常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

クロッカス

2017年03月31日 | 日記


雪融けを待って咲く花。紫の花も脇に咲いていたが、白い花に気品がある。孫を散歩に連れて歩いていたお婆さんが、「ほらきれいだね。咲いてくれてありがとう」と、花に向かって話すのか、孫に語りかけているのか、両方にとも思えることを語りながら去っていった。クロッカスは葉に特徴がある。剣状の葉に、真ん中の銀色の筋が入っている。日がさして気温が上がると花が開き、夕方気温が下がると凋む。秋に土から直接花茎を伸ばして咲く似た花があるが、こちらは同族のサフラン。ギリシャ神話に、魔女メディアが調合した不死の薬のしずくから生じた花とされているらしい。

芝ひろく踝をかへすクロッカス 富安 風生

この週末、プレミアムフライデーとして、勤務時間を昼頃までとして、週末の時間にゆとりを持たせて消費行動を起こそうとする政権の試みがある。東京では3分咲きの花のもとで、花見の宴が
行われるらしい。いきつもどりつする春に、花もゆっくりと開いているらしい。6分から8分咲きのところあるのだが、夜には雪交じりの冷たい雨の予報である。
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福寿草

2017年03月30日 | 日記


夏タイヤに替える。妻の実家の近くにある光禅寺の庭を散策。福寿草が、先ず春を告げるようにかわいい花を咲かせていた。里山などで咲く福寿草は、腐葉土の栄養をいっぱいに吸収して、丸々と太っているが、寺の砂地では少し貧弱だ。元日草と言われ、鉢植えにして新年を愛でる花として珍重されてきた。

福寿草こぞる蕾に色ひとつ 青木就一郎

昨日から気温が上がって、春が実感できる。畑には、雑草が萌え始め、そのなかにアサツキやアシタバが、やわらかい芽を出している。アサツキを収穫して、卵とじにして食べる。まさしく春の香りだ。キャベツを収穫。久しぶりに草取りをしたが、かがめた姿勢ではすぐに腰が痛くなり長く続けられない。エンドウ豆、玉ねぎも冬を越して元気に春を満喫している。
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梁川紅蘭

2017年03月29日 | 


梁川紅蘭は幕末の漢詩人梁川星巌の妻である。頼山陽の後輩で、女流では江馬細香と双璧をなした。紅蘭はもともと星巌のまた従妹であり、星巌が主宰する梨花村草舎の生徒であったから、先生と生徒との結婚ということになる。婚約がなり輿入れの品も運び終り、いよいよ華燭の典をあげるばかりになって、星巌は「2、3ヶ月旅に出る。帰るまでに三体詩をそらんじておけ」と言い残して出て行った。留守中、紅蘭は家事のかたわら熱心に三体詩の暗唱に取り組んだ。頭もいい上、熱心で苦もなく三体詩を暗唱できるようになったが、帰るはずの夫からの音信がない。一年がたち、やがて三年の歳月が流れた。

親戚筋でもあてなならない星巌を待たないで、家をでてはと、紅蘭に勧める者もあった。しかし、紅蘭はその話に耳を貸さず、夫を信じて待っていた。すると、ふいに星巌が戻り、何事もなかってように「三体詩は諳んじられるようになったか」と聞いた。紅蘭は「はい」と答え、問われるままに、どんな詩でもすらすらと答えた。星巌は新妻に美しい着物を着せ、化粧をさせて、連れ立って旅をした。知人の儒者たちに紹介をかねた旅であったが、あまりの美しさに、まるで芸妓のようだという評判がたつほどであった。星巌は美人の妻が自慢でもあったらしい。

