今一度見ておきたかった雄国沼のニッコウキスゲ。今日、その念願を果たした。6月になってから再開したグループ登山だ。山を楽しむ大勢の人たちが、この光景を見に来ていた。自然のなかにたっぷりと身を置き、咲き群れる花々を愛でる。こんなささやかな楽しみをやっと取り戻すことができたような気がする。
雄国沼は会津の雄国猫魔火山のカルデラ湖である。先週訪れた肘折温泉に続いてこちらも火山活動によってできた外輪山の中央部分が陥没して雄国沼になった。その沢筋から流れ込む水を蓄えたカルデラ湖である。猫魔ヶ岳、厩岳山、二子山、雄国山などの外輪山がぐるりとこの沼を囲んでいる。
計画では金沢峠から雄国沼を目指す予定であったが、人気の高いこのルートは、この度のコロナ感染防止のために通行止めである。我々が採ったコースは、北塩原のラビスパ裏磐梯の駐車場に車を置いて、雄国山(1260m)へ登り、そこから雄国沼を目指すコースであった。天候は曇り、峠道では霧がかかり、小雨模様であった。
7時西回りのコースで雄国山へ登り始める。標高800m、気温が16℃ほどで肌寒い気がする。木の下闇というのか、陽ざしが十分には届いていないが、緑は滴るようである。登り勾配も急なとこではなく、順調に高度を上げていく。スマートウォッチの運動強度は身体感覚を離れて、未知の領域に達しつつある。登り始めて3時間、雄国山の頂上につく。やはりこの時期の山で感じるのは、圧倒的な緑。突然山中に響き渡るホトトギスの鳴き声。今年の初めて聞くホトトギスであった。
時鳥なくや若葉のはしり雨 北枝
頂上に立つと、視界が開け、眼下に雄国沼が見えてくる。目を凝らすと、水の向こうの湿原に黄色い花の色が霞んで見える。ニッコウキスゲが咲いているのであろう。
頂上から雄国沼休憩舎まで、階段あり、ジグザクの道ありで、どんどんと高度を下げる。思いがけずに、長い歩き。この沼に方々から入っている人も多い。一歩づつ沼に近づくと、花が盛んに咲いている様子が次第に見えてくる。前回、ここを訪れてから何年になるだろうか。当時の記憶が次第に戻ってくる。湿原にかかるかかる木道には、人波が途切れることなく列をなして歩いている。座り込んでカメラで接写する人、少しゆとりのある部分に座って弁当を食べている人、じっと花を眺めている人、その楽しみ方はさまざまだ。
雄国沼の圧巻はやはりニッコウキスゲであった。近くで見ると花は疎らに咲いているのだが、目を少し遠ざけると、湿原一帯が花に埋め尽くされているように見える。山の斜面を一面に彩るニッコウキスゲも見事だが、水面を背景にした湿原の花もまた風情のある眺めである。花の間をよく見ると、ところどころにヒオウギアヤメの小さな紫の花が咲いているのに気づく。ひそかに目立たないが、その美しさに目を奪われる。
11時半、ほぼ木道を歩き終わって昼食となる。いつまでもこの花々を見ていたい。6月最後の山歩きは、この沼のニッコウキスゲと再会して終わった。多分、ここのみごとな景色も見納めとなる。帰路は辿った道をラビスパ裏磐梯へとって返す。歩いた距離17㌔、歩数33、000歩。長い道のりに、鍛えていたはずの足も悲鳴をあげている。コロナ対策を十分にとった温泉で、疲れた足を癒し、汗を流す。本日の参加者10名。内男性5名。