今シーズン、冬らしい雪山はもう最後になるかも知れない。3月になって、品倉山の計画があるがその時期はもう春の雪山になっているだろう。朝、自宅を出発したときは、青空が見え、風もない。快適な山行ができるのではないかと期待が膨らむ。しかし、13号線を北へ進むにつれて、雪が舞った。尾花沢の母袋の集落に入るごろには、本降りの雪となっていた。牛舎に入る道は、朝の除雪のあとに、すでに新雪にが積もり始めている。晴れマークの予報を信じて、カンジキを履き牧場を覆う雪原を二ッ森の登山口へ向かった。新雪は20cm前後だが、その下は固い雪で靴はさほど沈まない。
二ッ森は左に北峰、右に南峰のラクダの瘤を想像させる双耳峰だが、標高は695mに過ぎない。雪中の歩行は、牛舎の裏から入る広い牧場の方が長い道のりである。期待していた晴れ間は一向に見えず、雪のなかに雪を被った木々と広い牧場も奥までの見通しはなく、目指す二ッ森はその影すら見えない。同行した仲間から、こんな雪降りにいくの、という声が上がる。気温0℃、風がほとんどない、という条件に助けられて登り続ける。本日の参加者9名、内女性4名。
尾根を進み鞍部に至るには、谷に登山道があるが、谷の道を避けてトラバース気味に鞍部を目指す。新雪の下の堅雪は、次第にアイスバーンの状態になり、ステップが切りづらい。足の疲れを感じながらも、木々の霧氷に目を奪われる。霧氷の上になを降り続く雪がついて、一層その美しさを増している。
霧氷咲く木花開耶姫祀り 藤井 艸眉子
やはりこんな圧倒的な霧氷の景色を見られるのも、今年は最後になるような気がする。その証として、下山時には気温が上がり、もうその神々しさは失せていたからだ。今年最後と、訂正を要する。今年初めて見たのも今日なのだから。
鞍部に着いて風が強まってきた。ここは風の通り道でもあるのだが、雪が吹雪のような状態になっている。「今日はここまでで退却してもいいのでは」という声が話し合いが持たれた。会長から、「ここから頂上までは15分」という声に励まされて継続することになる。下のアイスバーンの対策としてアイゼンを履く。さすがに寒風のなかでアイゼンを着けるのは、経験者でも時間がかかった。安全登山の注意しておくべき動作だ。鞍部からは急な登りだが、アイゼンの力で登りやすい。次第に勾配が緩くなり、石碑のある頂上に着く。時計を見ると鞍部から18分で登頂。牛舎から2時間45分、頂上を踏んだ。
二ッ森がその全容を現したのは、下山して放牧場の上であった。参加者たちから、歓声が上がる。鞍部から登りつめた斜面がくっきりと見えている。トレースを一列になって歩いたメンバーは、好きな方向へバラバラになって散らばっていく。歓声を上げながら振り返る二ッ森の景観は何度見ても飽きることがない。一本松の方から、「こっちを撮って~」と声がかかる。風雪に耐えて登頂を果たしたチームへ、山の神様がかけた微笑みであった。