冷たい風がピュ―ピューと音をたてていく。本格的な冬の到来である。寒い。カミさんが韓国ドラマに嵌まっているので、私も一緒に見る機会があるが、韓国は日本よりもっと寒いのか、ドラマの中でいつも息が白く見える。先日は雪が降った後の場面で、一面の雪景色がきれいだった。見ているドラマは、『馬医』と『トンイ』の2本で、いずれも17世紀後半、徳川時代のようだ。服装も制度もほとんど変わらないように思う。
韓国時代劇がどうして人気なのだろう。私の妹は「韓国ドラマは、善人と悪人がハッキリしていて、分かりやすい」と言うが、この時代劇はちょっと違うように思う。『馬医』は、題が示すように馬の医者だった若者が王様を担当する医者に出世していく物語だ。しかし単純な出世話ではなく、当時の韓国の身分差別を背景に、若者はこれでもかと何度も危機に落とし込められる。それを善意の人々の支えで乗り越えていくのだ。
李王朝を支える貴族と一般の平民とは生まれながらにして違う。決して平民は貴族には成れないし、恋することもご法度である。馬医の青年は、本当は貴族の生まれであるようだ。ところが卑しい身分を隠して医者となり、今では医者の世界のトップの地位にある男が何かと悪い企てをして落とし込めようとする。ドラマの中でも「お前が平民に戻らない限り、お前への嫌がらせは続くだろう」というセリフがある。身分社会の不合理を考えさせるドラマだ。
『トンイ』の方も同じで、平民の中の武装組織の頭を父に持つ女の子が、父の死と武装集団の壊滅後、出生を隠して宮廷の女官として務める。頭の良さでどんどん出世し、またその美しさと明るさから王様の寵愛を受けるようになり、王様の子どもまで産む。『馬医』が政治の旧勢力と新勢力との争いなら、『トンイ』の方は南人と西人と権力闘争である。不思議なのはどちらも王は革新的であることだ。韓国の人々にとって李王朝は故郷のようなものなのかもしれない。
ドラマは既に終っているのか知れないが、我が家ではまだ延々と続いており、見ている限りではどちらが善でどちらが悪とは言い切れない。運命、あるいは愛、そして権力といったものがテーマなのだろう。早く結論が見たいと思うのは、まだ私がドラマの本当の面白さが分かっていないからだろう。