常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

幽霊 真夏の夜話

2012年07月31日 | 日記


寝苦しい熱帯夜が続く。日本では映画も芝居も落語も、暑さをいっとき忘れようと、幽霊の話がもちきりとなる。新聞の書籍広告にも、「奇談」「妖怪」などの大文字が目に飛び込んでくる。

江戸の幽霊話にこんなのがある。

一文商いをしている飴屋があった。この飴屋に、毎晩決まった時刻に一文をもった女が飴を買いにくる。六番目の晩に女が悲しそうな様子で飴を買って行ったので、不思議に思った飴屋の主人が、女の後をつけてみた。すると村はずれの寂しい墓地で女が消えた。飴屋の主人が不思議に思ってあたりをうかがっていると、ある墓の中から赤ん坊の泣き声が聞えてきた。さらに女の声で、棺のなかの六道銭で飴を買って赤ん坊を育ててきたが今夜で銭も尽きた、となげくのが聞える。

驚いた飴屋の主人は墓の主にこのことを知らせた。墓を掘ってなかをあらためたところ、女の死体のそばで、赤ん坊が生きていた。赤ん坊を連れ帰り、女をねんごろに弔った。
有名な子育て幽霊の話である。

お化け(妖怪)と幽霊の違いについて研究した学者がいる。「妖怪談義」なる論文を発表した柳田國男である。柳田はお化けと幽霊の違いを次のように定義した。

第一 お化けは出現する場所が決まっているのに対し幽霊はどこへでも現れれる
第二 お化けは相手をえらばずに、誰にでも現れるのに対し幽霊の現れる相手は決まっていた
第三 お化けの出現する時刻は宵と暁の薄明かりの時であるのに対し幽霊は丑満つどきといわれる夜中に出現した
つまりお化けは場所に現れ、幽霊は人に現れるということになる。

「怪談」を書いた小泉八雲は、妻の節子から昔話を聞くのが大好きであった。八雲は日本語が十分にはできなかったので、節子は貸し本屋から借りた本で、昔話を読んで聞かせた。その話のなかに「耳なし芳一」などの怪談の原型があった。節子はあらすじを最初に話し、メモをみながら話したが、八雲は本をみるいけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考えでなければいけません」といいながら、節子に昔話を何度も何度もさせ、面白いものはメモにとり、夏の夜語りは続いた。
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肉ジャガ

2012年07月30日 | 農作業


もう農作業は早朝にしかできない。午前6時で日が高く、27℃を超えている。風の涼しいうちにと、農園の仲間たちが畑にやってくる。ここでの情報交換が楽しい。トウモロコシの雀被害について話したところ、畑の先輩も雀が食べることを知らなかった。

梅雨の末期にわずかな降水があったが、山形市は全国一雨量の少ない梅雨であったと発表された。そのため畑に行くと、収穫の前にまず野菜たちに水をやる。トマトには水やりをしないが、キュウリもナスもオクラも水を待っている。サツマイモまでがあまりの日照りで、成長が思わしくない。

ジャガイモを2、3株づつ収穫している。いずれ全部収穫してしまわなくてはならないが、日々食卓に乗せる分だけと言う感じの収穫だ。
めったに肉を買わないが、きのう、牛の薄切り200gを買って肉じゃがを作った。新ジャガで作る肉ジャガは、昔ながらの味である。

ポイントは肉を炒めたあとにジャガイモを炒めて油を絡めることだ。こうすることで、肉の出汁がジャガイモにほどよくしみ込んでいく。ジャガイモ小10個に牛肉200g、砂糖30gと醤油50ccが推奨される分量である。今年の収穫に感謝しながら味わう一品ができた。

午後になった雷鳴が聞える。雨の確率が30%ということだが、本格的な雨になるとは思えない。こう書いているうちに、雷鳴はどんどん大きくなり、大粒の雨が落ちてきた。小一時間だけのスコールのような雨だが、蒸し暑い風に変わって、冷風が吹いてきた。

ロンドンオリンピック。体操男子団体銀メダル、柔道女子松本薫金、男子中矢銀、アーチェリー女子団体銅、水泳女平100子鈴木銅、背100寺川銅、男子入江銅をそれぞれ獲得。女子バレーも予選で世界ランク1位のイタリアから1セットを取るなど善戦しれいる。男女ともサッカーチームも健闘。夜のテレビから目が離せない。

新薯に夕餉すすみしうれしさよ 中尾 白雨
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緑のカーテンから収穫

2012年07月28日 | 日記


暑い、とにかく暑い。11時の気温が34℃だから、今日は最高気温が36℃くらいになるだろう。緑のカーテンはここにきてその役割を果たしている。午後の直射日光が、かなりさえぎられて、夕方は見た目だけでも清涼感がある。ただし、葉が繁るほど根から吸い上げる水は多い。朝、たっぷりとくれた水が昼ごろは涸れて、もう葉が下を向いている。

ゴーヤの実が大きくなったので収穫した。20センチくらいのものが7本、畑のものにくらべるとやや小ぶりだが、チャンプルーでおいしく食べられそうだ。



収穫したゴーヤをレモン汁をかけて、蒸し焼きにする。だまっていても流れる汗の体に、さっぱりとした風味の一品となった。ヨガの仲間にご馳走したが、大好評であった。ゴーヤが実に夏向きの野菜であることがあらためて分かった。

