あっという間に五月も終わる。あとひと月で、年の半分が過ぎていこうとしている。衣替えは旧4月1日に行われていた年中行事で、宮中では服装だけでなく、室内装飾から文机なども夏のものに改めた。源氏物語に出てくる、女御、更衣の更衣は、天皇の衣替えを担当する女官の呼び名であったらしい。我が家では、玄関の中の壁に、ラベンダーの花束を下げて、ドライフラワーもどきの飾りをしてみた。近づくとほのかな香り、見た目にも季節を感じさせるものとなった。庭で伸びてきたローズマリーの枝を3㎝ほど切って、熱湯に浸してハーブティーとしゃれてみた。薄紫のに色づいはティー、どこかほんのりと香りがする。ミントの方が、しっかりとした香りでいいような気がする。
五月尽雨気山の端のどの家にも 飯田龍太
このところこの地方には雨が少ない。今週の雨は、野菜や果樹など、植物を相手に生活している農家などには、恵みの雨といってもいいかも知れない。山歩きには、晴天が待ち遠しいが、乾燥して火事が頻発するようでは、野菜などの生育にも影響する。チャペックの五月の園芸家でも待っている雨には、質がある。土砂降りの雨が降って日がさしたあと
「30分たつと、長い、こまかい、糸のような雨がまた降りだす。ほんとうの、おだやかな、いい雨だ。ひろい範囲にむらなくしずかに降る、みのりゆたかな雨。はねを飛ばし、とうとうとみなぎり流れる豪雨ではなく、しとしとと降る、やさしい、気持ちのいい霧さめだ。やさしい露よ、おまえのしずくは一滴だってむだに流れはしない。」
園芸家が待っているのは、こうした質の雨だ。育ち始めた植物をいつくしみ、育てる雨である。方々の畑から声が聞こえてくる。「いかにも5月らしい雨でしたね。」「これでなにもかも、きれいな緑になりますよ。」