鼎子堂(Teishi-Do)

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医師のいる文学史⑥:『華岡青洲の妻/有吉佐和子・著』 

2015-01-29 22:58:32 | Weblog
 
冷えこみ厳しい。日中でも5℃前後。


外科手術には、痛みが伴う。
それは、やはり皮膚を切り裂き、内臓を摘出したりして、そのあと、縫ったり、貼ったり?しなければならないから、切る方、切られる方・・・双方の負担は、計り知れないものがある。
最近では、切開口を最小限にするため、内視鏡なる術法があることをドラマで知った。

切る方が、辣腕でも、切られる方は、怖い、痛い・・・。
痛ければ、暴れる・・・。暴れれば、切開は、難しい。
この痛みにどう対応するか・・・現在では、麻酔医が、独立した形で、存在する。薬で眠らせ、患者さんに痛みを感じさせず、目を覚ましたら、切開、摘出、縫合・・・全て完了しました・・・ってことになる。眠っている間に終わらせてしまうのだ。

漢方では、鍼灸で、或る程度、感覚を麻痺させることもできるようだけれど(韓国ドラマ・宮廷女官チャングムの誓いで、やっていた)。

記録に残る全身麻酔で、乳がん摘出に成功したのは、本邦の華岡青洲そのひと。

現在では、当たり前の麻酔だけれど、外科治療が、まだ斬新な西洋の手法であったころ、朝鮮朝顔とトリカブトを主成分とした麻酔薬を完成させた。
最初は、犬や猫などで、動物を用いて、実験を行ったが、いざ人体に使用するに至るには、人体実験が必要だった。

青洲の母親・於継と妻の加恵が、人体実験を申し出る。

華岡家の嫁になるまでは、加恵にとって、義母の於継は、近隣でも名の通った憧れの婦人であったけれど、イザ、一緒に暮らすと、見ると聞くとでは、大違いの義母の姿。

母には、息子であり、嫁には、夫である青洲の愛を独占したい二人の女の陰湿で、燃えるような嫉妬、お互いの憎悪が、浮き彫りになってくる。

そんな命さえも差し出す人体実験の結果、華岡青洲は、全身麻酔による外科手術を成功させるが・・・。

この作品は、嫁姑の戦争という、ドラマ的要素がテンコ盛りで、文学座や他の演劇関係での上演回数も多い。

また何度もテレビ・ドラマ化、或いは舞台化されているけれど、青洲の妻・加恵役は、文学座の平淑恵さんが、私のイメージに近かった。

原作が、優れていると、ドラマになっても、なんら遜色がない・・・ということを証明できる作品ではないだろうか。

余談だけれど、その後、京極夏彦氏の『姑獲鳥の夏』では、青洲が、麻薬に使った朝鮮朝顔(ダチュラ)が、モチーフに使われていた。別名エンジェルトランペットといい園芸栽培種だとか・・・。

そして、更に余談は、続く。
テレビ・ドラマにリメイクするとしたら、『TRICK』の出演者そのままで、仲間由起恵さん(加恵)、阿部寛さん(青洲)、野際陽子(於継)さん・・・でも行けるのではないだろうか・・・と劇場版トリック ラストステージの地上波放送など見ながら、思ってしまった。
トリックって、15年前だったのね、始まったのは・・・。
当時、テレ朝の金曜日23時15分からだったもんね・・・。