強い風に煽られて、桜の花弁が宙に舞い上がる。何時しか道路は花弁で埋め尽くされ、まるでピンクの世界だ。強い風が吹かなければ、今週末までは満開の桜を楽しめたのに、自然はなんと無情なのか。せっかくのピンクロードを車が無情にも踏みつぶしていく。
昨日、松坂屋美術館で開催中の蜷川実花さんの展覧会を観て来た。もっと早く行って、ぜひ観て来るといいと皆に伝えるべきだった。彼女がいろんなところで活躍していることは知っていたが、実のところ何も知らなかった。これは良い機会だと思い、出かけてみたがショックだった。
最初の部屋は写真撮影が許されていたが、私はケイタイを持ち歩かないので、美術館のページのものを借用した。観てのとおり、桜の花が床に壁に映し出されて、否応なしに彼女の世界に引きずり込まれていく。色とりどりの花に囲まれ、優雅な気持ちになる。
けれど次の部屋は、写真と文章で構成されていて、演出家の父親との別れが、いつもと変わらない日常に訪れる。そして最後の部屋では、2台のプロジェクターを使って直角の2壁に、街角を行き交う人々、花魁やダンサーや美しい花たち、金魚やクラゲなどが延々と映し出される。
なるほどと思った。展覧会のテーマは『虚構と現実』である。全てのものは金魚の泡のようにいつかは消える。美しい花も女優も著名人もいつか終わる時が来る。人間が見ている世界は現実なのか、虚構なのかと問うている。芸術は現実を写しながら虚構を、虚構を描きながら真実に迫る。4日までなので日に余裕が無いが、ぜひ、観て来て欲しい。