ロンドンオリンピックが始まる。重量挙げの三宅選手、400m個人メドレーの萩野選手の銀メダルに感動した。片や親子がタッグを組んで12年かけて得たメダル、片や高校生の新人が世界の競合と渡り合って獲得した堂々たる胴メダル。いずれにもすごい価値がある。男子サッカーのひたむきさが新鮮だ。
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コボタッチで岡本かの子を読む

2012年07月28日 | 読書


コボタッチを購入してから、電子ブックのニュースがマスコミを賑わしている。楽天の三木谷社長はコボタッチに売れ行きが10万台を超え、アマゾンやグーグルの進出でしのぎを削る日本の電子ブック市場での自信を表明している。電子ブックの売れ行きも、コボ購入者が1~2冊買っている勢いで増えているという。

購入してから1週間ほどだが、扱いにもなんとか慣れてきた。唯一ワイヤレスでのWifiへの接続ができないが、パソコンにケーブルで接続することで目下のところ不便はない。昨日、充電のためパソコンに接続したら、思いがけず青空文庫の無料版の岡本かの子、永井荷風、梶井基次郎など、絶版で入手困難な本がわがコボタッチの本棚に入っていた。

特に岡本かの子は、先月、瀬戸内寂聴の『かの子繚乱』を読んだばかりである。
コボタッチには『鮨』『老妓抄』の2編が入っている。早速、『鮨』を読む。鮨屋の看板娘のともよが見た、鮨職人の父と常連客のやりとりが、当時の風俗を交えて細かく書かれている。ともよが気になる、50代で初老の湊という常連客がいた。

ある日使いに出たともよは、市場で偶然湊に出会う。まだ学生であるともよと初老の湊との取り合わせは、いかにもそぐはない気がするが、「なぜ鮨が好きなの」「何故食べるの」というともよの幼稚な問いに、湊は自分が歩んできた人生を語り、鮨が好きになったいきさつを話す。ひとり暮らしの湊が、孫娘に聞かせる人生の物語のようである。

湊は大きな商いをする家に生まれたが、しだいに傾いていく商家への不安か、ものを食べない痩せぎすの子供であった。父の心配に一念発起した母は、湊の前で鮨を握った。「はだかの肌をするするとなでられるようなころ合いの酸味に、飯と、玉子のあまみがほろほろに交ったあじわいが丁度舌1ぱいに乗った具合ーーーそれをひとつ食べて仕舞うと体を母に拠りつけたいほど、おいしさと、したしさが、ぬくめた香湯のように子供の身のうちに湧いた。」

初老の男が年端もいかない少女に、何故、自分の人生を語り、子供のころの母の思い出を話したのか。それは読む者が想像する他はない。自分が生きてきたことの核心部分を語り残したいという衝動は誰にもある。岡本かの子の小説そのものが、そんな衝動に突き動かされて書かれたものなのではないか。

電子ブックという新しい形態の本のなかに、夏目漱石や森鴎外、芥川龍之介などの古典が入るというマッチングこそが、現代の読書を多様にする。芥川と村上春樹を並べて読み比べることに意義がある。時の流れが世界のありようを変えていくが、生きることの核心はそれとは関係なく存在する。
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雀の害、鼠の害

2012年07月27日 | 農作業


梅雨明けと同時に強烈な日差しが畑にふりそそぐ。気温34℃。各地で熱中症続発。
早朝、キュウリとトマトを収穫していたら、トウモロコシの実が喰い破られて、半分くらいしか実が残っていないものが2本見つかった。カラスに仕業に違いない、と考えて百均から鳥よけネットを買って再び畑に向かった。

畑につくと、トウモロコシに夥しい雀が集まっていた。妻と二人でネットを広げると、雀は逃げ去り、近くの木に止まってこちらの様子を見ている。トウモロコシの実のまわりをネットで囲む作業をする。すると朝は見なかった実の被害が5本もあった。雀は集団の力で実に挑んでいるいるが分かった。くちばしで啄ばむのも、集団である。少し皮が破れた部分にを目がけて集中攻撃をする。小さかった破れ穴から実がのぞくと、次々にその破れを拡大していく。実は破れに沿って、雀の口に入っていく。

収穫期を迎えたジャガイモ畑には、鼠の被害が及んでいる。鼠は必ずしも実だけを狙うのではない。茎が伸び葉が開くころ、地下には白くやわらかな根が広がっていく。鼠はその根を喰い散らす。この時点で被害にあうと、ジャガイモの木がやられて枯れてしまう。実が大きくなり始めると、今度は実が標的になる。掘り返してみる3割ほど害を受けた株がある。それも、今朝齧ったばかりの傷跡である。芋は日に日に大きくなるが、鼠にやられるか、収穫が早いか競争だ。

鼠に食わせる毒えさも試しているが、鼠の繁殖力にはかなわない。
それにしても、トウモロコシもジャガイモも今年初めて加えた栽培品目でから、雀や鼠の害にあうのは、そこそこ栽培ができたからだろう。
雀が食べ残した部分のトウモロコシを蒸して食べてみると甘くて実においしい。これなら雀もよろこんで食べるのだろうと、変に感心してしまう。あらぬ疑いをかけられたカラスも気の毒ではある。

雀は餌のない冬に一番人近くに来る。庭に餌付けをしている人がいるが、雪が消えて餌が取りやすくなると、もう庭の餌付けには寄り付かない。餌をとる生きものの知恵には驚くものがある。小さな雀が、よくぞトウモロコシの皮を剥いて食べたものだと感心する。

八で手咲き雀のめざめおそくなる 水原秋桜子

山茶花の咲きぬと雀高鳴けり   水原秋桜子

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