グループで山に登ると、なかに必ず高山植物の花に詳しい先生がいる。今回はSさんだ。誰かが珍しい花を見ると、「Sさん、この花の名は何?」と質問が飛ぶ。大抵の花は、即答で名を知ることができる。似た花であれば、葉の特徴や花にあるヒゲなどで特定する。2000mを越えた厳しい環境のなかで咲く花は、どの花も可憐で美しい。Sさんの知識は、特徴のある花に限らず、花か葉か判別できないような花にも及んでいる。写真に撮っても面白くないので、その難しい花は撮影していない。
モミジ坂の上の方に、ゴゼンタチバナが多く咲いていた。急坂を喘ぎながら、この花に癒される。
イチヤクソウ
ウサギギク 高度が上がって、ゴゼンタチバナの花に続いて登場するのがこの花。モミジ坂の急坂が終わるころ、ハクサンフウロの花も交じってきた。
タカネバラ 爺ヶ岳の登山道の脇に所々に見られる。Sさんの鑑定でタカネバラとなる。
ハクサンフウロ さらに高度が上がると、急にこの花が目だってくる。低い山に咲くより心なし色が鮮やかに感じられる。
チシマギキョウ リンドウと見間違えそうだが、紫の花の先端がくっきりと開いている。
イワツメクサ 同じ仲間にタカネツメクサがあり、見分けがつきにくい。岩の間に、線香花火のように小さく咲く。ほっそりした花びらを持つ方がイワツメクサ。やや幅広の花びらが緑がかっているのがタカネツメクサ。
クルマユリ 群落を見たかったが、布引山の岩場でひっそりと咲いていた。
シャクナゲ ハイマツの間に点々とシャクナゲの矮小した木が花を咲かせていた。写真のほかにも、コマクサ、ハハコクサ、エゾシオガマ、ハクサンチドリ、キヌガサソウなど多くの花が見られた。山頂で見る雄大な北アルプス風景とともに、厳しい環境で花を咲かせる高山植物の生命力もまた大きな見どころである。