胃の中央とその右の脇腹が痛い。10月の初めから時々そんな現象が起きる。先週、かかりつけの内科医に「時々、胃が痛むんです」と言うと、「痛みが止まらないようならすぐ検査しましょう。胃や腸はカメラで見ないと分からないですから」と答えられた。痛くなったら「百草丸」を飲めば、何とか痛みは和らいだので、まだいいか、そう思っていた。
今日は中日新聞社の、姜尚中さんによる『特別講演会』に出席した。私たちが市民講座を開催していた時、10年目の50回記念というより、最後の講座の講師を姜尚中さんに務めていただいた。演題は『10年後の悩む力』とあり、彼が学者としてどんな風に「社会の分析」を深めているのか、興味があった。
会場はほとんど高齢者ばかりだから、「今、老いの力をテーマに本を書いています」とみんなを笑わせた。低い抑揚のない声で眠くなりそうなのに、さすがに講演慣れしていてうまい。1時半から3時まで、よどみなく話が続いた。「日本はリハーサル社会である」と言う。学校は典型的で、運動会や卒業式など何度も何度も練習をする。会社も役所も変わらない。
リハーサルすることで失敗を無くすのだが、こうなると「本番力」が欠けてしまう。アメリカの経済は次々に新たな起業家が生まれて引っ張るが、日本はそういう起業家が生まれない。そういえば、ホリエモンらが出てきた時、財閥企業の経済界は「成り上がり」を許さなかった。序列集団の護送船団方式がズーと日本の経済を支えてきたからだ。
「これからは何が起きるか分からない社会だ」と姜尚中さんは言う。「大切なことは、人間関係が資産になること。まだまだ皆さんも恋ができます」と笑わせる。「野菜は自分で作りなさい」と家庭菜園を勧める。そして、「今、ここ」しかないと結ぶ。過去のことに拘っても仕方ないし、先のことを恐れても始まらない。「今、ここ」で「本番力」を発揮するしかないのだ。
姜尚中さんの講演が終わる頃、胃がキリキリと痛みだした。今、ここで倒れる訳にはいかない。そのまま、電車に乗って帰って来て「百草丸」を飲んで、横になった。