今週の山行は尾花沢の豊立山である。山登りをする人たちに殆ど知られない里山だ。尾花沢から赤倉へ行く途中に矢越という集落があるが、豊立山はその村落に恵みをもたらす山である。標高376m、矢越に住む人の話ではこの山に登りに来る人は殆どいないらしい。我が山友会でも、この山をはっきりと認識していたわけではない。翁山や二つ森へ登った帰路、目だった山が見えるが、カーナビに出てくる豊立山をその山と見間違っていたような気がする。
矢越の集落から豊立山に向かう林道へ向かうとすぐに神社がある。集落の安泰を司る神社である。雪に埋もれて、この神社が祀る神がどのような名の神であるか知ることができない。山から流れて来る水を利用して、この集落は田を作っている。神は高い山から、集落のある神社の神木を憑り代として降り、集落を見守る。水が村を潤すように、山の神に祈るのは古くからの村のしきたりであっただろう。同時に、この村で亡くなった人々は、祖霊としてこの里山のいただきに止まって村を見守っている。
集落の高台に神社があるように、林道に向かう集落の要には、そこを守る老人がいる。悪意を持って里山へ足を踏み入れようとする不届き者を見張り、里山の魅力にひきつけられて来る人々には、神のような善意を施してくれる老人である。先週の戸倉山でも逢うことができたが、今日の豊立山でも、また好々爺に会うことができた。行く道を尋ねると、「この林道から左に登るんだけど、何のためにいくのかね。」山の神には、雪だけしかない山へ行く理由が解せないらしい。お爺さんの住む家の庭の一部だけ雪が解け、福寿草が可憐は花を開いていた。もう雌しべに小さな蜂が蜜を求めて来ていた。
頂上まで1時間30分、好天、無風、眺望といずれも快適な里山歩きであった。雪の状況は一部ぬかったが、さほどでもなく順調な雪上歩きであった。尾根道の日当たりのよいところではマンサクの花に行きあった。ナラとブナの雑木林が尾根から頂上に続く。尾根道から、翁山、二つ森、吹越山が雪を被って、青空に屹立している。この時期でしか見られない景観である。本日の参加者5名、内女性3名。登りながらの、語らいも楽しい。