孫が高校を卒業して、四月から歯科専門学校に入る。そのお祝いを兼ねて、両親の家族が湯西川温泉に一泊旅行をする。湯西川温泉は平家落人の湯として知られる。それはこの温泉が深い山中にあることによって現実味をおびる。
東北高速道を西那須野塩原インターで下りて国道400号を塩原方面へ走る。この道は去年同じメンバーが集まった塩原温泉へと同じ道であったので記憶に残っている。この400号を西へ会津鬼怒川線121号との合流点へ向かう。すでに道は渓谷に添った山道である。日影になった斜面に所々残雪が見える。
降雨量が200ミリに達するとこの道は通行止めになる、という表示が随所に見える。ほとんど他の車ととも行き会わない寂しい山道を走ること小1時間、ようやく湯西川温泉の看板が見えほっとする。やがてトンネルの続く道に湯西川温泉道の駅に着く。ここから川沿いとダムサイトのトンネルを過ぎて、鄙びた湯西川温泉に着く。
湯煙の見える金井旅館は渓流・湯西川の辺に建っている。岩盤を流れる水は清く澄んでいる。ここでも渓流釣りをするのであろうか。泊り客から、「魚を釣ってきたんですか」と聞かれた。旅館のすぐ前に掛かる赤い「ゆぜん橋」は、渓流の景観のアクセントになっている。
渓流の上流に目を転ずると、川の両岸に温泉旅館と明朝朝食を摂る豆腐屋「会津屋」の古い様式の建物が見える。いまは瓦葺になっているが、もとは藁葺き屋根であった。
温泉は透明で気持ちいい湯であった。ひと風呂浴びてからの夕食は、自然の食材を生かしたおいしいもであった。特に湯葉と甘エビの刺身は絶品、湯葉の濃厚でとろけるような舌触りは感服した。旅館の社長が打った手打ちそばは、こんな自然ゆたかな環境で味わえる上品なものであった。
フキの煮物、カニと鱈の寄せ鍋、ひき肉と味噌をヘラの上で焼いたもの、鮎の塩焼きと珍しいものではないが、堪能できた。
食後にオーロラファンタジーを見物。広場に煙を焚きその上に色とりどりのレーザー光線を照射して、夜空にオーロラのような彩りに見物人の喚声が上がった。夜の8時ころであったが見物する人は数百人を数えた。(続く)