山形市の東部山岳の先端、岩波に最上三十三観音六番札所の石行寺には、この寺の墓石の傍らに楓の木が二本あり、この季節にみごとな紅葉を見せる。ここは龍山修験の元締めを務める役割を果たした寺であった。時雨のような小雨のなかを石行寺の行ってみたが、紅葉は目をみはるように美しかったが、カメラにその色は再現できなかった。寺のそばを流れる川が、音を立てて流れていた。
紅葉せり松その上に枝を垂れ 水原秋桜子
中国では楓樹というが、カエデの生息域は北半球の温帯のみに分布するという。葉の切り込みが浅いものをウチワカエデといい、北海道にはイタヤカエデと呼ばれる種類が多い。葉がよく茂って下に雨を漏らさないので、板屋のようであるためこの名がついたという説がある。こちらの葉は秋に黄色のになる。ウチワカエデの紅は、秋の代名詞のようになっているが、春咲く花も美しい。
石行寺の庭にもう一本、葉が深く切れ込んでいるカエデがあってこちらは黄色く黄葉していた。図鑑にてらしてみると、フカギレハウチワカエデと呼ぶのかも知れない。カエデは洋名はメイプルで、イタヤカエデも幹に傷をつけると、糖分を含んだ液が出てきて飲用になる。だが、カナダのメイプルはサトウカエデで、糖分はメイプルシロップには及ばない。イタヤカエデの樹液を売り出しても採算は取れそうもない。