日本の若き天才、二人の快進撃が止まらない。一人は野球メジャーリーグの大谷翔平。この6月、ホームラン14本、計29号でダービーを独走中。投げては7勝とトップケラスの成績だ。もう一人は将棋の藤井聡太。タイトル戦7冠をとり、最後の8完へ挑戦まであと1勝に迫った。なぜこんな人並みはずれた活躍ができるのか。二人にある共通点がある。大谷は大リーグでほぼ休みなしに出場を続け、ストレスと疲労回復に重視しているのは睡眠。8時間~10時間の睡眠をとるという。藤井もタイトル戦の前日、ストレスなしに十分な睡眠をとるという。十分な睡眠が疲労を回復し、勝負のときの集中力を高めることができるようだ。藤井も対局時に、昨夜眠れましたか、という問いに眠れなかったとい答えを聞いたことがない。
我々の時代の受験勉強。4当5落が合言葉であった。睡眠が4時間の人は合格、5時間では落第。睡眠の削って勉強することが奨励された。だが、記憶を固定するのは睡眠中であることが分かってきている。夜遅くまでいくら頭に詰め込んでも、睡眠がなければすぐに忘れる。その上睡眠不足は想像力や独創性を奪うと言われる。睡眠を削って書いた論文は凡庸で退屈なものになるといのが定説だ。ナポレオンが4時間しか眠らなかったという話がある。これも、当時睡眠を削って物事に当たるのが美徳とされていた時代の話だ。国王として、夜も寝ずに働いているイメージを作りたかったようだ。何度か重大な局面で
睡眠不足のため判断を誤ったという指摘もある。
ギリシャ神話に夜が生んだ双子の兄弟がいる。ヒュピノス、眠りの神である。ケシの茎を手に持ち、この茎を振って露をふりまき、人々を眠らせた。人々に健康と安らぎをもたらす神であった。もう一人の子はタナトス、死の神であった。ヒュピノスの対極の存在であった。人を憎み、死へと導いた。眠りは一見、死と似ている。だがこの連続した時間に、身体の疲れを癒し、病気を追い払う。同じように見えて死は、人を別世界へ誘う。夜は人を惑わせる怪しい時間なのだ。