 紅梅 梁川 紅蘭

暖は嬌容に入りて 一段と奇なり

珊瑚玉を綴る 幾枝枝

品題用いず 饒舌を労するを

喚びて佳人酔後の姿に做す

詩意は、紅梅のあでやかさを、いろいろあげつらって言う必要はない。佳人が酔ったさまに例えれば十分。品題は品評のことである。思い切った妖艶の例えではある。安政の大獄で、拘束されそうなった星巌が急病でなくなり、幕吏はかわって紅蘭に事情を聞いた。「夫は大事を女に話すような人間ではありません。皆さんは国の大事を奥方に相談されますか」と逆に聞いた。幕吏は紅蘭の言葉に二の句が継げなかったという。明治5年、朝廷は夫の勤王を助けた功に報い、扶持米2人分を与えた。同年3月29日、紅蘭は76歳で没した。
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水仙

2017年03月28日 | 


庭先に群をなしてニラのような葉を出し、黄色な莟が次第に膨らみ、ついに今日花が開いた。春先にこの花を見つけるとうれしい。雪に閉ざされた冬が終わったのを実感するからであろうか。無事に冬を越したことへの安心感なのであろうか。子どものころから見なれた懐かしい佇まいである。この黄色い水仙は、黄水仙といって日本の古来種とは異なる。図鑑で調べると黄水仙にも、喇叭水仙、房咲水仙、口紅水仙などたくさんの種類がある。ヨーロッパが原産で、江戸時代に渡来し、鑑賞用に栽培されている。今日、散歩中に見つけたのは、喇叭水仙であるらしい。

黄水仙みな横向くはよそよそし 長谷川照子

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泡雪崩

2017年03月27日 | 読書


春は足踏みしている。もう終わりと思っていた雪が、この時間にも降り続いている。春の気候の急変で春山の遭難事故も多い。つい先週は、月山へ一人で入った男性が、テントを置いたまま行方不明になっている。山の会で雪山の安全講習で、雪山の危険について調べたが、これからの季節で恐ろしいのは雪崩である。鈴木牧之の『北越雪譜』に、雪国の春の雪崩の恐ろしさについての記述がある。
 
 此の雪こほりて岩のごとくなるもの、二月のころにいたれば陽気地中より蒸して解けんとす
 るとき地気と天気のために破れて響きをなす。一片破れて片々破る、其のひびき大木を折る
 ごとし。これ雪崩んとする萌しなり。(中略)雪崩の形勢いかんとなればなだれんとする雪
 の凍、幾千丈の山の上より一度に崩れ頽つる、その響き百千の雷を為し大木を折り大石を倒
 す。此の時かならず暴風力をせへて粉に砕来る沙礫のごとき雪を飛ばせ、白日を暗夜の如く
 その怖ろしきこと筆に尽しがたし。

牧之は実際に雪崩で命を落とした知人があり、また命びろいをした人から話を聞いて、この本に書き残している。この記述は、春に起るそこ雪崩である。雪にひび割れが口を開ければ、それは雪崩の前兆である。もう一つ恐ろしい冬の雪崩として、ホウラ雪崩を警戒すべきという言及がある。こちらは、積雪が固まった上に新雪が降り、その新雪が雪崩れる表層雪崩を意味している。

この表層雪崩のうちでも、煙型乾雪表層雪崩いわゆる泡雪崩(北越雪譜でいうホウラ)というものがある。1938年12月、黒部渓谷の黒部川発電所建設に伴うトンネル工事現場で、この泡雪崩が発生し、鉄筋コンクリート造りの作業員宿舎が700m先の対岸へ、その爆風によって吹き飛ばされるという大事故が起きている。泡雪崩は爆発音ととももに、雪煙が時速200㌔を超える速度で落下する。吉村昭の小説『高熱隧道』で、この泡雪崩の詳細が記述されている。このほど電子書籍によってこの本を読了した。この災害で84名もの生命が失われた。

この記事を書き終わって気がついたが、栃木県那須スキー場で雪崩が発生、ここで春山の登山講習会に参加していた高校生8名が心肺停止の状態だという。一昨日から降っていた新雪が雪崩れたもので、この時期には珍しい表層雪崩ということである。高校生という若い人で、実に痛ましいことである。



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