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四月最後の日。ベランダの障子を開けて驚いた。家々の屋根に雪が積もり、近くの里山がうっすらと雪化粧をしている。確かに天気予報は雪の予報が出ていtが、山地に降る雪で、まさか雪が見える朝になるとは思わなかった。ゴールデンウィークに、アルプスの方の山にでかけて、思わぬ雪で遭難騒ぎが毎年起きている。初夏になったとはいえ、まだまだ予断を許さぬ季節である。
四月逝く百花騒然たるなかに 相馬遷子
今日で一年の1/3が終わる。四月には、たくさんの山菜を食べた。フキノトウに始まり、花わさび、山ニンジン、アケビの芽、コシアブラ、コゴミ、
フキ、ワラビなどなど。どれも簡単に浸しで食べるが、春、山菜の初物は身体の方が要求してくる。冬の季節に欠乏していた、大事な成分が含まれているからに違いない。今年は足を手術した妻を連れ出しして、萌えだした早蕨をとったが、こんな季節に会えることがうれしいらしい。友人、知人からも、フキノトウやコシアブラ、アケビなどを頂いた。
先日、黒森山の見える山に登った。『日本の古代』に黒山についての記載が見える。黒森山で黒の字が使われているのは、杉が他の樹より黒く見えるからとばかり思っていたが、そうではなく異界を意味すると指摘されている。そこは、人間が近づくことを拒絶する聖なる山である。杣山は木伐りだし、植林する里山である。黒山と杣山との間には、厳然とした線が引かれている。
宮材引く泉の追馬(そ)喚犬(ま)に立つ民の
息む時なく恋ひわたるかも (万葉集巻11)
杣という字は伝来した漢字では日本で作られ文字である。万葉仮名では、追馬で、「そ」、喚犬を「ま」。実際に馬を追う時は、それとかしっと言い、犬を呼ぶときは、ま、ま-と呼び寄せたらしい。杣人は、都の造営や、寺の普請で求められる材木を切り出すのに、家に妻を置いて山中で、休む間もなく忙しく働いた。そんな古代人の姿が思い浮かぶ。この冬、山刀伐峠の冬道を案内してくれた山口さんも、峠を杣街道と呼び、自らを杣人の末裔を自称していた。