放課後子ども教室で、4年生の男の子から声をかけられた。「ねえ、おじさんはどこのチームのファン?」。昨夜の野球の国際大会で、日本チームが韓国チームに勝った話の延長で、贔屓のプロ野球はどこかというのだ。「君は?」と聞き返すと、「阪神。滋賀県の出身だから」と答える。
「阪神か、阪神からはひとりも日本チームに選ばれていなかったよね」と言うと、「そう、中日よりもいい選手はいっぱいいるのにね」と不満そうだった。「じゃー、将来は阪神の選手になるんだ」と言うと、「その前に、甲子園へ行きたい。高校野球はメチャ楽しい」と答える。
小学校4年で、もうそんなことを考えているんだ。私は自分が4年生の時、そんな風に将来のことなど考えたことがなかった。まだ、名古屋へ行くと、乞食や傷痍軍人がいた。どうして貧しい人がいるのだろう、みんなが幸せに暮らせる社会になるといいのにと漠然と思っていた。
NHKテレビの朝ドラはそんな戦後の生活を描いているが、ドラマに出てくるようなきれいな服装の子は滅多にいなかった。主人公の妹が私と同年くらいではないかと思う。それでも私は、6年生になる頃には野球のグローブとバットを買ってもらった。ハーモニカも買ってもらった。
小学校の卒業アルバムを見ると、ひとりだけ下駄ばきの子がいる。体育の時間は全員が裸足で、服装もまちまちだ。確かに日本人はよく働き、経済立国と言われるまでになった。「パパが子どもの頃は、病気にならないとバナナが食べられなかった」と子どもたちに話しても、「ウソー」と信じてもらえなかった。
生産が進めば、みんなが豊かになれる。そう言われてきたのに、どうやら幻だった。孫たちの時代はどんな社会になっているのだろう。