何年ぶりに友だちから電話がかかってきた。私が地域新聞を作っていた頃、彼は社会教育を担当する町の職員だった。普通の公務員にはない雰囲気があった。田舎の役所の職員は、この町が急速に人口増となる時に、大量に採用された地元の長男が多い。そういうわけかどうかは分らないが、横柄な態度の人が実に多い。住民が役所に出かける時は、大抵はお願いするためだ。その住民の願いを聞き入れるか否かは職員の裁量となる。住民は卑屈になり、職員は横柄になる。
そんな中で、彼もはじめは横柄さを感じさせた。けれども、どこか他の職員と違っていた。そのうちに私の性格が分ってくると、盛んに話し込むようになってきた。話の中身は、他の職員は能力がないのに、上に取り入って出世している、自分は能力があるけれども曲がったことを受け入れられないので、煙たがられている、そんなことばかりだった。確かに話していると頭は良い方だと感じたが、ひねくれた性格が災いしていると思った。私と話が合う人の中には彼のようなアウトサイダーが多い。
2人で組んでこの町に残るような構仕事もした。一緒に酒も飲んだし、旅行にも行った。合併の後、私が首長選挙に出た時、「アホらしいからやめておけ」と言っていた。その彼が「今度の選挙には出ないかの」と聞く。「あんたがやっていたら、こんな風にはならなかったんだろうが、もう嫌になることばかりだ」とまた嘆き節が始まった。合併で首長になったのは職員から上り詰めた人だ。職員に採用される時から、将来は首長と言われてきたそうだ。合併時の幹部職員は若い頃から一緒に遊んできた仲間だ。首長を支えることは同時に自分たちを守ることになる。そんな関係だから、何も取り組まない。口は自由だから、もちろん時流に合ったことを言う。けれども、何も具体化はしないし、職員もそんなことはさせない。
彼は民間からやってきた首長の下で、住民サービスに徹した行政を実現するために四苦八苦して財政を切り詰めてきたのに、職員上がりの首長は、職員が自分たちの楽なように、税金を湯水のようにつかっているのに何も言わない。こんなことではアカンと嘆く。国民は、自民党政権がやってきた利益誘導の政治が腐敗を生んだので、政権交代を望んだ。けれども、地方の行政こそが自民党政治を支えてきたとは思っていない。
選挙で敗れて、私はもう選挙には出ないと宣言してきた。この事態がどんなに受け入れがたいものであったとしても、その変革の先頭に立つ気力はもうない。若い人が頑張る時代だ。名古屋市の河村市長のように戦うことも出来るだろう。地方の議会は国会のミニ版でなくてもいいはずだ。もっと言えば、地方は議会ではなく、共同体型の地域委員会でいい。ひとりの責任者と100人の無報酬委員という形でいいと思う。
彼は私に、散々愚痴っておきながら、「ああ、すっきりした。たまには会ってちょうよ」とご機嫌な顔で職場へ戻っていった。相変わらずだ。もうひとり、10年以上ご無沙汰だった友だちも突如として電話をくれ、職場の愚痴を告げてきたけれど、こちらも相変わらずだった。
そんな中で、彼もはじめは横柄さを感じさせた。けれども、どこか他の職員と違っていた。そのうちに私の性格が分ってくると、盛んに話し込むようになってきた。話の中身は、他の職員は能力がないのに、上に取り入って出世している、自分は能力があるけれども曲がったことを受け入れられないので、煙たがられている、そんなことばかりだった。確かに話していると頭は良い方だと感じたが、ひねくれた性格が災いしていると思った。私と話が合う人の中には彼のようなアウトサイダーが多い。
2人で組んでこの町に残るような構仕事もした。一緒に酒も飲んだし、旅行にも行った。合併の後、私が首長選挙に出た時、「アホらしいからやめておけ」と言っていた。その彼が「今度の選挙には出ないかの」と聞く。「あんたがやっていたら、こんな風にはならなかったんだろうが、もう嫌になることばかりだ」とまた嘆き節が始まった。合併で首長になったのは職員から上り詰めた人だ。職員に採用される時から、将来は首長と言われてきたそうだ。合併時の幹部職員は若い頃から一緒に遊んできた仲間だ。首長を支えることは同時に自分たちを守ることになる。そんな関係だから、何も取り組まない。口は自由だから、もちろん時流に合ったことを言う。けれども、何も具体化はしないし、職員もそんなことはさせない。
彼は民間からやってきた首長の下で、住民サービスに徹した行政を実現するために四苦八苦して財政を切り詰めてきたのに、職員上がりの首長は、職員が自分たちの楽なように、税金を湯水のようにつかっているのに何も言わない。こんなことではアカンと嘆く。国民は、自民党政権がやってきた利益誘導の政治が腐敗を生んだので、政権交代を望んだ。けれども、地方の行政こそが自民党政治を支えてきたとは思っていない。
選挙で敗れて、私はもう選挙には出ないと宣言してきた。この事態がどんなに受け入れがたいものであったとしても、その変革の先頭に立つ気力はもうない。若い人が頑張る時代だ。名古屋市の河村市長のように戦うことも出来るだろう。地方の議会は国会のミニ版でなくてもいいはずだ。もっと言えば、地方は議会ではなく、共同体型の地域委員会でいい。ひとりの責任者と100人の無報酬委員という形でいいと思う。
彼は私に、散々愚痴っておきながら、「ああ、すっきりした。たまには会ってちょうよ」とご機嫌な顔で職場へ戻っていった。相変わらずだ。もうひとり、10年以上ご無沙汰だった友だちも突如として電話をくれ、職場の愚痴を告げてきたけれど、こちらも相変わらずだった。