菜の花
2015年04月30日 | 花
菜の花や遥かに黄なり筑後川 漱石
夏目漱石は菜の花が好きであった。見上げると空には、白雲がふわりと浮かんでいる。春ののどかな景色のなかで好きなことをして暮らしたい、というのが漱石が抱いた小さな夢であった。『草枕』で「春は眠くなる・・・菜の花を遠く望んだとき目が覚める」とも書いている。漱石のやすらぐ心象風景と、時代が文明開化へと流れていく時流とにはあまりに大きな落差があった。
そこで漱石がひねり出したのは、ユーモアであった。『吾輩は猫である』を執筆し、盛んに俳句をひねった。「菜の花の中に糞ひる飛脚かな」などという句も詠んだ。句題は下品なものであるが、芭蕉も「奥の細道」で、馬の尿を詠んでいる。