため、
オブジェや置物の制作に向いていると言えます。但し、食器などには向いていません。
e) 簡単には、炭焼き窯を利用して造ることが出来ます。また、現代では、1200度以上の
高温焼成を行う燻し技法で、食器などが作られ、黒陶として販売されてます。
しかし、出来上がった焼き物の肌や質感は、黒陶土器とは明らかに異なります。
) オブジェ以外の作品も作っています。
「壷 花の花三島」「絵壷 花をもつ少女」「飾壷 鉄絵三島手」「信楽小壷」「信楽花生」
「絵壷 雲につい」「夏の野 大鉢」「刷毛目面取水指」「楽茶碗(末摘花)」「花刷毛目茶碗」
などの作品を1970年代前半に、数多く造っています。
以下次回に続きます。
③ 八木一夫の作品
) 彼の代表作と言えば、1954年発表の「ザムザ氏の散歩」が挙げられます。
カフカの「変身」と題する小説から採った物で、一夜にして昆虫に変身した小説の主人公が
散歩する姿を現し、一夫の自身の「変身願望」も表しているそうです。
注:フランツ・カフカ 1883年~1924年、チェコのドイツ語作家。プラハのユダヤ人の家庭に
生まれます。「変身」は1912年執筆され、1915年の月刊誌に発表された小説です。
この作品は轆轤の環造りの方法で成形した円筒を、横向きに立て、そこに昆虫の触角や足の様な
轆轤成形の円筒を付けて表現しています。(高さ26x径26.5cm)
・ 今でこそオブジェ等の認知は高まっていますが、当時としては、異端で異様な作品であったと
想像されます。
) 皺(しわ)寄せ手の技法
1963、64年に発表した「壁体」「書簡」「肖像」の作品には、器形の表面が「くしゃくしゃ」
した皺で表現されています。この技法は「皺寄せ手」と呼ばれています。
a) 皺の作り方は、新聞紙などの紙の上に、スライスした軟らかいタタラ(粘土板)を置き
土を寄せ集めたり、指で摘んだりして皺状に作ります。
b) 作品の大きさに応じて、この皺部分は、数枚必要に成ります。
c) 生乾きの基本の器形に、へらを使って、水で貼り付けている様です。
d) 生乾きの状態で、皺の一部を擦り込み、皺を消す方法も採られています。
e) 無釉の焼き締めの作品が多いです。但し、次に述べる黒陶の技法を使っています。
) 管々手(くだくだで)」法と作品。
轆轤挽きされた、細い管をばらばらの長さに切り、器に色々な方向に貼り付けた「作品」(1955年)や
細い管を器の上部に多数差し込んだ「ダルマサン」などの作品があります。
) 黒陶による作品
黒陶とは、焼成時(800~900度)の最後の段階で、煤(スス)を出す松葉、おが屑などを
窯に投入し、作品に炭素(煤)を吸着させ、黒土化する技法です。
a) 煤の吸着を良くする為に、作品が生乾きの段階で、丸い石や鉄製のへらで作品の表面を
磨き、素地を締め緻密化します。こうする事により、焼成後に一層光沢が出て、
艶やかな肌を持ち、低温特有の暖か味がでます。
b) 尚、この燻す(いぶす)事により、窯の内側全体が、炭素で汚れますので、専用の窯を
使うか、窯を空焼きして炭素を取り除く必要があります。
c) 「黒陶 偶像」「雲の記憶」「提示」「示」などの、手、本、頭(頭は先に進む、アリサの
人形、構想設計など)のシリーズや円環、円筒、立方体状の作品「「いつも離陸の角度で」
「円」「方」などは、黒陶を代表する作品です。八木一夫の作品では、黒陶が一番多い様です。
d) 黒陶の歴史は古く、新石器時代後期の中国龍山文化を代表する土器として有名です。
黒陶は、高温焼成の陶磁器に生じる収縮に伴う歪や、割れなどのトラブルがないため、
オブジェや置物の制作に向いていると言えます。但し、食器などには向いていません。
e) 簡単には、炭焼き窯を利用して造ることが出来ます。また、現代では、1200度以上の
高温焼成を行う燻し技法で、食器などが作られ、黒陶として販売されてます。
しかし、出来上がった焼き物の肌や質感は、黒陶土器とは明らかに異なります。
) オブジェ以外の作品も作っています。
「壷 花の花三島」「絵壷 花をもつ少女」「飾壷 鉄絵三島手」「信楽小壷」「信楽花生」
「絵壷 雲につい」「夏の野 大鉢」「刷毛目面取水指」「楽茶碗(末摘花)」「花刷毛目茶碗」
などの作品を1970年代前半に、数多く造っています。
以下次回に続きます。