常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

五月ゆく

2024年05月31日 | 日記
あっという間に五月も終わる。あとひと月で、年の半分が過ぎていこうとしている。衣替えは旧4月1日に行われていた年中行事で、宮中では服装だけでなく、室内装飾から文机なども夏のものに改めた。源氏物語に出てくる、女御、更衣の更衣は、天皇の衣替えを担当する女官の呼び名であったらしい。我が家では、玄関の中の壁に、ラベンダーの花束を下げて、ドライフラワーもどきの飾りをしてみた。近づくとほのかな香り、見た目にも季節を感じさせるものとなった。庭で伸びてきたローズマリーの枝を3㎝ほど切って、熱湯に浸してハーブティーとしゃれてみた。薄紫のに色づいはティー、どこかほんのりと香りがする。ミントの方が、しっかりとした香りでいいような気がする。

五月尽雨気山の端のどの家にも 飯田龍太

このところこの地方には雨が少ない。今週の雨は、野菜や果樹など、植物を相手に生活している農家などには、恵みの雨といってもいいかも知れない。山歩きには、晴天が待ち遠しいが、乾燥して火事が頻発するようでは、野菜などの生育にも影響する。チャペックの五月の園芸家でも待っている雨には、質がある。土砂降りの雨が降って日がさしたあと

「30分たつと、長い、こまかい、糸のような雨がまた降りだす。ほんとうの、おだやかな、いい雨だ。ひろい範囲にむらなくしずかに降る、みのりゆたかな雨。はねを飛ばし、とうとうとみなぎり流れる豪雨ではなく、しとしとと降る、やさしい、気持ちのいい霧さめだ。やさしい露よ、おまえのしずくは一滴だってむだに流れはしない。」

園芸家が待っているのは、こうした質の雨だ。育ち始めた植物をいつくしみ、育てる雨である。方々の畑から声が聞こえてくる。「いかにも5月らしい雨でしたね。」「これでなにもかも、きれいな緑になりますよ。」
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昆虫記

2024年05月30日 | 日記
先日、孫が送ってくれた動画に、ひ孫が道端のアリを見つけ、「アリさん、こんにちは」といい、そこを去る時、「バイバイ」と言いながら離れていくのがあった。もうすぐ、2歳の誕生日を迎えるが、こんな小さな生き物に関心を寄せる姿に感心した。ファーブルの昆虫記は、こんな記述がある
「アリは、自分の巣を守るために、一生懸命働いている。彼らは仲間と協力して、食物を集め、巣を守り、社会を築いている。アリは小さな存在だが、その努力と組織力は立派です。」 

詳しい観察を続けるうちに、ファーブルはアリの残酷な姿を見てしまう。それは、生まれたばかりのコウロギの子どもたちをアリが食べてしまうのだ。アリと一緒のなってコウロギを食べるのにトカゲがいた。アリはコウロギの腹に穴をあけ、ムシャムシャと食べている。そしてファーブルは書く。「動物仲間でも、人間の世界と同じように、評判になる物語を作ってもらう一番確かな方法は周囲のものを傷つけることらしい。」

2歳の小さな魂が、ある小さなアリのような小動物に興味を持ち、それを掘り下げ、その世界を広げ、人間世界に注目を与えるような、観察や発見をしていくには、その後、どのような生活があるだろうか。どんなに小さくとも、その魂に働きかける様々な生きのもの営みは、確かにこの世界に存続している。地球の生命体が生まれてから40億年、その長い営みのなかで姿を変えながら、生物は生存を続けたきた。
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カスミソウ

2024年05月29日 | 日記
会社の仕事をしていた頃、つまりもう40年も前のことだ。仕事を依頼していたカメラマンにカスミソウが好きな男がいた。山形へ来る度に、カスミソウの花を持参した撮影の小物に利用した。テーブルの食卓にカスミソウを添えたり、子役のプロフィール写真にのにも、あえかなカスミソウのイメージを付け加えた。小さく白い花、主役の被写体を引き立てる効果があった。今も、この花が咲くと、あの頃の撮影作業を思い出す。印刷物の使うたった一枚のイメージ写真の撮影に、3時間以上の時間を要した。仕事が終わってから、行きつけの飲み屋で仕事の話をするのが決まりであった。彼は仙台から来ていたので、都会の仕事の情報を聞くのも楽しみであった。この年になって、写真を撮影するのが好きなのも、この時代の経験があったからかも知れない。

