十月が終わる。季節感が狂わされてしまったがカレンダーは残り2枚になる。テレビのコマーシャルには暖房器とスノータイヤが登場して冬が近くなっていることを知らされる。樹々の黄葉も次第に目につくようになった。ここへ来て歩く楽しみが見つかった。歩き方を意識して変えている。高齢になると歩く時前方を意識して足も前足、腕も前に振る癖がついている。ユーチューブで教わったのだが後ろ足を意識する。腕は後ろへ振るように意識する。このことを実践するだけで歩幅が広くなり姿勢がよくなる。歩くのが楽で長く歩いても疲れない。自然と歩きたくなりモチベーションが上がる。
西脇順三郎の詩の一節を諳んじてみる。「寂しさ」
武蔵野を歩いてゐたあの頃
秋が来る度に
黄色い古さびた溜息の
くぬぎの葉をふむその音を
明日のちぎりと
昔のことを憶ふ
二三枚の楢の葉とくぬぎの葉を
家にもち帰り机の上に置き
一時野をしのぶこともあった
また枯木の枝をよくみれば
既に赤み帯びた芽がすくみ出てゐる
冬の初めに春はすでに深い
樹の芽の寂しさ
歩くことの心の豊かさ。詩人に心には黄色い落ち葉のなではやくも春に萌えでる若葉の景色が見えている。そんな豊かさをたっぷりとあじあわせてくれる詩だ。