山形で秋のご馳走といえば芋煮が定番である。畑で育てた芋の収穫を待って、鍋で煮る芋煮は格別だ。里芋の消費があまりに多いので、他県産の洗い芋がスーパーで売っている。親しい仲間が集まって野外で鍋を楽しむのが昔からの風習である。馬見ヶ崎川原で巨大な大鍋を設え、クレーン車を使って、3万食の芋煮を振舞うイベントが定着して、県外の人にも知られるようになった。
里芋に牛肉、コンニャク、マイタケ、ネギなどを鍋に入れて煮る簡単な料理で、とてもお客さまに出すようなものではないが、最近は有名な温泉旅館でも秋には山形の名物として出されることが多い。そのルーツをたどれば、1600年代の舟運まで遡る。日本海の船は、京都、大阪などの上方からの積荷を酒田で川船に積み替え、はるばる山形城近くの中山町の辺りで終点となる。ここから、積荷を取りに来る人足を待つことになるが、多くの船の船頭たちはこの川に碇泊して待つことになる。
当時の輸送を考えると、二日や三日は常時待たされた。そこで退屈しのぎと腹ごしらえに、老松の枝に鍋を吊るし、小塩などの集落で入手した里芋を船にある棒鱈で煮て食べたのが、芋煮会のルーツとされている。紅花商人などの金持ちが、芋に牛肉を入れたのが、この地方の特徴として伝えられたらしい。洗い芋を用いた芋煮はそれほど食べたいとは思わなかったが、山形産の皮付き芋を用いた鍋はやはり食べてみる価値はある。
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