近所の庭に、バイカウツギの白い花が咲いていた。この花も、通用の名は「うの花」であるかも知れない。植えている人は、この花をどう認識してしているか、今度聞いてみたい。今日は、台風1号の影響で、初夏の青空は一転雲の多い日になった。梅雨の前触れのような日、「卯の花ぐもり」というのにふさわしい陽気だ。
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バラの季節

2024年05月28日 | 日記
散歩道できれいなバラの花をみかけた。今年は、多種の花が、例年に比べて早く咲いている。梅雨時のアジサイの花芽も大きくなり、花を見るのも時間の問題のような気がする。この花も例年より10日以上早く咲いているらしい。この季節のバラは何と言っても花の女王の位置を占める。見てそのあでやかさに感動するだけではない。昨年のこと、近所のお宅で、庭中にバラを植え、花は二階の窓に届きそうになるくらい、バラを育ていた。ある日、バラが突然なくなっているのに驚いた。見ると大きなバケツに、咲いているバラを摘んでいる。もうあれほどのバラがほとんど姿を消している。

バラの花には様々な利用方法がある。一つはポプリ作り。ドライとウェットがある。花を平たい笊に入れて、風通しの良い場所で乾燥させる。花の色と形を残すならドライ、香りを残すのならウェット。乾燥の進み方で、どちらにもできる。花瓶に入れてドライフラワーでも楽しめるし、枕に入れて香りを楽しむこともできる。この花びらを溶剤で抽出したのが、香油や香水だ。多量の花びらから本の少量しか抽出できず、極めて高価。ただ、その香りはあらゆる人を魅了する。

ベランダのプランターに植えたハーブ苗が順調に育っている。タイムがかわいい花芽を伸ばてている。水やりをしながら観察するだけで癒される。薄紫の花穂をブーケにして、肉を焼く時一緒に焼いて香りをつけるのもいいらしい。乾燥させてほかのハーブとあわせてブーケガルニに。スープやポトフに入れると味に深みが出る。バジルやローズマリー、セージもぐんと大きくなり、さまざま利用方法を工夫する。トマトとズッキーニのラタトゥイユは、我が家の定番だが、ハーブを加えると、やはり味が違う。熱すぎる夏は苦手だが、ハーブが育つのを見ながら、料理づくりにも新しい挑戦ができる。
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卯の花

2024年05月25日 | 登山
唱歌「夏は来ぬ」には、卯の花が詠みこまれている。卯の花とホトトギスは対のものになっている。歌詞を記すと

うの花のにおう垣根に
時鳥葉やもきなきて
忍び音洩らす 夏は来ぬ

時鳥も卯の花も、『枕草子』以来、日本の夏のシンボルとして語り継がれてきた。これほど、有名なものであるのに、長い人生のなかで、この花が卯の花、この鳥がホトトギスと特定することはいまだにできていない。折にふれて卯の花と思しき花を見ていたろう。山で甲高く鳴く、ホトトギスと思われる鳴き声を聞いても、その鳥の姿を間近で見た経験がない。

枕草子99段。五月の梅雨模様の天気、宮中の女御たちは退屈を覚え、「ほととぎすの声尋ねばや」と言い合って、牛車に4人ばかり乗り合わせて、さる朝臣の邸を見に下り立つ。馬の絵のある障子、網代屏風、みくさの簾。どれも昔の形をうついた奥ゆかしい見ものである。すると、待ちかねていたほととぎすが、けたたましく鳴き会う。ここで、田の稲や、引き臼を回しながら踊る乙女など宮中の女御たちには珍しい見ものばかりだ。さらに萌え出たワラビを手づから取り、門口に咲き乱れた卯の花を折り取って牛車の屋根に挿し、卯の花車に仕立てて意気揚々として、宮に帰っていく。あまりの珍しさに、いつもはまず一首と、詠んだ和歌を書き留めたものだが、定子に「歌は?」問われるまで失念しているありさまであった。

ベランダのラベンダーの花穂を4、5本切り採って束ね、小さなラベンダーの束を玄関脇の壁に吊るした。卯の花を採って飾ることはできないが、せめてものラベンダーで、自然のかおりを室内にとり入れる。少しずつこの束を増やしていくと、乾燥してポプリになる。育てたハーブを日々の暮らしのアクセントにする。これも、体力が衰えつつある、高齢者のできるぎりぎりの自然の楽しみ方だ。
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