残暑は厳しいが、朝方は風が凛として、秋を思わせる。散歩の途次のコスモスは、こんな寒暖のなかで咲く本数を増やしていく。元禄2年の7月、芭蕉の奥の細道の旅は、金沢に至っている。この年の夏の暑さも、ことのほか厳しかったようだ。酒田から北陸への道中は、暑さに耐える旅であったとも言えそうだ。
あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風
芭蕉はこの句に前書きして「北海の磯づたひ、まさごはこがれて火のごとく、水は涌いて湯よりもあつし。旅懐心をいたましむ。秋の空いくかに成ぬともおぼえず」この旅の暑さは、今年の夏の終りに似ている気がする。
金沢で芭蕉を出迎えた門人の人たちの顔にも、残暑にやつれがあらわれていた。同じやつれで弱っていた芭蕉が、この挨拶の句で、やっと秋風が吹くと見舞ったと考えられる。