本当の霧氷の美しくしさを見るのはなかなかに難しい。夜に降った新雪が木に着くことが最低の条件だが、朝日に照らされなければならない。風が吹くとすぐに飛ばされるし、気温が上がるとあっという間に消えてゆく。気温が低い早朝がやはり一番のいい条件だろう。
上山から宮城県の七ヶ宿へ抜ける金山峠という古い峠道がある。江戸時代には山中で奥州街道から羽州街道へと道をとり、西奥羽諸大名の参勤交代の街道であった。今日、この街道を歩いた。山登りとは違う街道歩きである。昨夜降った新雪が山中の木の枝に着き、朝日に照らされてきれいな霧氷になっていた。
ふるさとの山にかも似て雪降れり 高橋 喜平
雪は標高500mを越えたあたりから深くなり、600m地点で15センチほどの積雪であった。雪のなかを歩くのは楽しい。この峠道は、渓流に沿っているが、道幅は人間が一列に歩くにやっという狭さだ。江戸時代の交通事情がここを歩いてみて実感できる。渓流の両脇は急な山肌になっている。誰が考えても分かるところに、最低の手入れで作りあげた道である。
急な勾配のところには七曲の道が切られている。峠では見晴らしのいい場所がある。宮城と山形の県境が峠になっている。
見晴らしのきく場所から周囲に目をやると、絵のような景色が眼前に広がる。かつての旅人は峠道を登ってきてこのような景色に癒されながら、その先へと歩を進めたのであろう。街道の中腹に茶店跡の標識もある。そこでだんごを食べ、喉を潤して足の疲れを休めたであろう。ここから江戸へ行くにも、羽州街道を通って秋田へと向かうのも大変な道のりである。