テレビとウェブの融合と言われて久しい。最近は、地上波テレビのパソコンへの同時配信が行われている。先週放映された「ダーウィンが来た」をもう一度見たくてNHKプラスを登録してみた。これが意外に便利であることが分かった。見たい番組を番組案内で見て、その時間を待って見るのがテレビを見る慣例である。だがその時間に何かの用事ができると、録画のような方法しかなかった。NHKプラスで見逃しを見れば、容易にその番組を見れるし、地域の放送はこの場所で全国のものが見られる。
先週の「ダーウィン」はオーストラリア沖の、小さな海域に、シャチ、鯨、ダイオウイカなどの巨大な生きものが夏の期間に集結する。深海への壁に秘密があった。アミなどの小生物が湧くように発生し、それを目当てにイカや多種類の魚がやってきて、豊富な魚群を求めて鯨やシャチが現れる。番組のライトをと餌をつけたカメラにダイオウイカが触腕を伸ばすシーンが撮られた。巨大な鯨がシャチに攻撃されて、食べられるのもこの番組で知った。
鯨といえば気仙沼の唐桑町に伝わる伝説がある。石巻の商人が仙台侯の米を運ぶため船に米俵を積み、16人の乗組員で石巻港を出帆した。翌日、船は時ならぬ春の暴風に襲われて、漂流し、1週間後には千葉の九十九里沖に来た。普通なら、暴風は収まるはずであったが、さらに吹き募りいよいよ沈没の危機が迫ってきた。その時、風の合間に海のなかから呼ぶ声が聞こえてきた。船乗りが恐る恐る船室の窓を開けてみると、船のまわりに白い大きな鯨が取り巻いて泳いでいる。やがて、鯨の長のような厳かな声が響いた。いわく、「船員は小舟に乗り移れ」。
船員たちはあの声、桑島の御崎明神の声だと思った。急いで小舟をだして皆が小舟に乗り移ると、鯨の群れが舟の周りを固め、力を合わせて北を目指して押しやった。小舟の後では、米を積んだ船はみるみる海中に没していった。一同の乗った船は神社に寄付され、その後ろに鯨塚が作られた。
鯨をエビスと呼ぶ地方がある。エビス様は、釣り竿と鯛を持って微笑んでいるが、漁村に漁師たちの信仰があつい。エビスは夷、胡、戎と書き、異国人や外から訪れる神である。鯨やシャチが、カツオやイワシ、ニシンなどの回遊魚を追い、逃げ惑う魚たちが漁師たちが網を張って待つ漁場へ追い込まれた。そのために漁村にもたらせる益は莫大であった。鯨がエビス様と呼ばれる由縁である。