ナポリタンと書いて、思い出した事がある。
若かりし頃、村の青年団に入団した。
年頃の男子なら有無を言わせずに
何の確認もとらずに入団させる、我が村の青年団。
僕の時も、先に入団していた弟が、
「兄ちゃんもメンバーらしいよ、早よ出て来いやて!」
なんだそれは!と一瞬思ったが、青年団とはそんな所。
その青年団で祭りの準備をしていた時、
休憩として近くの喫茶店に出掛けた。
秋とは言え、暑さが残る。
口々にアイスコーヒーを注文する。
そんな中、一人メニューを眺める人がいた。
S氏である。
彼は僕の同級生であり、馬鹿会結成当時から名を連ねる
オリジナルメンバーの一人でもある。
大学卒業後、家業を継ぐために帰郷。
そのまま青年団に入団した。
メニューを注文し終えた団員がS氏を見つめる。
歳はとっていたが、新入団員らしく遠慮していると団長が、
「好きなモン、頼んだらええでぇ!」
お会計は青年団持ちなんで、どうぞ!って事だ。
その言葉に安心した彼は都会ナイズされた発音で一言、
「イタスパ!」
時が止まった。
もちろん、その発音が洗練されていたからではない。
ちょっとした休憩。飲み物だけと言う暗黙のルールがあった。
それを知らなかったとは言え、そのチョイスがよりによって
イタスパとは。
イタスパとは勿論、イタリアンスパゲティの事。ナポリタンの別名だ。
その後、S氏は年下の団員からは
「イタスパさん」
と呼ばれる事になる。
そんなイタスパさんは、青年団と同時に消防団にも
入団していた。こちらは一応勧誘と言う形式を取っていたが、
もちろん、断わることは出来なかった。
そんな消防団で楽しみなのは、一年一度の旅行だった。
毎月6,000円を積み立てし、結構、豪勢な旅行だった。
毎年の旅行の中で、記憶に残っている食べ物がある。
“べトコンラーメン”である。
幼少の頃“秘密基地”と聞いて胸の高鳴りを覚えたように、
どことなく、少年の心をくすぐるこの響き。
このラーメンをなんとしても食べたくなった僕達は、
タクシーの運ちゃんにその旨説明すると、
一発返事で屋台へと連れて言ってくれた。
普通の屋台。期待に胸躍らせ席につくと、
早速べトコンラーメンなるものを注文した。
出てきたのは普通の醤油ラーメン。
違うところをあえて言うなら、ゆで卵が薄いスライスだった事。
「これ、どこがべトコンラーメン?」
素朴な疑問を投げかけると、オヤジは得意そうに言った。
「ベストコンディション・ラーメン。略してべトコンやぁ!」
一同大爆笑したが、
一番受けて最後まで笑っていたのは
S氏だった。
若かりし頃、村の青年団に入団した。
年頃の男子なら有無を言わせずに
何の確認もとらずに入団させる、我が村の青年団。
僕の時も、先に入団していた弟が、
「兄ちゃんもメンバーらしいよ、早よ出て来いやて!」
なんだそれは!と一瞬思ったが、青年団とはそんな所。
その青年団で祭りの準備をしていた時、
休憩として近くの喫茶店に出掛けた。
秋とは言え、暑さが残る。
口々にアイスコーヒーを注文する。
そんな中、一人メニューを眺める人がいた。
S氏である。
彼は僕の同級生であり、馬鹿会結成当時から名を連ねる
オリジナルメンバーの一人でもある。
大学卒業後、家業を継ぐために帰郷。
そのまま青年団に入団した。
メニューを注文し終えた団員がS氏を見つめる。
歳はとっていたが、新入団員らしく遠慮していると団長が、
「好きなモン、頼んだらええでぇ!」
お会計は青年団持ちなんで、どうぞ!って事だ。
その言葉に安心した彼は都会ナイズされた発音で一言、
「イタスパ!」
時が止まった。
もちろん、その発音が洗練されていたからではない。
ちょっとした休憩。飲み物だけと言う暗黙のルールがあった。
それを知らなかったとは言え、そのチョイスがよりによって
イタスパとは。
イタスパとは勿論、イタリアンスパゲティの事。ナポリタンの別名だ。
その後、S氏は年下の団員からは
「イタスパさん」
と呼ばれる事になる。
そんなイタスパさんは、青年団と同時に消防団にも
入団していた。こちらは一応勧誘と言う形式を取っていたが、
もちろん、断わることは出来なかった。
そんな消防団で楽しみなのは、一年一度の旅行だった。
毎月6,000円を積み立てし、結構、豪勢な旅行だった。
毎年の旅行の中で、記憶に残っている食べ物がある。
“べトコンラーメン”である。
幼少の頃“秘密基地”と聞いて胸の高鳴りを覚えたように、
どことなく、少年の心をくすぐるこの響き。
このラーメンをなんとしても食べたくなった僕達は、
タクシーの運ちゃんにその旨説明すると、
一発返事で屋台へと連れて言ってくれた。
普通の屋台。期待に胸躍らせ席につくと、
早速べトコンラーメンなるものを注文した。
出てきたのは普通の醤油ラーメン。
違うところをあえて言うなら、ゆで卵が薄いスライスだった事。
「これ、どこがべトコンラーメン?」
素朴な疑問を投げかけると、オヤジは得意そうに言った。
「ベストコンディション・ラーメン。略してべトコンやぁ!」
一同大爆笑したが、
一番受けて最後まで笑っていたのは
S氏だった。