わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸60(伊藤赤水)

2012-02-29 22:32:53 | 現代陶芸と工芸家達
新潟県佐渡には、19世紀前半頃から、「無名異焼」(むみょういやき)と呼ばれる、赤い肌の焼き物が

焼かれていました。その「無名異焼」を発展させて人間国宝に成った陶芸家が、伊藤赤水氏です。

1) 伊藤赤水(いとう せきすい)本名 窯一 : 1941年~

 ① 経歴

  ) 新潟県佐渡郡相川町で、四代伊藤赤水の長男として生まれます。

  ) 1966年に京都工芸繊維大学窯業科を卒業後、帰郷して三代である祖父に師事し無名異焼の

     技術を学び家業を継ぎます。

     (尚、1961年に四代赤水(博)は没し、三代赤水(孝太郎)は、かなりの高齢でした。)

  ) 1972年 第19回日本伝統工芸展に初入選して以来、連続入選を果たし、国内の展覧会などでも

     数多く受賞を重ねています。

     日本国内以外でも、米国、英国、香港など多くの海外展にも招待出品されています。

  ) 1976年に五代赤水を襲名します。

     1984年から「練上(ねりあげ)」技法による作品を手掛ける様に成ります。

     2003年に「無名異焼」の技術で、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます。

 ② 「無名異焼」とは

  ) 17世紀頃から、佐渡金山では素焼きによる、金銀の精錬用具としての製品が、伊藤家によって

   作られていた様です。19世紀前半に7代伊藤伊兵衛が、坑道より産出する「無名異」を混ぜた

   焼き物を作り、評判を得ます。これが「無名異焼」の発端に成ります。

   注: 「無名異」とは赤褐色の微細な酸化鉄で、坑道内の地下水が凹みに沈殿した物です。

   前記伊藤家の分家が赤水の家系で、伊藤赤水は5代目になります。

 ) 「無名異焼」は朱泥土(しゅでいつち)と呼ばれる赤土と、地元野坂付近で産出する粘りのある

    可塑性に富んだ白土(野坂土)を混ぜ、更に「無名異」を加えて水簸(すいひ)した土です。

    尚、現在では「弁柄」を使っているそうです。

 ) 「朱泥焼き」と言われた初期の頃は、赤い肌の焼き物でしたが、5代赤水による「無名異焼窯変」

     によって、芸術的価値が認められる様になります。

 ③ 伊藤赤水氏の陶芸

  ) 「無名異焼窯変壷」により日本伝統工芸展で一躍脚光を浴びます。

    赤い肌に黒色の窯変が、部分的に表現された作品を1972年「無名異焼窯変壷」として発表します。

   a) 轆轤成形された作品が生渇きの時、鉄や共土の素焼きの道具を使い、表面を研磨します。

   b) 半地上式の窖窯(あながま)で還元焼成します。焼成温度は1200℃位だそうです。

   c) 窖窯では、炎が直線的に走る為、障害物を置いて炎の当て方を変化させ、赤と黒の色合いや

     濃淡の妙を表現しています。 黒い色は炭素成分でなく、酸化鉄によるとの事です。

     但し、よく焼けた「窯変」は、歩留まりが悪く、2割程度との事です。

     作品としては、「無名異焼窯変壷」(同名で多数あります)、「無名異焼窯変筒水差」(1981)

     などがあります。

   d) 轆轤挽きによる成形では、左右対称の形になり、固くなり易いです。そこで「ざっくり感じ」を

     出す為に、一度研磨した素地に同質の土を吹き付け、表面の肌を和らげる作品を作る様に

     成ります。その様な作品が、「無名異焼窯変花入」(1981)などです。

     この作品は、口縁に大きな亀裂が入り、器肌には多数の「ひび割れ」が出ています。

  ) 練上(ねりあげ)技法
 
    1984年から手掛ける「練上」は、独特な線状紋や美しい花紋を配した作品で、繊細で華やかな

    表現力が見られます。

   a) 色の異なる土を何層も重ねて部品を造り、組み合わせて紋様を出す技法です。

   b) 色の違う土を重ねて海苔巻状に作り、それを輪切りにした断面を並べて、皿や壺の形を作り

     独特な縞模様や花紋が伊藤赤水の特色です。

     線紋皿、魚紋皿、花紋皿、花紋壺、花紋角皿、鳥紋皿、花紋香炉、花紋茶盌などの

     作品が有ります。

  ) 「佐渡ヶ島」について

     2009年 佐渡の岩石を使った作品「器 佐渡ヶ島」を発表します。

     従来の平滑な器面の「無名異焼」を離れ、器の側面に佐渡の小振りな岩石を、貼り付けた

     様な凸凹な 肌をしています。器(せっき)ですので、釉は掛かっていません。


     作品としては、、壷、香炉、角壺、篇壷などがあります。

次回(高鶴 元氏)に続きます。
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