咲く花が移ろっていく様子をみている、時間に押されているように感じる。それほど時の流れが早い。早すぎる。郊外の木々の緑があっという間に、辺りを埋めつくして、景観は様変わりしていく。コロナの感染が収まらないという不安感が、時の流れを早くしているのか。
水口をはしる小蟹や五月尽
梅雨前線は西上して、九州や四国でまたまた大水の被害が出ている。前線が上がってくれば、東日本に続いて東北も梅雨の季節に入る。うっとうしい季節だが、この季節の青葉若葉の美しさは人を元気にしてくれる。
「この十日ばかりの間に、急に庭木は隣家の洋館の屋根が見えなくなるくらいに、ふかぶかと繁っていた。その若葉の繁みが、時折り、風にざわざわと揺れた。気のせいか、そこに目を当てていると、頬を打って来る風までが匂やかに感じられる」(井上靖『緑の仲間』)
こんな小説の一場面が、季節のせいで、懐かしい気にさせてくれる。