好き嫌いで解決できない世界

　街のケヤキ並木がだんだんと寂しくなってきた。真っ赤な葉が今日見たら、かなり少なくなっている。けれどもテレビでは、いよいよこの辺りの紅葉が見ごろを迎えていると言っていた。昨日は岐阜県の紅葉の名所に出かけてきたが、木々の種類や木の生えている場所によって、今が盛りであったりあるいはもう散りかけていたりしていた。紅葉が美しいのは太陽の光が降り注がれている時だ。赤や黄がまるで輝くように見える。
　
　サクサクと　落ち葉踏みしめ　ゆくふたり　落日間近き　公園に見ゆ

　今日の短歌教室で、先生から「サクサクのような表現はよくない」と指摘され、次のように修正していただいた。
　
　しきりなき　落ち葉の径を　ゆくふたり　落日間近き　緑地公園

　「しきりなき」という意味が私はよくわからなかったので、
　
　手をつなぎ　落ち葉の径を　ゆくふたり　夕日のなかで　唇交わす

　これでは客観的な情景ではなくなってしまいそうだ。３１文字で自然を描写するのは難しい。

　難しいのは自然描写だけではない。人の心を読むこともまた難しい。和菓子が６個あった。赤い色の菓子と白い色の菓子が３個ずつである。３人で食べたから、ひとりが２個でよいはずだが、初めにＡが赤を２つと白を1つ食べてしまった。残るＢとＣは赤と白を1つずつ食べた。白が１つ残っている。ＢがＣに「食べていいよ」と言った。するとＣは年少のＡに「あなた食べていいよ」と言った。Ａは「私は赤も白も食べたからいい」と答えた。そこでＣはＡに「じゃあ、ふたりで半分ずつして食べよう」と言った。

　この話から、ＢはＣに気をつかい、ＣはＡに気をつかい、ＡはＢとＣに気をつかっているということが分る。話が飛ぶけれど、国会でもこんな風に、他者に気を遣ってくれればよいのにと思う。気を遣うということは妥協することではない。筋道は通すけれど、相手を尊重するということだ。菓子ひとつを食べるにもこれほどに気を遣うことができるのが人間である。ましてや、全国民に影響する法の審議なのだから、もっと気遣って慎重に行なって欲しい。

　名古屋市の河村市長の言動は、たとえば「南京虐殺はなかった」など、どうしてこんなことが言えるのかと、諸手を上げて賛成できないが、それでも地域委員会の設立や市議会議員の報酬が高額であること、さらに政務調査費が多すぎるという指摘は正しいと思う。正しい主張ならどんな手段を使ってでも実現してよいのかとなると、私は疑問に思う。民主主義の基本はみんなが納得することであるから、そのためには時間をかけて議論することが何よりも大事だ。そうして、みんなが納得の上で最後に多数決で決めるのはやむをえないだろう。

　短歌の世界なら好き嫌いですむけれど、政治は好き嫌いでは解決できない。難しい面である。